二子山の血盟と、三人の豪傑
第25話:二子山の血盟と、三人の豪傑
山伏の法衣に身を包み、松江の山道を越えた武藤松生は、目的の地――悪党どもを叩き潰して築かれた拠点『二子山』の山砦へと足を踏み入れていた。
山門をくぐった武藤を出迎えたのは、大きな酒瓶を抱えた巨漢・大八と、右頬に青いあざを持つ男・志郎だった。
「よう……大八、それに青柳か。相変わらず無茶な暮らしをしてやがるな」
「ああん……? なんじゃその山伏の格好は! ぶははっ、似合わねぇぞ松生!」
「……フッ、人のことを言えた義理か、破戒僧。だが無事でよかった、武藤」
都を追われ、頭に金の輪っかを嵌められた大八。
生辰綱を奪われ、名誉も職も失った志郎。
そして、兄を毒殺され、自らの手で血の仇討ちを果たした武藤。
不条理な現実に打ちのめされ、世界から弾き出された三人の豪傑。だが、その瞳の奥に宿る「折れぬ心」と「圧倒的な武力」は、何一つ失われてはいなかった。
その夜。二子山の大広間には無数の松明が焚かれ、大きな酒樽が据えられた。
三人は並んで膝を交え、溢れんばかりの酒が満たされた盃を高く掲げる。
「俺たちは全員、この狂った世界の理不尽に身を追われた身だ。だが、黙って野垂れ死ぬつもりはさらさらねぇ!」
「そうだ。生きるも死ぬも一緒、志を同じくする者が集まれば、どんな官軍だろうと恐れるに足らん」
「……我が意を得たり、だ」
言葉を交わし、盃を乾す。血と酒の匂いが混ざり合う熱気の中、三人は固い「義兄弟の契り」を結んだのだった。
「これより二子山は、弱者を虐げる悪党を挫き、路頭に迷う仲間を救う砦となる!」
天を突く大八の歓声。志郎の不敵な笑み。そして山伏・武藤の爛々とした眼光。
葦ヶ原砦に匹敵する、最大にして最強の「はみ出し者集団」が、ここに誕生した瞬間だった。




