表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伯爵家次男に転生した俺は、前世の知識で世界を変えていく』  作者: バモス
第一章 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/61

第16話 領地のお散歩

 アルスが二歳になって間もないある日の朝。


 いつものように朝食を終えると、父カインが優しい笑みを浮かべて声を掛けた。


「アルス。」


「今日は父さんと一緒に出掛けてみるか。」


 アルスは目を丸くした。


「おでかけ?」


「ああ。」


「領地の村を見に行く。」


 その言葉に母エリザが少し心配そうな表情を浮かべる。


「まだ二歳ですよ?」


「大丈夫だ。」


「遠くへ行くわけではない。」


「一番近い村まで馬車で行き、少し見て回るだけだ。」


 父の言葉に、母も安心したように微笑んだ。


「それなら安心ですね。」


「アルス、ちゃんとお父様のお話を聞くのですよ。」


「うん!」


     ◇◇◇


 一時間後。


 シュゲール伯爵家の馬車は屋敷を出発した。


 御者の隣には私兵が二名。


 後方にも護衛の騎馬隊が続いている。


 領主の視察とはいえ、大げさではない護衛体制だった。


 馬車の窓から外を見るアルス。


 広大な畑。


 風に揺れる麦。


 果樹園。


 牧場。


(すごい……。)


 屋敷の中からでは見えなかった景色が広がっている。


「どうだ?」


 父が微笑む。


「これがシュゲール伯爵領だ。」


「みんなが毎日、一生懸命働いてくれている。」


 アルスは静かに頷いた。


     ◇◇◇


 やがて馬車は、小さな村へ到着した。


「伯爵様だ!」


「おはようございます!」


 村人たちが次々と頭を下げる。


 父は一人ひとりに笑顔で応えた。


「今年の麦はどうだ?」


「はい!」


「順調です!」


「困ったことはないか?」


「今のところはありません。」


 父は急ぎ足ではなく、一軒一軒の話へ耳を傾けていく。


 村人たちも安心した表情で話していた。


(ちゃんと話を聞いてる……。)


 ただ命令を出すだけではない。


 領民の声を聞き、自分の目で確かめる。


 それが父のやり方なのだ。


     ◇◇◇


「坊ちゃん!」


 一人の少年がアルスへ近付いてきた。


 アルスと同じくらいの年齢だろう。


 少し人見知りしているようだった。


「こんにちは。」


 アルスが笑顔で挨拶すると、少年も照れながら頭を下げた。


「こんにちは。」


 二人はしばらく見つめ合う。


 言葉は少ない。


 それでも、お互い笑顔だった。


「仲良くなれそうですね。」


 専属メイドが微笑む。


     ◇◇◇


 父は村の井戸へ向かった。


 数人の女性たちが水を汲んでいる。


「重そうだな。」


「ええ。」


 一人の女性が苦笑した。


「毎日何度も往復しています。」


 アルスはその様子をじっと見つめた。


(井戸から家まで何往復も……。)


 前世では蛇口をひねれば水が出た。


 だが、この世界では違う。


 水を運ぶだけでも重労働なのだ。


 その時、小さな少女が水桶を持ち上げようとして、ふらついた。


「危ない!」


 近くにいた女性が慌てて支える。


 幸い、水桶は落ちなかった。


(……。)


 アルスは何も言わず、その光景を胸へ刻み込んだ。


     ◇◇◇


 帰りの馬車。


 父が静かに話し始める。


「アルス。」


「今日、何を見た?」


 アルスは少し考えてから答えた。


「みんな。」


「うん。」


「がんばってた。」


 父は優しく微笑む。


「ああ。」


「領民は毎日努力して暮らしている。」


「だからこそ、私たち貴族はその暮らしを守らなければならない。」


 その言葉は、まだ二歳のアルスには難しい内容だった。


 それでも、その意味はしっかりと伝わった。


(暮らしを守る……。)


 前世の知識。


 鍛冶。


 魔法。


 それらは、自分が強くなるためだけのものではない。


 人々の生活を少しでも楽にするために使いたい。


 そんな思いが、アルスの胸の中で少しずつ形になっていく。


     ◇◇◇


 屋敷へ戻ると、母エリザが笑顔で迎えてくれた。


「おかえりなさい。」


「楽しかった?」


「うん!」


 アルスは元気よく返事をした。


「むら!」


「ひと!」


「いっぱい!」


 その言葉に、家族みんなが笑顔になる。


「良い経験になったようですね。」


 母がそう言うと、父も頷いた。


「ああ。」


「アルスは、よく見ていた。」


「きっと、この子は優しい領主になれる。」


 その言葉にアルスは少し照れながらも、心の中で静かに誓う。


(もっと勉強しよう。)


(もっと技術を身につけよう。)


(そして、みんなが笑顔で暮らせる領地を作ろう。)


 その小さな決意は、まだ幼い少年だけの秘密だった。


 しかし、その思いこそが、未来のセレンを変える大きな一歩となっていくのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ