怪力乱神の復官と、狙われた生辰綱
第13話:怪力乱神の復官と、狙われた生辰綱
葦ヶ原砦を後にし、希望を抱いて都へと向かった志郎だったが、待っていたのは無情な現実だった。
落ちぶれた身を蔑まれ、裏工作に奔走するも復職の道は無惨に潰える。所持金を使い果たし、自暴自棄になって都の市街を彷徨っていた志郎は、運悪くタチの悪いゴロツキに絡まれてしまう。
「おい青あざ! 邪魔だどけ!」
理不尽な暴言と暴力。プツリと何かが切れた志郎は、手にした刀で瞬く間にゴロツキを斬り捨ててしまった。
罪に問われた志郎は、遠山浦への流罪と労役という過酷な刑罰を言い渡される。
だが――ここで志郎の「間」が、思わぬ方向へ噛み合った。
赴任先で行われた御前試合。生真面目ゆえに愚直なまでに磨き抜かれた志郎の一対一の演武と実戦の強さが、現地を統括する留守・梁田の目に留まったのだ。
「素晴らしい腕前だ。罪人にしておくには惜しい」
梁田の知遇を得た志郎は、図らずも名誉を回復し、官吏としての復官を果たすのだった。
それから数ヶ月。
真面目な勤務態度で着実に信頼を勝ち取っていた志郎に、梁田から極秘の大役が命じられる。
「志郎よ。都にいる私の舅であり、宰相を務める祭田京太郎様へ、莫大な誕生祝い――『生辰綱』を運んでもらいたい」
表向きは誕生祝い、その実態は莫大な「賄賂」の金銀財宝。
これさえ無事に届ければ、さらなる出世と栄達が約束される。だが、それは同時に山賊や野盗から最も狙われる「動く標的」になることを意味していた。
「……謹んでお引き受けいたします」
武士としての誇りを取り戻した志郎は、冷や汗を拭いながら深々と頭を下げた。
己の背中に押し寄せつつある、最大級の「不運」の気配には、まだ気づく由もなかった。




