義兄弟の契りと、冤罪の流人
第10話:義兄弟の契りと、冤罪の流人
大東寺の菜園番として鬱屈とした日々を送っていた大八に、ひとつの機運が訪れる。
都の演武場で出会った一人の若き武芸者――禁軍の槍棒術師範を務める少年、林田宗一郎との出会いだった。
宗一郎は恵太たちと同じ十四歳の中学生だったが、陸上部で鍛えたやり投げの跳躍力と、祖父から叩き込まれた古流槍術の技量を買われ、異世界の都で異例の重用を受けていたのだ。
性格は温厚で慎重、無駄な争いを好まない。一見すると気弱にも見える青年だったが、その手に握られた一矛の槍筋は凄まじく、二人は一目で互いの腕を認め合い、固い義兄弟の契りを交わした。
しかし――その温厚すぎる人柄と美しき妻の存在が、災いを呼び寄せる。
都の権力者・高田修司の放蕩息子が、宗一郎の娶った妻に目をつけ、横恋慕したのだ。
「あの女を俺のモノにさせろ。邪魔な夫は消せ」
息子の我儘を聞き入れた高田は、陰湿な罠を仕掛ける。宗一郎が実の親友と信じていた男を抱き込み、言葉巧みに刀を差したまま禁軍の聖域『白虎堂』へと誘い込ませたのだ。
「軍法違反だ! 刺客として長官を殺めようとしたな!」
無実を訴える宗一郎の声は、権力の手先となった官吏たちの怒号にかき消された。
親友の裏切り、奪われた愛妻、そして無実の罪。
背中に重い罪人の刺青を彫られ、遠く荒磯浦への流罪を命じられた宗一郎は、護送車の中で冷たい雨に打たれながら、ただ固く拳を握りしめていた。
温厚だった少年の瞳の奥で、静かに、しかし凄まじい復讐の炎が揺らめき始めていた。




