表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伯爵家次男に転生した俺は、前世の知識で世界を変えていく』  作者: バモス
第一章 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/64

第15話 二歳の春

 柔らかな春風が、シュゲール伯爵家の庭園を吹き抜ける。


 色とりどりの花が咲き誇り、小鳥たちが楽しそうにさえずっていた。


 今日は――アルス・シュゲールの二歳の誕生日である。


「アルス、お誕生日おめでとう。」


 母エリザが優しく抱きしめる。


「ありがとう、お母様。」


 まだ幼い話し方ではあるが、少しずつ言葉が増えてきた。


「おお。」


 父カインが嬉しそうに笑う。


「ちゃんとお礼が言えるようになったか。」


「えらいぞ。」


 大きな手で頭を優しく撫でられる。


 その温もりに、アルスは自然と笑顔になった。


     ◇◇◇


「アルス!」


 勢いよく飛び込んできたのは姉エルゼだった。


「お誕生日おめでとう!」


 ぎゅっと抱きしめられる。


「ありがとう、お姉ちゃん。」


「きゃー!」


 たった一言だったが、エルゼは顔を真っ赤にして喜ぶ。


「今、『お姉ちゃん』って言った!」


 その様子を見て、兄アレックスが苦笑した。


「姉さん、落ち着いて。」


「無理!」


「アルスが可愛すぎる!」


 部屋中が笑いに包まれる。


(今日も平和だな。)


 そんな何気ない日常が、アルスは何より好きだった。


     ◇◇◇


 朝食の後。


 家族全員が応接室へ集まる。


「アルス。」


 父カインが一冊の本を差し出した。


「誕生日の贈り物だ。」


 表紙には、この世界の文字で『セレン王国の童話集』と書かれている。


「ほん!」


 アルスは目を輝かせた。


「本が好きだからな。」


「もう少し大きくなれば、自分で読めるようになるだろう。」


「ありがとう。」


 アルスは大切そうに本を抱きしめる。


 前世でも、本は宝物だった。


 新しい知識との出会いは、いつだって心を躍らせてくれる。


     ◇◇◇


 午後。


 家庭教師リーナとの授業が始まる。


「アルス様。」


「今日は復習をしましょう。」


 文字カードが机に並べられる。


「これは?」


 アルスは少し考える素振りを見せてから答えた。


「みず。」


「正解です。」


 次は数字。


「三つあるのはどれでしょう?」


 木の実が並ぶ。


 アルスは迷わず三つ並んだ皿を指差した。


「素晴らしいですね。」


 リーナ先生は感心したように微笑む。


「文字も数字も、とてもよく覚えています。」


 もちろん、本当はもっと読める。


 もっと計算もできる。


 しかし、それを見せる必要はない。


 今は"少し賢い二歳児"くらいがちょうどいい。


     ◇◇◇


 授業が終わると、父が部屋へ入ってきた。


「リーナ先生。」


「アルスの様子はいかがですか?」


「とても順調です。」


「学ぶことを楽しんでいます。」


「それが一番ですね。」


 父は満足そうに頷く。


「これからも焦らず、この子の興味を大切に育ててください。」


「承知いたしました。」


 アルスは、そのやり取りを静かに聞いていた。


(父さんは、いつも俺の気持ちを一番に考えてくれる。)


 だからこそ、自分も期待に応えたいと思う。


     ◇◇◇


 夕方。


 アルスは一人、窓辺に座って庭を眺めていた。


 庭師が花壇を手入れしている。


 馬丁が馬の世話をしている。


 私兵たちは巡回へ出発していく。


 使用人たちは忙しく屋敷を支えている。


(この家は、たくさんの人のおかげで成り立っている。)


 父や母だけではない。


 執事のレイム。


 家令のライム。


 専属メイド。


 庭師。


 馬丁。


 私兵。


 みんなが、それぞれの役割を果たしている。


 だから、この穏やかな毎日がある。


(俺も、いつか誰かを支えられる人になりたい。)


     ◇◇◇


 夜。


 誕生日のお祝いも終わり、屋敷は静けさを取り戻していた。


 アルスはいつものように魔力操作を始める。


 二年間。


 一日も欠かさず続けてきた鍛錬。


 今では魔力を全身へ自然に巡らせられるようになっていた。


 《ファイアー》《ウォーター》も安定して発動できる。


 もちろん、誰にも見せることはない。


(焦る必要はない。)


 知識も。


 魔法も。


 鍛冶も。


 毎日積み重ねれば、必ず力になる。


 そう信じて歩んできた。


 そして、二歳になった今日。


 アルスは改めて心に誓う。


(この温かな家族を守ろう。)


(この領地をもっと豊かにしよう。)


(そして、いつか世界を少しずつ変えていこう。)


 小さな決意は、まだ誰にも知られていない。


 しかし、その決意は確かにアルスの胸の中で芽吹き始めていた。


 新たな一年もまた、学びと成長に満ちた日々になる。


 そんな未来を思い描きながら、アルスは穏やかな眠りにつくのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ