只今
なんとか早めに7話目を投稿できました!
喧嘩して出て行った泉の言えないこととはなんなのか、何を抱えているのか。
ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです!
「お邪魔します」
「こんな夜が深まった時間にお邪魔するのは強盗か空き巣ぐらいしかいないでしょうね」
「連絡しといてなんだけど、なんで起きてる?」
「明日...というより今日有給取ったから夜酒しようと思ったらなんか来た」
「へえ、お邪魔します」
「邪魔すんな。酒の摘みになる話を寄越せ」
「最低なやつだな」
花音しか頼れる友達がいないけど、実際こんな時間に泊めてもらえるという頼もしすぎる友達を持ってしまっているから私には友達がいない...んだろうね。
花音の家に泊まるのはこれが初めてではない。愚痴を聞いてもらえるようになって酒を酌み交わすときは大体そこから近い花音の家に泊まっている。私用の布団があるくらいには幾度も、それに加えて歯ブラシとかも置いてある。
「で、するだろうなと思ったけど原因は何なの?」
「少し距離が置きたくなったから離れようとしたらそれがバレた」
「なんで離れる必要がある?」
「だって...私女性が恋愛対象じゃん」
「本人がそういうならそうなんだろうけど、もしかして惚れたの?」
「まだ惚れてないし、惚れないために離れようとしたんだし」
花音にはもう幸と私についてのことは大体は知っている。幸が飛び降りようとしていたとか料理を作ってもらってることとかそういうの。それらを教えたら面倒臭そうな雰囲気を出していた。多分こうなる事が分かっていたからなんだろうけど...、すごく頼れる友達だね!
「うーん、ちなみにどう言い訳したの」
「今はまだ言えないって言った。で帰ったら言うって言って今に至る」
「言い訳のいの字もしてないし、てか言ってないんだ女性が恋愛対象なこと」
「言ってない。言ったらあっちが離れて行きそうだから」
「でも結局言わなきゃいけないんだから変わらなくない?」
「そうなんだけど...でも適当に嘘付けば良いっていう選択肢も...」
「別にそうするのは勝手だけど、恋愛の漫画小説を読んできている人がそんな判断を下すんだな」
「うぅ...、だってこんなに誰かと暮らす日常が良いとは思わなくて...」
「まるで誰でもいいかのような言い方」
「全然良くない!」
あんなにむかつくほどの美顔でなぜか料理が上手い彼女。出会った時はとんだ貧乏くじを引いた気分だったけど、今ではもうこれは運命的な出会いとしか思えない。これで上手くいかなかったら会わせた意味が分からない。
「ならもう言うこともやる事も決まったわけだし、帰れば?」
「え?」
「ん?」
泊まってもいいよっていう連絡をくれたから花音の家に来たのに、用が無くなったなら帰れと言われている気持ちになる。ていうか。
「こんな夜更けにか弱き乙女を一人で帰らすつもり?」
「えぇ、だってお酒一口も口付けてないし、こんな親身に聞いてあげたし」
「それぐらいの見返りをくれと」
「まぁ、そういうことだね」
「後払いでいい?」
「いや、私の晩酌に付き合って。飲めなかったし、私も...いやなんでもない」
「晩酌ぐらいいつでも付き合うよ」
花音は酷い言動を言うことがあるけれど、それと同じぐらいの頻度で優しいも言ってくる。いわば飴と鞭を体現したような人だから長く関わっているとわかる。鞭が来ると飴が来ることを。正直愛い奴だなぁって思う。
「何か変なこと考えてるな?」
「いいえ。なにも」
花音はお酒が入ると飴か鞭どっちかが無くなる。今日は飴が無くなったらしい。そんな彼女とお酒を楽しみ、眠くなってきたところであらかじめ敷いといた布団に横になる。
「今日は泊めてくれてありがとね」
「もっと感謝してもいいんだよ」
「いつも感謝してるよ~」
「伝わってないから意味無いよ」
「花音は唯一無二の友達だよ」
「はいはい。もう寝な」
もっと感謝しろとか言うから言う通りにしたのに塩対応されたけど鞭は振るわれなかったから助かった。
明日...よりかは日を跨いでしまっているから今日、起きたら家に帰って幸に言う...のかぁ。心の準備を整えるために家を出てきたけどこれじゃあいつまで経っても不安に邪魔をされてここを出れない気がする。その間も今も幸を一人しているわけで...、幸はどのくらい待ってくれるのだろうと思うと焦る。この二つの感情が私を不安定にさせる。はぁ、少し堕ちそうだから起き上がって深呼吸することにする。
「すぅ、はぁ。すぅ、はぁ」
「ん?どうかした?」
「いや、気にしないで。起こしちゃった?」
「うーん、まぁ、起こされた」
「それはすまん」
「まぁいいけど、起きたら帰るのか?」
「帰りたい」
「意味が分からない。じゃあ出てけとか言った方がいいのか」
「そんな殺生な!」
「なんなんだこいつ。今までそこそこ相談にも乗ってきたけどそんなに思い悩むなんて初めてじゃない?」
「うん...そうかも...」
「なんか原因みたいなのがある?」
「ズバズバ聞くね」
「泊めてあげてるから聞く権利ぐらいあるかなって」
「じゃあ聞く?」
「うん、聞いてあげる」
「なんか腹立つけど、まぁいいか。私の異性の親がいわゆるDV野郎で親子共々暴力を受ける毎日」
「思った以上に重いし、最低だしで動揺してる」
「その後はなんとか離婚できて、同性の親と住むことになるんだけど」
「待ってくれないし」
「その親は極度の放任主義でお金だけ置いとくだけの人だった。だから高校入る時には一人暮らしを始めた。お金だけは出してくれる人だったからなんとかなった。でもいつまでも頼っていたくなかったからバイトもしつつの毎日で、それを社会に出るまで続けて今に至ってる」
「なかなか壮絶な過去をお持ちだね...。でも結局思い悩んでいる理由が分からないんだけど」
「私昔から本を読んでて引っかかった言葉があって、それが”人間生きてればいいことある”っていう言葉。それが本当か気になって今生きてる」
「その”いいこと”が彼女なんだ」
「そう。だから...離したく...ない...」
硬く蓋を閉じていた過去の話をして少しでも報われたいという思いが膨らんで、つい目から涙が滴り落ちる。そんなすすり泣く音に気付いてか、花音は起き上がって私に駆け寄ってくる。
「一応謝っとく、ごめん」
「私が勝手に言っただけだから、でも肩少し濡らすね」
「うん、大迷惑」
私は言った通り花音の肩を濡らして、泣き疲れてしまってそのまま力尽きるように目を閉じた。それから目を開けたらいつの間にかもう時間は昼頃を指していた。今日帰るか悩んでいるのにその悩む時間が無いなぁと思う反面、気持ちを吐かされて、泣かされたおかげで今とても気分がスッキリしている。
そうさせた本人に文句言いたくなっていつも寝ているベッドを見るとその姿が無い。でも何かをしている物音がしないため寝ているはずなんだけどなと思いながら探すために立とうとすると腕が引っ張られた。何!?と思いながら布団をめくると......いた。どゆこと?
「おーい、起きてー」
花音の体を揺さぶって無理やり起こす。普通は起こさなくてもいいんだろうけど、互いに女性が対象っていうのもあって、浮気してるような感じがして嫌だったからつい起こしてしまった。
「ん~、なに~」
「なんでここで寝てるの」
「家主なんだからどこで寝たっていいでしょ」
ごもっともな事を言われて何も言えなくなる。
「もう帰るの?」
「まだ悩んでる」
「泉の気持ちはわかるけど。正直もう当たって砕けるしかないと思うけど」
「うん...分かっては...いるんだけど...」
「まぁ、振られても私が泉の”いいこと”になってあげる。とか言ってみたり...」
「花音はもう”いいこと”でしょ。現に今とても助かってるし」
「...やめてよ恥ずかしい」
「言ってみたりするからでしょ」
「それはそう」
なんだかとても気恥ずかしい。花音が変な事言うから私も変な事を言ってしまった。これだから浮気してるような雰囲気を感じるんだ。
「さて、帰るかぁ」
「じゃあ帰ろうとする動きをしろや」
動き出せないままゴロゴロしてると私の携帯が震えた。幸からの連絡が来た。その内容を見てみると「まだ帰って来ないの?」って書かれていた。それによりは私は無理やりにでも帰らざるを得なくなる。幸には「今から帰るとこ」と送って立ち上がる。
「やっと帰るのか」
「うん。お世話になりました」
「頑張ってー」
花音の気持ちの込もってない声援を聞いてその家を出る。昨日この家に来るのは遠くに感じたのになぜか帰るときは近くに感じる。要は心の準備が出来ていない。はぁ、なんとかならないかなと思っていたらもう着いた。
「た、ただいまー」
「遅い!」
そっと玄関を開けて入ろうとしたら、幸はもう玄関前で待機していた。なんでそんなに怒ってるの!?
「私から離れたい理由、事細かに説明してもらうから」
「はい...」
どうやら私は”人生生きてればいいことがある”ことがあるということを信じるしかないみたい...。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回の話は会話が多くて書いてるときにこれ小説?って思ったけど、小説と言えば小説になるからいいかと自己完結しました。はい。
ぜひ!高評価やポイント、感想をいただけたらとても幸いです!




