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タイプな自殺志願者がいたので全力で幸せにする話  作者: 幸愛 リリー


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10/13

報恩

十話目投稿しました!

そして、お持たせしました...。

インフルエンザが蔓延っているこの家に何が起こるのか。

ぜひ!最後まで読んでくれますと嬉しいです。

 あの時の衝撃発言について聞きたかった私がいたけど、病人に詰め寄るのは良くないと言う私が先行して聞けずじまいのまま二日三日が経ち、体がふらついて熱も出てきた今日、今度は幸におぶられ、タクシーに乗せられて診察した。当然の如くインフルだと言われた。


「看病とかめんどくさ」

「したんだからしてください...。てかしてくれなかったら...かなりキツイので...お願い...します」

「仕方ないなぁ」


 なんで私がこんなに頭を下げるような発言をしなければならないならないんだろう。まぁ、最近だといつものことか。

 幸の症状は完治まではまだしていないけど、今は和らいで料理を作れるぐらいには回復している。けど結局食材がなく、買い物をしなければならない。だからと言って行かせるわけにはいかなくて、買ってきていたレトルトの残りも少なくなっているから名前は知っているだけで使ったことのないフードデリバリーサービスを使おうということになっている。

 

「あなたそんなんで何か食べれるの?」

「さすがに何か胃に優しい食べ物...あるでしょ」


 そのサービスのアプリを開くと見知ったお店の名前やその逆のお店がずらーっと表示されている。体調が万全ならどれか悩んでいるんだろうけど、生憎今は見ているだけでちょっと胃がぐるぐるする。


「幸...、選んでいいよ。そのお店から胃に優しそうなやつ...頼むから。コホッコホッ」

「わ~い」


 ここ数日は幸の嫌うレトルト食品だらけだったから笑顔で私の携帯を受け取って選び始めた。少し前までは長い前髪で隠れていたけど切ったおかげで顔半分とはいえよく表情が見える。今の幸はとてもいい表情(かお)をしている。

 頼み終わった幸は携帯を私に渡す。そのまま開きっぱであるお店のメニューの中から胃に優しそうな料理を探す...のだけど...。


「なぜ中華...?」

「らーめん?っていうの食べたことも多分聞いたこともなかったから」


 そういえばレトルトは買っているけどカップラーメンとかのインスタントは買ってないな。理由は単純でご飯を食べた方が健康に良さそうだから。その点インスタントはあまり健康に関していい話を聞かないからね。だからと言ってどっちが本当に健康にいいかは知らないけれど。

 というか中華って胃に優しい料理ってあるのかな。その逆の胃が重い料理のイメージしかないのだけど...。しかも私、中華ってラーメンぐらいしか食べれないぐらいには好きなものが少ない。...調べる。「中華 胃に優しい」と調べると出てきたのはカニ玉が出てきた。食べたことはないがこの際仕方ないと思って私の舌に合う味でお願いしますと祈って幸のと一緒に注文した。


 さて、今日から一週間ぐらいは休んでいいと仕事場の人は言ってくれたので私のすることは寝るぐらいしかやることがない。まぁ、病院から帰ってきてからずっとベッドで横になっているんだけど...、でも今寝ると届いた料理を寝起きで食べる羽目になるからちょっと胃に気を遣わせたい。

 だからといって携帯をいじるのは今の私の具合的にとても厳しい。なのでこういう時こその同居人。今はまだ治りかけなんだから横になってればという言葉に従って私と一緒に横になっている。


「ねぇ」

「んー?」

「暇ー」 


 いつもは幸がしてくる無茶振りを今日は私がしてみる。たまにはいいでしょって思いながら応えてくれたら嬉しいと期待を込めずに。


「...私が話せと?」

「うん」

「じゃあ...」


 どうやら意外にも私の無茶振りに応えてくれるらしい。絶対「寝てろ」とか言われるかと思ってた。で、幸が提示する話題はなんだろう。


「実は私あれが初めてじゃない」

「...ごめん。全く見当が付かないん...だけど...」

「飛び降りようとしたこと」

「......え?今?ゴホッゴホッ」


 無茶振りした私が悪いんだろうけど咽て咳き込む。確かに思えば幸はこういう話題を芸能人の婚約発表ぐらい急に上げるけども、だからと言っても今じゃない。そういうのはちゃんと聞きたいから。


「ねぇ..、幸」

「なんでしょうか」

「そういうのは私がもう少し元気な時に...また話して欲しい...かな」

「今聞かないと二度と聞けないよ」

「......はぁ。ゴホッ」


 元々痛かった喉がさらに悪くなった気がする。それ故にさっきまで会話しているのもちょっと辛かったのにもっと辛くなった。そして、この人はなんて鬼みたいなことを言っているんだろう。

 分かるけどね、過去の話なんてあんまり聞いて欲しくないのは。だとしてもそれをチョイスしたのは幸なんだからさって思う。そんなわけで私が当たり前のように溜息が出てしまうのはしょうがないこと。


「じゃあ私...、目瞑ってる...から」

「聞かないつもり?」

「聞くつもりだけど...口も動かしたくないぐらい...今辛い...から」

「...暇って言ったくせに」

「ごめんて...」


 ちょっとふてくされてしまったのか幸は隣でガサゴソと寝返りを打って背を向けてきた。だから私はどうやってご機嫌を取るかと熱に冒されてぼんやりしている頭で考えようとするのだけど、当然思い浮かぶ訳もない。なので私はもう体の動くままに動く。


「なに?」

「こっち向いてくれない...から」


 後ろから抱き着いてみた。けど、幸の声色は冷たい。というか服が間にあるとはいえ幸に触れているところから伝わる人肌がとても落ち着く。そんなに無理をしていたとは思ってなかったけど体はもう休みたいようでカニ玉が届くまで起きていたかったし、幸と話している最中だったけどその安らぎが私を包む。


「...仕方なく向き直ってあげる」

「......」

「...バカッ。...おやすみ」




 意識がないまま時間が経ちようやく覚醒した頃、寝ぼけ眼を擦って外を見てみれば空が黄金色に染まっている。いつの間にか日が沈む時間に差し掛かっていた。そして確か一緒に横になっていた幸の姿が隣にはなくて、目で探してみると暇そうに微音でゲームをしていた。


「おはよっ」

「......」


 あれ?聞こえてると思うんだけど...。


「さ、幸~?」

「......」


 お、怒ってる?あ、そういえば頼んでおいた物は結局どうなったのだろう。いつも食べている二人掛けのダイニングテーブルの場所を見るとおそらく私と幸が頼んだであろう器が二つあったからもう食べたんだなって判断して、食べ物関係なら口を聞いてくれそうだと思って安易にまた声をかける。


「ラ、ラーメン美味しかった?」

「食べてないけど!」


 口は聞いてくれたけどものすごい形相でこちらを見てきたけど、何回も見てきたから物怖じせずに言い返す。


「なんで食べてないの?食べればいいのに」

「...大体いつも一緒に食べてたから」


 今しがたの表情でこのかわいい発言が発せられて起きたてほやほやな私は戸惑ってすぐには早く食べたかったんだなと不機嫌な理由を察せれなかった。そろそろこの寝惚け頭を覚まそうと思い、起き上がって少し大きい声でじゃあ...と言う。


「食べよ!」

「うん...」

 

 ラーメンは伸びちゃってるかなと思って見てみるとどうやら麺と汁が別々になっていた。幸を知らず知らずに待たせてしまって麺が伸びてしまったなんてことになっていたらいたたまれない。良かった良かった。


「もう冷めてるだろうから温めた方がいいよ」

「あなたのもね」


 私は電子レンジ、幸は鍋に汁を注いで各々温める。温め終えたらテーブルまで運んで私も幸も席に着く。


「い、いただきます」

「いただきます。なんて言ってたっけ?」

「幸が一緒に食べたいなんて言うから」

「気遣い下手だね」

「うるさい!ありがたく黙って食べてなさい!ゴホッゴホッ」


 私も一部悪いんだろうけど、幸が大部分悪いせいで大きい声を上げさせられて咳き込む。それが落ち着いた頃に私が頼んだカニ玉を付いていたスプーンで一口食べる。初めてだからどんな味かと思ったけれどインフルのせいか味があまりしない。胃に入ればなんでもいいかと思っていたけど、目の前で満足そうに食べている人見ると早く治して味覚を感じたいと思い直す。


「初ラーメンはどうだった?」

「週一で食べたい」


 どうやらお気に召したらしい。だとすると週一でフードデリバリーとかお店に連れて行くとかしながらならないのかな。家で作れるラーメンなんてインスタントしか知らない。それじゃダメかな。

 そこからは特に会話もなく黙々と食べ進める。いつもこうゆう感じで一緒に食事をしているけれど、目の前に食べたい物があるというのにわざわざ私が起きるまで待ってこの時間を過ごしたかったなんて嬉しいとは思うのは当然なのだけれど、やっぱり私の告白に対しての対応が頭を過る。

 結局、幸が何を望んでいるのか、何がしたいのかがずっと分からずじまい。昨日今日とそういう話題が顔を出してはいるけど、インフルエンザとかいう邪魔物がいるせいで引っ張り出せない。ちょっと無理しないと...かな。

 

 味はしないけど幸のおかげで美味しく感じるカニ玉を完食して薬を飲む。その後は本当はベッドに横になりたいけれど、また椅子に座って今日顔を出した話題を再度引っ張り出す。


「まだ聞かせてくれる気分だったりしない?私、起きたばっかだしご飯も食べたから元気だよ」

「...嘘つき。早く横になりたいくせに。先にインフルになった私に通じると思ったの?」


 幸って私の好意以外はほとんど気づくの良くないよね。たまには気づいても知らんぷりしてくれてもいいんじゃないかな!?


「何その顔」

「無駄に察しが良くて不満な顔ですけど」

「はいはい。わかったならベッドで横になってようね~」


 なんかこのまま素直に従うのは嫌な気分かつ無理しなくて良くなったという安堵でついこんなことを口走ってしまった。


「じゃあベッドまで運んで~」


 しかも、まるで子供がねだるように、甘えるように両手を広げて。そんなことを言われた反対側に座っている幸は当然固まる。そこから体感長く感じる沈黙の空気が流れて我に返る。


「じょ、冗談だから!ゴホッ。私大人だよ!?本気な訳ないじゃん!?ゴホッゴホッ」

「......」


 一人で何してるんだろ...なんか余計に体調が悪くなった気がする...。とりあえず咳が落ち着いてきたからベッドで横になるために立とうとしたらガタンッと音が鳴った。幸が立ち上がったからだ。突然立ち上がったから少しビクッと体が動いてしまった。急に立ち上がってどうしたのだろうと思って様子を見てたら私の前まできた。


「ど、どうしたの?」

「あなたは察しが悪すぎる。ほらっ。立って」

「う、うん。わっ!」


 立ったと同時にお姫抱っこをされてそのままベッドに運ばれた。少しポカーンとなったけどすぐに返ってきて一応の理解はできた。


「ありがと...」

「ん」


 幸はそのまま薬を飲みに行った。私はその間、恥という感情が心をツンツンしてきて悶える。それが落ち着く頃には幸はベッドに帰ってきて私と同じように横になる。


「結局、話してくれるの?」

「...いいけど」


 やっと聞ける。寝て起きて、昼食を食べたぐらいの時間が経ったぐらいだけど。


「話す前に聞いていい?」

「どうぞ」

「質問ってしていいの?」

「していいよ」

「じゃあ...どうぞ?」

「そもそも、命を絶とうとしたのはあなたと初めて会って二日、三日目ぐらいなんだよね」

「...じゃあ元々体はガリガリだったんだね」

「そうね。毎日お腹が満たされない生活してたから。そこから簡単に連想できる通りお金が底ついてもういいかと思って絶とうとしたんだけど、何のいたずらか必ず止められた」

「...こう言うのもおかしいけど、場所が悪いからじゃないの?」

「あなたが見た飛び降り以外にも刃物とか縄とかでしようとしてもダメだったから多分関係ない」


 ...今私たちベッドで横になって、見つめ合って話を聞いているんだけどもさ...、なんで顔色一つも変えずにこういう話をできるの?大体涙ぐみながらするものじゃないの?って内心で動揺しながら平静を保って聞いてます...。


「ちなみになんだけど...」

「うん」

「今は...そういうことは...思ってたり...しない...よね?」

「うん。どうせあなたに止められるし」

「そ、そうなんだ...」


 これは良かったって思っていいよね。なんか遠回しに私が邪魔みたいなことを言われているように聞こえるけど、気のせいだよね...。


「で、あなたに出会うまでは止められただけだったけど、あなただけが唯一連れ去って現状に至る」

「私だけなんか犯罪に手を染めてるような言い方...。というか貧困が理由なら親頼るとか、頼れないなら生活保護とかあったのでは?」

「親はいない。親族なんて知らない。そこまで生きたいと思っていなかったから生活保護とか受ける気にもならなかった」

「...そっか」


 ずっと気にはなっていたけど聞けずじまいだった幸の過去をようやく聞けた。そして何を試しても止められたと聞いた時に私は運命?なんていう勘違い野郎みたいなこと思ってしまった..。実際にそうだと思いたいけどね。ただ今私が気になっていることは...。


「ねぇ」

「なんでしょう?」

「どうして急に話してくれたの?」


 確かに幸の過去は悲惨と言っても過言ではないと思うけど、結局一番気になったところはどこと聞かれたらこれだと思う。毎日ほとんど一緒に過ごしているというのにわざわざ二人がインフルに罹っている状況で急にその話題を出したから。幸のことだし何の考えも無さそうだけど気になるものは気になる。


「恩に報いたかったから...」

「恩...ねぇ...」


 私からすれば私のタイプだなーと思って自宅に連れ帰ってお世話してたただのエゴ野郎なんだけど、幸からすればそれが美っ化美化にされて、それが恩となっているらしい。報いたいと言ってくれているのに喜ぶに喜べない...。


「だから...あなたの告白にも応えたかったのだけど...」

「いやいや!無理して応えてくれても私はうれしくない!ゴホッゴホッ!...よ?」

「そう...」

「確かにいい返事をくれたらいいなとは思ってるけど、私がずっと願っていることは幸がずっと一緒に居てくれること。だから......幸もそれを願ってくれるなら......その時間分考えられると思うから...さ?」

「うん......」


 自分のことを話している時はなんとも興味が無さそうにしていたのに、私の話をしたら泣いてしまった。普段の態度は何だったのかと思うほど素直な幸が目の前にいる。直感だけど、この幸が本当の幸なんだと思った。

 目の前で泣いている好きな女子をいつまでもこのままにしておく訳にはいかないので、今日寝落ちてしまった時よりも強く抱きしめる。

 だけど問題がある...。それはもう薬の副作用でとても眠くなってきているということ。だけどそれは幸も同じこと、だから私のすることは単純で薬の眠気と人肌の安らぎが私の意識を沈める前に幸を寝かせればいい話。

 すすり泣く幸に抱きしめるだけでは足りないと思い、頭も撫でることにした。幸の頭なんて頭を洗う時にしか触れたことがなかったから、こんなさらさらでふわふわな触り心地なのかといつも泡越しの触感だったから気づくことができなかった。

 しばらくそうしていると「すぅ...すぅ...」という寝息が聞こえてきた。今の状態を解こうとして起こしてしまったら意味がないので、このままの状態で私も目を瞑る。

 あ!そういえばなんでそんなに料理が上手いのか聞いていなかった...。起きたら......聞こう...。


***


「ん?ん~~!ふわぁ~」


 睡眠欲に抗ったからかものすごい時間を寝てた気がする。窓の外を見ると真っ暗で今の時刻なんて詳しは見当つかないけどそんなものはどうでもいい。それよりも気になっているのは部屋に漂う美味しそうな匂い。私はそれで目が覚めた。


「おはよっ」

「おはよう。そんな時間とは思えないけど」

「幸の料理久しぶりかも」

「......え.....き...」

「え?ごめん。聞こえなかったからもう一回」

「私、栄 倖(さかえ ゆき)。幸じゃない...」

「...!私は泉 恵!って言うのも今更で変な感じだけど...よろしくねっ!倖!」

「うん...よろしく...恵」


 何か心変わりがあったのだろうけど詳しくは聞かない。だってもう今日はお腹がいっぱいになったほど幸...じゃなかった...倖の事を知れたから。でもこれを聞くには今がちょうどいい。


「ねぇ、倖」

「...なに?」

「なんで倖の作った料理はいつもおいしいの?何か料理関係のことしてたの?」

「私、料理したのここが初めてよ」


 ...私は片手で数えられるぐらいしか料理をやったことないけど、すべて黒くなったのに倖はすごいなぁと思う。というより、私が出来ないことを出来るのが尊敬する。


「...許可したとはいえ私ばっかり質問されているのが癪だから私もするね」

「ど、どうぞ」


 何を聞かれるんだろうとちょっとどきどきしながら待っていると倖の口が開いた。


「なんで私を連れ帰ったの?」

「...引かない?」

「引くような理由で攫ったの?」

「......ふと見た時に見えた顔がタイプだった...から」

「.........」

「何か言ってよ...」

「あなたの善意で私を連れて帰ったのかと思ってその恩に報いたいと思ったのに、まさか身勝手にした結果だったとはね...。返してくれる?私の善意」


 言ってはまずいとは思ったけど、好きな人には誠実でありたいと思っている私は当然嘘を吐くなんてことはできずに為すがままに言った。その結果今は平謝りしている。その状態が数分続いて倖が言う。


「冗談よ」

「質が悪い。また出て行かれるかと...」

「出て行くわけないでしょ。だって...」


 と言って私の耳元でその続きを囁く。


「いいの?」

「なんで涙目になってるの?あとそのセリフは私のだと思うんだけど」


 だってそれは私が待っていた。願っていたことだったから。涙目になってしまうのは仕方ないと思う。


「ほらっ、どうせお腹空いてるでしょ。今、作り終わったから食べましょ?」

「うん...」


 久しぶりと言ってもそんなに時間は経ってないけれど、ここ数日で食べたもので一番美味しいと思ったのはやっぱり倖の料理なのだと身に染みて感じた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

私は最後はいつ罹ったか分からないぐらいにはインフルに罹ってません。ただ、そろそろそういう季節になるので気をつけてくださいね。

明日、十一話上げます。お楽しみに~。

ぜひ!高評価やポイント、感想をいただけたらとても幸いです!

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