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伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


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二人の鉄牛と、見破られた潜入

第33話:二人の鉄牛と、見破られた潜入

 一度目の正面突破に失敗した葦ヶ原砦。陣営に重苦しい空気が漂う中、軍師・智也は次なる手、裏からの「密偵・潜入作戦」を立案する。

 選ばれたのは、驚異的なタフネスと力技を誇る二人――黒木葵と加藤だった。

「智也……俺たちに『隠密』をやらせるのか? 柄じゃねえぞ」

「わかっている。だが、正面の警戒が厳重な今、夜陰に紛れて警備の薄い裏手から竹林の道筋を探れるのは、修羅場をくぐってきたお前たちだけだ」

 かくして、二人の「鉄牛」による決死の潜入作戦が開始された。

 夜の闇に乗じ、黒竜ヶ丘の背後に広がる切り立った断崖から、万願寺の境内を目指す黒木と加藤。

 しかし――万願寺の武芸師範・藤堂遼一の防衛網は、智也の読みをはるかに超えて完璧だった。

「……隠れているつもりか? 殺気がダダ漏れだぞ、黒木」

 竹林の影から突如として姿を現したのは、藤堂と北条三兄弟率いる精鋭部隊だった。警備が薄いと見せかけた場所こそ、藤堂が意図的に仕掛けた「誘い込みの罠(キルゾーン)」だったのだ。

「ちっ……バレたか! 加藤、暴れるぞ!」

「おうよ! 案内役なんぞ知るか、片っ端から叩き潰してやる!」

 居直った二人は斧と拳を振り回し、鬼神のごとき大暴れを見せる。

 だが、狭い竹林の中で多勢に無勢。連携の取れた捕縛の網と竹槍の群れに動きを封じられ、最後は藤堂の一撃によって叩きのめされてしまう。

「愚かな……。葦ヶ原砦の頭脳も、この程度か」

 二人の「鉄牛」は深手を負い、太い縄で縛り上げられたまま、万願寺の地下牢へと引き立てられていった。

 潜入作戦の失敗、そして貴重な主力を二人同時に捕虜にされるという最悪の報せを受け、葦ヶ原砦の陣営はさらなる窮地へと追い詰められるのだった。

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