表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伯爵家次男に転生した俺は、前世の知識で世界を変えていく』  作者: バモス
第一章 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/59

第36話 父との剣術稽古

 春の朝。


 まだ朝露が草花に残る時間。


 アルスは今日も木剣を手に、屋敷の訓練場へ向かっていた。


 毎朝の素振りは、三歳になってから欠かさず続けている日課である。


「おはようございます、お父様。」


 訓練場では、父カインがすでに準備運動を終えて待っていた。


「おはよう、アルス。」


「今日も元気そうだな。」


「はい!」


 アルスは木剣を胸の前で持ち、しっかりと一礼する。


 父も同じように礼を返した。


「礼に始まり、礼に終わる。」


「剣を学ぶ者は、これを忘れてはいけない。」


「はい、お父様。」


     ◇◇◇


「では、素振りを始めよう。」


「一本ずつ、丁寧に。」


「はい。」


 アルスは木剣を構える。


 深く息を吸い、ゆっくりと振り下ろした。


 シュッ。


 続けて二本目。


 シュッ。


 焦らず。


 力まず。


 父の教えを思い出しながら、一振り一振りを大切にする。


 前世で身につけた身体操作は使わない。


 今は三歳のアルスとして、基礎を学ぶ時間だからだ。


     ◇◇◇


 十本ほど振り終えたところで、父が木剣を置いた。


「少し話をしよう。」


「はい。」


 二人は訓練場のベンチへ腰掛ける。


 柔らかな春風が吹き抜けた。


「アルス。」


「お前は、剣は何のためにあると思う?」


 アルスは少し考える。


「……まもるため?」


 父は優しく微笑んだ。


「その通りだ。」


「剣は人を傷付けることもできる。」


「だが、本当に大切なのは、大切な人を守るために使うことだ。」


 その言葉には、強い信念が込められていた。


     ◇◇◇


「父さんも剣を使うの?」


 アルスが尋ねると、父は頷いた。


「ああ。」


「若い頃は何度も戦場へ立った。」


「だが、一番嬉しかったのは勝った時ではない。」


「領民が無事だった時だ。」


 アルスは静かに父を見つめる。


 父にとって剣とは、名誉のためではない。


 人々を守るためのものなのだ。


(だからみんな、お父様を慕っているんだ。)


     ◇◇◇


 その時、アレックスが訓練場へやって来た。


「父上、おはようございます。」


「おはよう。」


「兄様!」


 アレックスも木剣を持ち、一礼する。


「アルス。」


「一緒に素振りをしよう。」


「うん!」


 二人は並んで木剣を振る。


 アレックスは力強く。


 アルスはまだゆっくりと。


 それでも兄は急かさない。


「上手になってきたね。」


「ありがとう。」


 兄に褒められ、アルスは嬉しそうに笑った。


     ◇◇◇


 少し離れた場所では、エルゼが応援していた。


「アルスー!」


「頑張れー!」


 小さな旗まで作って振っている。


「姉様……。」


 アレックスが苦笑する。


「応援が一番大きいね。」


「もちろん!」


 エルゼは胸を張る。


「アルスの一番の応援団だから!」


 その言葉に、周りで見守る使用人たちも笑顔になった。


     ◇◇◇


 稽古の終わり。


 父はアルスの肩へ優しく手を置いた。


「今日もよく頑張った。」


「はい。」


「剣術は強くなるためだけではない。」


「礼儀を学び。」


「心を鍛え。」


「自分を律するための道でもある。」


 アルスは深く頷く。


 その教えは、前世で学んだ剣道の理念にも通じていた。


     ◇◇◇


 夜。


 魔力操作を終えたアルスは、新しい手帳を開いた。


 今日の学びを書き留める。


 『つよさは まもるため』


 まだ少し歪んだ文字だった。


 しかし、その一文字一文字には、父から受け取った大切な教えが込められている。


 アルスは手帳を閉じると、静かに窓の外を見上げた。


 春の夜空には、満天の星が輝いている。


(強くなろう。)


(でも、その強さは誰かを傷付けるためじゃない。)


(家族を。)


(領民を。)


(大切な人たちを守るための強さになろう。)


 その決意を胸に、アルスは穏やかな眠りについた。


 少年の剣は、まだ小さく、未熟だった。


 しかし、その心は確かに、父から受け継いだ優しさとともに育ち始めていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ