表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伯爵家次男に転生した俺は、前世の知識で世界を変えていく』  作者: バモス
第一章 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/60

第41話 初めての騎士団訓練

 初夏の朝。


 シュゲール伯爵家の屋敷には、いつもより大きな掛け声が響いていた。


「せいっ!」


「はっ!」


 規則正しい声が風に乗って広がる。


 朝食を終えたアルスは、その声に興味を引かれ、窓の外を見つめた。


「お父様。」


「あれは?」


 父カインは微笑みながら答えた。


「私兵たちの訓練だ。」


「今日は見学してみるか?」


 アルスは目を輝かせた。


「はい!」


     ◇◇◇


 訓練場へ向かうと、約四十名の私兵たちが整列していた。


 隊列は乱れることなく、まるで一本の剣のように揃っている。


 隊長が前へ出た。


「伯爵様、おはようございます!」


「おはよう。」


 父は頷き、アルスを前へ出す。


「今日は息子のアルスも見学させてもらう。」


「よろしくお願いいたします!」


 私兵たちは一斉に敬礼した。


「よろしくお願いいたします、アルス様!」


 アルスも慌てて頭を下げる。


「よろしくお願いします。」


     ◇◇◇


 訓練が始まる。


 まずは素振りだった。


「一!」


 シュッ!


「二!」


 シュッ!


 四十本の木剣が同時に振られる。


 その音は一つに重なり、美しく響いた。


「すごい……。」


 アルスは思わず息を呑む。


 一人ひとりの動きも見事だった。


 しかし、それ以上に全員が同じ動きをしていることに驚いた。


     ◇◇◇


「アルス。」


 父が静かに話しかける。


「どう思った?」


「みんな、いっしょ。」


「その通り。」


 父は嬉しそうに頷く。


「剣が強いだけでは兵士にはなれない。」


「仲間と息を合わせること。」


「命令を正しく聞くこと。」


「それが大切なんだ。」


 アルスは真剣な表情で訓練を見つめた。


     ◇◇◇


 続いて二人一組の訓練が始まる。


 木剣を打ち合わせながら、お互いの間合いを確かめている。


「そこ!」


「受けろ!」


 カン!


 乾いた音が響く。


 アルスは一人の若い兵士が転びそうになるのを見た。


 すると、隣の兵士がすぐ腕を支えた。


「大丈夫か?」


「ありがとう。」


 二人は笑顔で立ち上がり、再び訓練を始める。


(助け合ってる。)


 勝ち負けではない。


 仲間だから助ける。


 その姿がとても印象に残った。


     ◇◇◇


 休憩時間。


 一人の若い兵士がアルスへ近付いてきた。


「アルス様。」


「訓練はどうでしたか?」


「すごかった!」


「みんな、つよい!」


 兵士は照れくさそうに笑う。


「ありがとうございます。」


「でも、一人では強くなれません。」


「毎日、仲間と練習しているから今があります。」


 アルスは深く頷いた。


 また「毎日」。


 父も。


 ゴルンも。


 バルトも。


 みんな同じことを教えてくれる。


     ◇◇◇


 その時、隊長がアルスへ一本の木剣を差し出した。


「アルス様。」


「よろしければ、私と一本だけ。」


 父が頷く。


「礼の練習だけだ。」


「はい。」


 アルスは木剣を受け取る。


 父から教わった通り、一礼する。


 隊長も丁寧に礼を返した。


「それだけで十分です。」


「剣を持つ者にとって、一番大切なことですから。」


 アルスは少し照れながら笑った。


     ◇◇◇


 訓練が終わると、私兵たちは木剣や鎧の手入れを始めた。


「訓練が終わったら終わりじゃないんですね。」


 アルスが尋ねると、隊長は頷く。


「武器を大切にする者は、自分の命も仲間の命も大切にできます。」


「だから毎日手入れをするんです。」


 その言葉に、ゴルンの言葉が重なった。


 『道具は手入れが命だ。』


 剣も鍛冶も、同じなのだ。


     ◇◇◇


 帰り道。


 父と並んで歩きながら、アルスは今日の訓練を思い返していた。


「お父様。」


「一人が強くても、だめ?」


 父は少しだけ空を見上げた。


「強いことは悪くない。」


「だが、一人で守れるものには限界がある。」


「だから仲間がいる。」


「互いに支え合い、力を合わせることで、多くの人を守れるんだ。」


 アルスは静かに頷いた。


     ◇◇◇


 夜。


 魔力操作を終えたアルスは、今日も手帳を開いた。


 ゆっくりと文字を書く。


 『みんなで まもる』


 少し曲がった文字だった。


 だが、その意味はまっすぐだった。


 一人ではできないことも、仲間がいればできる。


 家族も。


 職人も。


 領民も。


 そして私兵たちも。


 みんなが力を合わせて、この領地を守っている。


(いつか俺も、その一人になろう。)


 その決意を胸に、アルスは静かに目を閉じた。


 窓の外では、満天の星々が静かに輝き、少年の未来を優しく照らしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ