赤土坂の罠と、狙われた莫大な財
第14話:赤土坂の罠と、狙われた莫大な財
遠山浦鄆代郷。その地の名主として民から絶大な人望を集めていたのは、恵太たちの一学年先輩にあたる長谷川蓋人だった。
野球部で鍛えた体躯と豪快な性格、面倒見の良さで誰からも慕われる男だが、腐敗した官吏や理不尽な搾取に対しては強い怒りを抱いていた。
その長谷川のもとへ、驚くべき情報が飛び込んでくる。
遠山浦の梁田から都の宰相へ送られる、莫大な賄賂――『生辰綱』が、この近郊の街道を通過するというのだ。
「民から血汗を吸い上げた不義の財宝を、悪党どもが懐に入れるだと……? ふざけんな、奪い取って困ってる奴らに配ってやる!」
長谷川の呼びかけに、頼もしい仲間たちが集結した。
再会を果たした恵太、葵、智也の三人。そして長谷川の親友であり、科学部の知識と鋭い観察眼を持つ怪人物・公文勝也だ。
計画の立案にあたったのは、智也と公文の「頭脳コンビ」だった。
酷暑の山道(赤土坂)で喉の乾きに苦しむ運搬隊の心理を完璧に予測。公文の気象観察によって「もっとも暑さがピークに達する時間と場所」を特定し、酒売りに扮した変装劇と、痺れ薬を仕込んだ巧みな心理トリックを仕掛けたのだ。
責任者である志郎(青柳)は、持ち前の生真面目さで警戒を怠らなかったが、猛暑と疲労で限界を迎えていた部下たちの暴動を抑えきれず、毒酒の罠へとハマってしまう。
「う……体が……痺れ……っ!?」
意識が遠のき、その場に倒れ込む志郎。
長谷川と恵太たちは、一滴の血も流すことなく、まんまと莫大な金銀財宝を奪い去ることに成功したのだった。
「よし、大成功だ! この財宝で、苦しむ民を救うぞ!」
歓声をあげる長谷川たち。しかし、作戦を成功させた恵太の胸には、倒れ際に見えた運搬隊の責任者の顔――右頬に青いあざを持つ同級生・志郎の無念に満ちた表情が、重く焼きついていた。




