二子山の悪党退治と、夜陰の脱出劇
第15話:二子山の悪党退治と、夜陰の脱出劇
『生辰綱』を奪われ、面目を完全に潰された志郎は、もはや梁田のもとへ戻ることもできず、失意のまま再び当てのない流浪の旅へと出ていた。
その道中、志郎は思いがけない男と再会する。かつて都で義兄弟となったものの、都を追われて放浪していた破戒僧――大八だった。
「よう、青あざ! 相変わらず間の悪い面をしてやがるな!」
「……大八か。笑いたければ笑え。私はまたしても全てを失った」
互いの数奇な不運を酒で洗い流した二人は、生きていくための拠点を求め、近郊の『二子山』へと向かう。そこは残忍な山賊どもが仏閣を占拠し、麓の村々を脅かす悪の巣窟となっていた。
「行き場のない俺たちだ。悪党どもを叩き潰して、ここを俺たちの城にしようぜ!」
「フッ……異論はない」
金の輪っかを頭に戴いた大八の圧倒的な怪力と、絶望を刃に変えた志郎の一対一の武芸。二人の鬼神のごとき活躍により、二子山の山賊は瞬く間に壊滅。志郎と大八は山砦の新たな主となり、官軍に対抗する一大勢力を築き始めるのだった。
――時を同じくして、遠山浦鄆代郷。
長谷川たちによる生辰綱強奪の件は、ついに官憲の知るところとなった。厳重な捕縛命令が下り、長谷川の屋敷へ官軍の突入の手が迫る。
この絶体絶命の危機を救ったのは、鄆代郷の役人として潜入していた恵太、そして智也と葵だった。
「長谷川先輩! 官兵がすぐそこまで来ています! 早く逃げてください!」
「恵太……!? お前、役人になっていたのか!」
「街の噂で先輩たちの噂を聞いて、ずっと裏で動いてたんです。不条理な冤罪で先輩たちが捕まるのを、黙って見ていられるかよ!」
恵太を持ち前の「お人好し」と称しながらも、智也が張り巡らせた情報戦と手配書の改ざんにより、官軍の捜索網には致命的な「隙」が生まれていた。恵太の手引きによって間一髪で捕縛を免れた長谷川、公文、そして恵太たち一行は、もはや追手から逃れる道はひとつしかないと腹をくくる。
「目指すは葭洲の水郷――葦ヶ原砦だ!」
追撃の矢をかいくぐり、一行はアシの生い茂る闇夜の湿地帯へと駆け込んでいくのだった。




