清風砦の強弓と、落ちた猛将
第26話:清風砦の強弓と、落ちた猛将
柴田の屋敷を後にした恵太は、罪人の身として追手から逃れるように、清嵐国の清風砦へと辿り着いていた。
目指すは、そこに身を置く中学時代の親友――栄留だった。
「恵太……!? 無事だったのか!」
弓道部出身で百発百中の腕前を誇る栄留は、この異世界で清風砦の副官(武官)として頭角を現していた。親友との再会を喜び、暖かく迎え入れられた恵太だったが、運命の悪戯は二人を穏やかな時間に留めてはくれない。
清風砦の文官長官の強欲な妻に目をつけられた恵太は、山賊と通謀しているという濡れ衣を着せられ、捕縛されてしまったのだ。
「恵太を冤罪で罠に嵌めるとは……許さん!」
激怒した栄留は、自慢の弓術で官兵たちを牽制し、恵太を救出。二人は近くの清風山を根城にする山賊たちと一時的に手を組むこととなる。
当然、朝廷はこの叛逆を看過しなかった。
清風砦の混乱を鎮圧するため、清嵐国随一の猛者と謳われる統制司――秦野率いる大規模な討伐隊が派遣されたのだ。
「朝廷に逆らう賊どもめ! この狼牙棒の錆にしてくれる!」
気鋭の将軍・秦野の強烈な突撃に、清風山の山賊たちは苦戦を強いられる。しかし、ここで動いたのは智也の知謀、そして恵太の「人徳」だった。
栄留の弓による緻密な罠で秦野を生け捕りにした恵太は、縛を解き、誠心誠意の言葉で語りかけたのだ。
「秦野さん……俺たちは朝廷を倒したいわけじゃない。理不尽な腐敗から、仲間とこの世界の民を守りたいだけなんだ。俺たちの本当の目的地――葦ヶ原砦へ、一緒に来てくれませんか」
官軍の腐敗に薄々疑問を抱いていた秦野は、恵太の濁りのない瞳と破格の人徳に心を打たれ、討伐隊ごと葦ヶ原砦へと下ることを決意する。
「お前さんのような男になら、この命、預けてもいい……!」
弓の名手・栄留、清風山の山賊たち、そして猛将・秦野。
新たな強力な仲間たちをその傘下に加えた恵太一行は、長谷川たちが待つ葭洲の水郷・葦ヶ原砦を目指し、晴々とした顔で進軍を開始するのだった。




