出雲の裁きと、山奥の担任教師
第21話:出雲の裁きと、山奥の担任教師
西野とすずかをその手で叩き潰した武藤松生。だが、どれほど正当な怒りであろうと、二人を殺めて「殺人者」となった以上、出雲の街に留まることはできなかった。
武藤は逃げ隠れすることなく、返り血を浴びた制服のまま出雲の役所へ自首した。
取り調べにあたった役人たちも、最愛の兄を卑劣な毒殺で失った武藤の悲痛な境遇と、彼が日頃から治安維持に貢献していた誠実さを熟知していた。
「……実の兄を殺された仇討ちとはいえ、法を犯したのは確か。だが、お前のその無念と義心、無駄にはできん」
役人たちの深い情けと配慮により、武藤の罪は大幅に減刑され、追放に近い形での釈放が言い渡されたのだった。
出雲を追われ、当てのない流浪の身となった武藤。
山陰の湿った風が吹き抜ける中、彼は松江付近の険しい山道へと足を踏み入れていた。鬱蒼とした巨木が立ち並び、滅多に人も通らない深山幽谷。
空腹と疲労が限界に達しつつあった武藤の視界に、ポツリと佇む一軒の怪しげな宿屋が飛び込んできた。
「へっ……こんな山奥に宿なんぞありやがるのか」
冷えた体に暖を求め、武藤が固い木戸を押し開けた、その時である。
店奥から出てきた店主の顔を見た瞬間、武藤の足がピタリと止まった。
「いらっしゃい……って、あら? あなた、武藤くん……!?」
そこにいたのは、旅の商人でも山賊でもなかった。
元の世界で武藤たちのクラスの担任を務めていた教員――服部だった。
エプロンを身につけ、どこか胡散臭い手つきで包丁を握るかつての恩師と、血と泥に塗れた教え子。不気味な山中の宿で、あまりにも奇妙な「師弟の再会」が果たされたのだった。




