暗雲の妖術使いと、公文の風陣
第35話:暗雲の妖術使いと、公文の風陣
燃えさかる炎と怒号に包まれる万願寺の境内。
宗一郎、武藤、大八、秦野ら葦ヶ原砦の猛者たちが、北条三兄弟や藤堂遼一と激しい一騎打ちを繰り広げているその壮絶な光景を、寺を見下ろす高台の闇の中から冷たい眼差しで見下ろす影があった。
都から派遣された官軍屈指の陰陽師――妖術使い・高田廉であった。
「フフッ……愚かな野盗どもめ。万願寺の連中もろとも、我が黒風の術で灰燼に帰してくれるわ」
高田が不吉な黒い御札を掲げ、不気味な呪文を唱え始めた、その時である。
刺すような冷気とともに、その殺気を鋭く感じ取った男が、闇の中から静かに歩み出た。
「そこまでだ。……これ以上の妖術はさせないよ」
羽織をたなびかせ、手には気象観測で鍛えた八卦の道具を携えた男――公文勝也だった。
「おや……? 葦ヶ原の道者気取りか。何者だ?」
「元の世界じゃ、ただの気象・天文オタクさ。だがこの世界に飛ばされてから、風の流れや大気の起電力を操る『理』を理解した。……君の使うその黒い風、気圧の急変による偏西風の疑似現象だろう?」
「黙れッ! 我が道術を『科学』の理屈で片付けるか!」
高田廉の眉間が吊り上がり、懐から放たれた御札が激しい黒炎と竜巻となって弾けた。
対する公文も、冷静な眼光のまま手に持った符鏡をかざし、大気中の電気と風のベクトルを逆転させる陣を展開する。
寺の内部で燃え上がる「物理の炎」と、外の闇で激突する「妖術と科学の嵐」。
万願寺攻略戦の決着を左右する、隠されたもう一つの超能力バトルの火蓋が、静かに切り落とされたのだった。




