遠瀬灘の反詩と、処刑台の二人
第28話:遠瀬灘の反詩と、処刑台の二人
流刑地・遠瀬灘へと送られた恵太だったが、どこへ行こうとも彼の持ち前である「人徳」と「お人好し」は輝きを放っていた。
遠瀬灘で闇塩の密売を取り仕切る巨大グループの頭領・宮園俊。
そして、恵太の監視役でありながら、神行法の術(圧倒的な足の速さ)を持つ親切な牢役人・杉野。
さらに、粗暴で無鉄砲だが、恵太を「兄貴!」と慕い懐く巨漢の牢卒・加藤。
異世界で生きる彼らと酒を交わし、固い絆を結んだ恵太は、罪人でありながらも遠瀬灘で穏やかな日々を過ごし始めていた。
しかし――その恵太の人徳と人望を妬む悪徳役人の陰謀が、二人の首を絞め上げる。
恵太が酒席の壁に書き殴った「いつの日か理不尽な朝廷を正す」という不満の詩(反詩)を、官府は朝廷への「謀反の証拠」として捏造。恵太に即刻処刑の判決を下したのだ。
「待て! 恵太は朝廷に反逆するような男ではない! この件は濡れ衣だ!」
恵太の無実を信じる牢役人の杉野は、己の立場を捨てて必死に弁護し、救出を試みた。しかし、その義心が仇となる。悪徳役人は「杉野も山賊と結託した同謀者だ」と断定し、杉野までもが逮捕・処刑の対象とされてしまったのだ。
「すまない……杉野さん。俺のせいで、あんたまで……っ」
「謝るな、恵太。正しい人間が死に、腐った奴らが笑う……そんな不条理を、俺は許せなかっただけだ」
処刑前夜。
冷たく暗い牢獄で、木枷を嵌められた恵太と杉野。
翌朝には遠瀬灘の市街の中央で、二人揃って首を跳ねられる運命が確定していた。
そして迎えた処刑当日の朝。
怒号と野次馬が飛び交う遠瀬灘の広場。高く掲げられた処刑台の上に、引き立てられた恵太と杉野の首が並べられる。
ギラリと鈍く光る巨斧を構える処刑人。
「処刑を執り行え――ッ!」
無情な合図が市街に響き渡り、刃が振り下ろされようとした――その瞬間である。




