看病
九話目投稿しました!
仲直りした二人過ごす日常はどう変化するのか。
最後まで読んでくれたら嬉しいです~。
約一週間前に私は幸の髪を切ってあげた。一度も自分の髪すら切ったことのない私で本当に大丈夫なのかとしつこいぐらい念入りに聞いて「いいよ」と言ったので目隠れとのご要望のもと切った。目隠れと言ってもずっと両目隠して過ごしてきたから片目だけ出す新鮮な髪型にした。いいよって言われたんで。でも初心者がそんな思い通りに切れるわけもなく、切り方の動画とかサイトと参考したにも関わらずガタガタになり、まるでテトリスに出てくるブロックのような前髪になってしまった。だけどなぜか幸はあまり気にしてないようだった。私だったら外も歩けないような髪型なのに幸はそのまま買い物に出かけてしまったから。
そこから時間が経ち今日に至るのだけれど、朝起きるといつもはキッチンの方にいる幸が私の隣でまだ寝ていた。珍しいこともあるなと思いながら体を揺すって起こそうとして手を伸ばす。起きない。そして手から伝わる熱が高い気がする。寝てるからかな。
「幸ー。起きないのー?」
「ん...はぁ、はぁ...」
何度か揺すったり、声をかけたりを繰り返していたら幸は目を覚ました。けど、見るからに顔は紅潮としていて息が上がっていることを目を覚まさしてから気づいて少しの後悔が押し寄せる。
「...あなた...なんかいっぱいいるけど...」
「ごめん、無理やり起こして」
「体...痛いし...怠い...ゴホッコホッ」
最近は太陽の位置が低くなりつつある季節。買い物から帰ってきた幸はいつも顔が寒いと言っていた。なぜなら顔を半分出しているからだそうで若干妬まれている。マフラーとかの防寒具を買ってあげれればよかったんだけれど、喧嘩した弊害によって仕事の進捗が滞っていたのをつい最近取り戻したばかりで、つまるところ仕事が理由で買いにいけなかった。その結果幸が体調を崩してしまった。私は彼女より仕事を選ぶ人だったみたい...。
「大丈夫...では無さそうだね」
「全く...ね...」
「もしかして...インフル?」
「その説は...あるかもね...」
インフルエンザに限らず何の病だとしてもその隣で寝ていた私はもう手遅れなのではと思ってしまうけれど一応の対策はしておこうと思う。私に看病できるのかがとても不安なのだけれど、まぁなるようになるしかないと思って気合を入れる。けど私の理性が「まずは病院じゃろ」って言ってきた。なんで老けているんだろう。
「起き上がれそう?」
「なんとか...」
「タクシー使って病院行くよ」
「うん...」
病を患った時は小言を言わずにこんなに静かになって言うことを聞いてくれるようになるのか。いつもの健康な幸もいいけど、たまにはこういう幸もいいなと思ってはいけないんだろうけど、思わずにはいられなかった。そんな普段とは違う幸の態度に目を向けながらタクシーを呼んだ。
タクシーは呼んでから十分足らずで私の家に着いた。だけど大変だったのはタクシーに乗せること。最初は心で悪いと思いながら歩かせようとしたけど、歩くのはおろか立つことさえままならなかったのでおぶって運ぶことにした。
しかし、仕事を理由に出不精な私は当然力なんてあまりないのに対して週二、三でお買い物をしている幸は無論私よりも健康的な体になりつつある。いや、なってる。その幸をおぶってタクシーに乗せるのはなかなか骨が折れる作業だった。じゃあ運転手さんに手伝ってもらえば?と思うかもしれないけれど、運悪く異性だったので頼めない。頼みたくもない。そしてその後は行先である病院を頑張って伝えて無事にたどり着いた。
医者に診てもらうのに何かを書かされたり、聞かれたりして時間がかかったように感じたけれど、結局患者さんが多かったからむしろちょうど良かったのかも。そして下された診断は予想通りのインフルエンザだった。それから処方薬をもらってタクシー呼んで帰った。残念ながらまた異性でしたけどね。というかあまり女性のタクシー運転手さんって見ない気がする。私があまり乗ってないだけかな。
あまり言いたくはないけど、...重く感じる幸をまた頑張っておぶってベッドに寝かせる。いつからこんなに成長していたのか...、はたまた気づいていなかっただけか。毎日一緒にお風呂入っていたのに思うだろうけどあまり直視できなかったから仕方ない。
「何か食べれそう?」
「あなたに何か作れる...の?もう...レトルト食品...はこの家にはないよ」
「......頑張る」
「家...、燃やさないでね...」
居候が家主にそんなことを言われるのは私ぐらいだろうと思いながら気合を入れてキッチンに立つ。なんか外野が「料理は気合入れてするものじゃない」と言ってきたけど、病人なんだから目を閉じてなと言っておきました。
さて、私がこれから作ろうとするのは病人のお腹にも優しい卵がゆ。作り方を見てみたけどさすがの私でも作れそうな雰囲気を醸し出していた。
まず、器に幸が食べきれそうな適量のご飯をよそっておく。そして鍋に水を入れて火をつける。あぁ、その前に卵を溶いておかないと。その後に塩コショウに鶏ガラスープの素を味が付くくらいの少量を入れて、水が沸いてきたら溶いておいた卵を少しずつ入れていきながら混ぜる。少し固まってきたら火を止めてよそっておいたご飯にかければ完成!やればできるもんだね。失敗させる方が難しそうだけれど...。
「幸ー、できたよー」
「お腹空いてるから...早く食べさせて...」
「病人のくせに生意気。いつもか」
「今更だけど...あなたが作ったのおかゆでも怖いんだけど...。ゴホッゴホッ」
「食べてからしか文句は受け付けません。だから口開けて」
「あー...ん」
私がスプーンで掬ったお粥を幸に食べさせる。なんだか連れてきた日に無理やりレトルトのお粥を幸の口に突っ込んだことを思い出す。食べさせるという行為をするのはそれ以来だからちょっと懐かしく思う。その日からは当然時間が流れているわけで、心境の変化と病人を労わる気持ちでかなり優しく丁寧にしている...と思う。病人の態度が悪いから自身はない。
「どう?」
「意外とって感じ」
「...それは褒めてるの?」
「食えるって感じ」
「だから...もう黙って食べとけ」
優しかった気遣いにどんどんと棘が生えて雑になっていったけど私は悪くない。その後も幸に食べさせ続けて私が作った卵がゆは完食された。...完食して不味いなんてことあるんですかね。そして薬を飲ませて寝かせた。
一段落した私は仕事するかと思ったけれど、今日の夕食とかもそうだけどしばらくは私が料理をしなくてはならない日が続く。だけど今日たまたま作れた卵がゆぐらいしかレパートリーがない私は買い物に行くことにする。もちろんレトルトを買いに。
「行ってきます」
もう寝ている幸に起きない、聞こえないぐらいの声量で言う。いつも出掛ける時は幸もついてくるため私一人で出掛けることは私の記憶にはないため、”行ってきます”なんて言うのは最後に言ったのを覚えていないぐらいには久しぶり言った。......ふふっ。
買い物から帰ってきて思う。すごく疲れた。幸が来る前までは当然私が買い物に行ってたけれど、今では幸にそれを一任しているから仕事をしているだけのひきこもりになってしまった...。買い物付いていこうかな。
疲労感があっても仕事をこれ以上さぼってはいけないのでするしかない。自分の部屋とかないからインフルを患った幸と同じ部屋だから数日後にはさぼらざるを得なくなる。
幸に気持ちを打ち明けてから仕事の手が止まる頻度が減った。そのおかげで目標よりも多く仕事を進めることができたので良かったけど、ふと外の景色を見るといつの間にか暗くなっていた。
「ふぁ...、疲れた......」
伸びをしながらそんな言葉が漏れる。そして机にぐったりするように突っ伏して、溜まった疲労感が私の瞼を閉じさせ、眠りに誘われた。
私が眠り始めてどんくらい経ったか分からないけど、なにやらキッチンの方から物音がした。この覚めたばかりの寝ぼけ頭をのんびり冴えるの待とうと思ってたのだけれど、はっとする。
「幸、何してるの?」
「お腹空いたから作ってるだけだけど。誰かさんが寝ているから」
「起こしていいのに」
「仕事してたんでしょ?起こせないでしょ」
「気持ちは分かるけど...、病人の自覚はしてほしい。どうせまだ足元ふらふらでしょ?肩貸すから横になってて」
キッチンにある冷蔵庫に体を預けている幸に寄り添って肩を貸す。できれば抱っことかおんぶとかしてあげれればよかったんだろうけど今の私にはそんな体力はまだ無い。
「ところで何作ってたの?」
「あなたが買ってきたレトルト食品」
「良かったー。レトルト以外だったらどうしようかと思った」
ベッドに辿りついて幸を横にさせる。肩貸すだけでもなかなか体力を使うなぁと思ったけど、私が幸より貧弱なだけか。...病人よりも貧弱...なのか。
作り途中のレトルトのお粥をよそってあったご飯にかけて幸に提供する。幸が提供されたお粥を一口食べる。まさかとは思うけど私の卵がゆと比べたりしないよね?
「うん、やっぱり...」
「やっぱり何?その続きのセリフ次第では口が出るぞ」
絶対比べると思った。酷い人。好きだけど。
「ごめん、手が出るならわかるけど口が出るって何?さすがに気になっちゃった」
「病人に手を出すのは良くないから強い言葉を使ってやろうかと」
「そゆことね。ちゃんと美味しいよ」
「...どっちが」
「あなたが作ったお粥のほうが」
「...そっ...か」
正直そんな回答を返されるとは思ってもみなかったから照れ隠しでそっけない返事をしてしまった。まさか私が料理で美味しいと言われる日が来るなんて思っても見なかったからつい...ね。えへへ。
「なんか顔赤くない?移った?」
「移ってはいそうだけど、私は顔赤くならない人なので」
「無理がある...」
「うるさい!黙って食ってな!」
「結局強い言葉使われた...」
なんかボソッと聞こえた気がするけど無視して私もお腹が空いているので買ってきたレトルトのビーフシチューを取り出して湯煎で温めて食べる。...幸が作った方が断然美味しい。これを言うべきか迷うけどそもそも私、心の中では思ってはいるけど言ったことはあったっけと記憶を堀り返す。多分...ない...。今言うのはとても取って付けるようで嫌だけど伝えないよりかはいいかと思って伝えることにする。
「レトルトより幸が作ってくれた料理の方が...美味しい」
我ながら下手くそな伝え方で心の中で雨が降る。
「それは気遣い?それとも本当に思ってること?」
「私、気遣いとかしたことない」
「それこそ気遣ってるでしょ。ありがと」
「...うん」
少し変な空気が漂う。そう思っているのは私だけかもしれないけれど、だからといって変に変えようとすると悪くなる可能性も出てくるから私はまだ食べ途中のビーフシチューを食べて空気が流れるのを待つ。
食べ終わって、さすがに患って初日の病人をお風呂に入れるわけにはいかないので久々の一人風呂を堪能する。と言っても最近は幸が言った通り一人で入ってくれる日ができているので全く久々ではない。
ただ、汗で体べたべたしているだろうからそのままにはしておきたくはないんだけど...、部屋で半脱ぎの好きな人の体を拭うなんて...。
「自分で拭いてよ...」
「私、病人だからさ」
結局こうなってしまった。今は背中を拭いてあげているんだけど...、前はまだ拭いていない。そして私は気づいてしまった。
「もしかしてだけどさ...」
「うん?」
「これ、治るまで私がやるの?」
「もちろん」
「無理です」
このタイミングで幸の背中が拭き終わる。だから私は深呼吸してから後ろから前を拭こうとしたら、幸が急に私の方に向き直してきた。だから準備不足の私は慌てて目を閉じる。
「急にこっち向かないでよ」
「背中拭き終わったと思って向いたんだけど?」
「後ろから拭くからいいの!」
「面倒臭いし、重い体を頑張って動かしたから...ゴホッゴホッ...ね」
「もう...」
私は観念して目を開けて幸の前を拭くことにする。タオル越しとはいえ感触が伝わってくる...。けど背中を拭いている時も異常な熱さも一緒に感じる。そのおかげで私の脳は病人だと断定して私の中の私を封じてくれるから頑張れば耐えられるかも。でもこの後に幸が言ったことに私の封印が剥がれかける。
「ねぇ、気になったんだけど」
「変なことは言わないでね」
「なんで私の裸体見たくないの?」
「一週間前ぐらいに言わなかった?」
「う~ん、頭がぼーっとしてるから分からない」
「私の中の私を抑えられなくなるからって言ったと思うけど」
「聞いてない。別に抑えなくてもいいし」
「......え?」
...なんて言った?この人。襲い掛かってきてもいいみたいなことを言ってなかった?ふぅ、落ち着いて。幸は今体調が悪いからつい何も考えずに言っちゃっただけ。じゃなかったらもうこの部分だけ夢ということにする。そのぐらい私は動揺している。
「ねぇ、さっきのって...」
「薬のせいで眠くなってきたから寝るね」
「あ、うん、おやすみ」
「おやすみ」
いつもは精神面で疲れることが多いけど今日は体力面で疲れている気がする。いや、今は両方かも...。その慣れない疲れのせいかさっき居眠りから起きたというのにもう眠くなってきてしまった。さっきの衝撃発言のことについてちょっと考えたかったけどこの貧弱な体はもう限界らしいので最後の力を振り絞ってうがいとか歯磨き等を済ませて幸が寝ているベッドに倒れるように横になり、今日溜まったものが私の目を閉じさせた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
記述した卵がゆは私が作っている作り方です。書いてあるよりかは鶏ガラと塩コショウ入れてます。誰が興味あるんでしょうねこれ。
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