山伏の法衣と、旅立ちの行者
第24話:山伏の法衣と、旅立ちの行者
すべての事情を打ち明け、互いの胸の内を明かし合った三人。
奥田先生が温かい粥を振る舞い、武藤がそれを平らげると、静かな山小屋に少しずつ落ち着きが戻ってきた。
だが、服部先生はふと、武藤の身なりを見つめて眉をひそめた。
返り血と土汚れに塗れた中学生の制服――出雲で仇討ちを成し遂げ、お尋ね者となった武藤にとって、その格好はどこへ行っても目立ちすぎる命取りの標的だった。
「武藤くん。……その格好のままじゃ、松江の関所を越える前に官軍に捕まってしまうよ」
服部先生は奥の納戸へ向かうと、埃をかぶった行李の中から、一着の衣類と仏具を引っ張り出してきた。それは、かつてこの宿に立ち寄り、痺れ薬の露と消えた旅の山伏(修行僧)が残していった着衣だった。
「これに着替えなさい。山伏の頭巾と法衣だ。ついでに髪もバッサリ切って、修行僧に化けるんだ。……先生たちから君への、せめてもの罪滅ぼしだよ」
差し出された山伏の衣装。武藤はそれを受け取ると、迷うことなく泥のついた制服を脱ぎ捨て、法衣へと身を包んだ。
長かった髪を自ら刀で大雑把に切り落とし、頭巾を深々とかぶり直す。
「どうだ……? 似合うかよ、先生」
そこにいたのは、もう出雲の役人でも、ただの中学生でもなかった。
鋭い眼光を爛々と輝かせ、首には数珠をかけ、戒刀を腰に差した――異形の豪傑『行者・武藤松生』の誕生だった。
「ああ……よく似合っているよ。気をつけて行きなさい、武藤くん」
涙を拭う服部先生と、黙って肩を叩く奥田先生。
恩師たちの見送りを受け、山伏の姿となった武藤は、葦ヶ原砦や二子山で待つであろう「108の仲間たち」のもとへ向かい、朝靄の残る深山幽谷へと力強く歩み出していった。




