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タイプな自殺志願者がいたので全力で幸せにする話  作者: 幸愛 リリー


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3/13

買物

三話目投稿しました!

誤字脱字あったらごめんなさい!それでも読んでくれると嬉しいです!

 賃貸契約の審査が無事通り、やっと二人暮らしが始まって数日後。幸が来てからは二週間経っていないぐらいが過ぎた頃に私は思い始めた。ベッドが狭いと。

 ええ、そのぐらいの時が経てば少し悪い環境にいたであろうガリガリだった幸でも環境が整ってしまえば自然に肉が付き始める。そのせいで狭くなってるんです...。良い事のはずなのに悪い事のように感じる。

 なので私は幸にベッドから落とされる前にダブルベッドを買おうと決断した。ついでに幸の服も買いたい。私の分の服しかないから前までは二、三日洗濯していたのを毎日洗濯しないといけなくなってしまった。それがもう面倒臭すぎるから幸も誘うことにした。断られても連れてくけど。

 今は朝八時半頃、幸と一緒に例に漏れず食パンを食べている。目の前に幸がいるので誘ってみる。


「今日十時頃に買い物に行くから」

「いってらっしゃい」

「準備しといてね」

「行かないけど」


 そう言うと思っていたので、私は幸にスマホの画面を見せる。


「ちなみにこれ食べてくるから」

「...卑怯者!」

「別にいいんだよ?お留守番してても」

「準備しとけばいいんでしょ!」


 幸は最近テレビの特集とかで流れる美味しそうな料理にとても興味が湧いている。理由は単純にレトルトしか食べていないからだそう。だから私は買い物に行く場所の近くにある駅前の人気の店の料理の画像を見せた。そうすれば必ず着いてくると思ったから。

 食パンを食べ終わり出かける準備を始める。準備が終わったらもう家を出る時刻になっていた。


「行くよー」

「はーい」


 玄関前で待っていると何も持たない身一つの幸が出てきた。この前私物は無いのか聞いてみたら、衣服以外売り払って使ってあの橋に着いたとのこと。運命は数奇なんて言葉がよく当てはまるなと、そんなことを思っていた気がする


 二人で玄関を出て鍵を閉めて歩き始める。

 買い物をする場所はここから徒歩とバスでニ十分のところにあるショッピングモール。いつもお世話になっているためフロアマップは完璧である。


 幸と出かけるのはこれが初めてで、内心何か面倒事が起きそうで不安である。でも不安事は四パーセントしか的中しないとネットに書いてあったのを思い出し、じゃあ大丈夫だろうと一人で解決する。


 二人で少し歩いていたらバス停に着いた。そして私はこの待ち時間に忘れていた調べものをする。一、二分待つとバスはやってきた。私はバスに乗り運転手さんに「二人分支払いたいのですが...」と伝える。そう調べものはこのこと。幸はICカードを持っていないから、こうすることで私のICカードで支払いができる。便利だね!

 今日は平日でバス内はガラガラであるため、座席には余裕で二人隣同士で座れる。座っていると何やら隣から息が上がっている呼吸音が聞こえる。


「え?まだ歩いただけなんだけど」

「だ...から、な...に?...あなた...が...歩く...のが...は...やい...の...」

「あなたが遅いだけなのでは?」


 考えてみれば服で隠せてはいるけどその不健康そうな体で健康体の私に歩を合わせるというのが無理な話ですね。

 はぁ、はぁと息を整える幸。その様子を見ている私は四パーセントを的中させてしまったと思った。まだ五分も歩いていない程度なのにこの体たらくでショッピングモールなんて歩いたらどうなってしまうのだろうか。間違いなく果てるに決まってる。どうしよう。


「今日、服見てベッド見てお昼食べて帰るんだけど、いける?」

「お昼まで頑張る」

「帰りは?」

「おぶって」

「歩け。あとあなたのその邪魔な前髪も切りたいんだけど」

「嫌。切らせない」

「邪魔じゃないの?」

「邪魔だけど嫌」

「ふーん」


 友達以上な関係になってもおかしくはないぐらいの時間を一緒に過ごしているけれど、幸について知っている事はさっき言った美味しそうな料理やゲームに興味を示しているぐらいしか知らない。だから先ほどの返答の理由も想像がつかない。

 だからと言って私から歩み寄ったり詮索したりはしない...とは言い切れないけど、待つスタンスではいる。正直生きてくれてればそれでいい。


 バスに乗って十五分、降りる予定のバス停が近づいてきたのでずっと隣で暇そうに窓の外を見ている幸に声をかける。


「次のバス停着いたら降りるよ」

「ん」


 こちらを見ずに短い返事をする幸。関係が良好になったらこういう時どんな返事が返ってくるのだろうと雲を掴むように現実性のない事に思いを馳せる。想像できないや。

 バスが目的地のバス停に着いたので一緒に降りる。そしてバス内で考えていた幸が疲れなさそうな提案を伝えてみる。


「手でもつなぐ?」

「嫌」

「幸のペースで歩けるよ」

「......」

「疲れないで済む。...かもよ」

「...」


 スッと手を差し出してきたので気が変わって引っ込めない内にその手を取る。足取りが遅くてペースを合わせるのに時間がかかり、いつの間にか目的地のショッピングモールに着いていた。私はなんだか少し疲労感を感じたけど隣の幸は思いの外疲れてはなさそうだからまぁいいかと思った。

 

 ショッピングモールに入り、第一に手を振りほどかれるかと思ったが別段そんな素振りを見せない。それについて触れたらせっかく繋いでいる手をほどかれそうで嫌だからこのまま話題にもせずに歩く。

 私たちは今二階にある服屋に向かっている。多岐にわたるほどにずらーっと店舗が並んでいるため普段ならどこに入ろうか迷ってしまうところだが、今日は幸の服だから古着屋に足を運ぶ。


 古着屋に入りレディースのコーナーに向かう。古着屋なだけあってバラエティ豊かで値段が手頃だから手を伸ばしやすい。ありがたい限りです。


「私が服選んじゃって良い?」

「暇だから私も選ぶ」

「りょーかーい。気に入ったのとかあったらこのかごにいれちゃって」


 言い終わるのと同時に幸はどこかに歩いて行った。私も良さそうな服がないか店内を歩き回る。そうして幸の部屋着用の服を三着に外用を一着、そしてさすがにあった方が良いと思ったので鞄と財布もかごに入れる。本当に色々な物が並んでいるなと思う。

 そろそろ会計しようと思って幸を探そうとしたら向こうから来てくれた。幸からかごを受け取り、量が少ないから大丈夫だろうと値段も見ずに私が持っていたかごにそれらを入れてレジに向かう。店員さんにかごを渡してカスタマーディスプレイをじっと見る。幸が選んだものが上の方にあるためすぐに読み取られるのだけれど、一瞬にして五桁の値段が表示されました...。それから「これは抜いてください」なんて言うことはできずに予想外の出費をさせられました...。あの女狐!値段見ない私が悪いけど!


 店の出入り口で待っていた幸と合流して文句を言う。


「高すぎでしょ!」

「確認しないあなたが悪い」

「冷や飯食いのくせに!」

「あなたが拾った」

「こんのっやろう!」


 しばらく言い続けるも軽くいなされて泣けてくる。立場的には私の方が上なはずなのに...。幸の見づらい顔を覗き見ると悦に浸っているような顔をしているような気がする。なんか...まぁいいかと思える。


 次にベッドを買うために一階にある家具屋に向かう。マットレスの硬さを確認するために座ったり寝そべったりするから隣で少しおぼつかない足取りをしている幸には良い休憩場所である。ちなみに今も手を繋いでいる。勝手に手を取ったのだけど特に何も言われずに、なんだったらそれを支え棒のようにしている。ガンバッテー。


 家具屋に入って他には目もくれずにベッドが置いてあるコーナーを探す。意外と奥にあって少し面倒臭い。確かにそんなに買い替えたりするものではないけれどね。もう手を繋いでいる腕が痛いよ。

 私が思っていたよりも種類は豊富で迷いそうになったが、一目惚れするデザインのベッドを発見した。すぐさまマットレス込みの価格を確認する。今日は散財デーだなと思った。


「マットレスはこの硬さでいい?」

「なん...でも...いぃ...」


 そう言いながら座っている私の横をドサーっと倒れるようにうつ伏せに横たわる。


「一応他のも見てくるからそこで休んでなよ」

「......」


 返事がないただの...って続きそうな絵面である。

 引き続き見ていないところを見て回るがこれといった物はなかったので一目惚れベッドに戻って。店員さんを呼んでご購入させていただいた。もちろん配達も組み立てもお願いする。その間幸はものすごくだらだらしてました。良くできるなと思いました。


 最後に幸が待ち望んでいるであろう昼食の時間である。買い物はスムーズに終わっているはずなんだがなぜか今の時刻は二時半を刻んでいる。原因は単純明快で移動が遅すぎるからだけど...まぁ彼女、頑張ってるよね。


「ほら、待ちに待った人気の店に行きますよ」

「待ってました!」


 休憩したからなのかやっと食べられるからなのかその両方なのかは分からないけれど、食べ物一つでこんなに喜ぶなんて可愛いなと不覚にも思ってしまった。本当に楽しみだったらしく、ショッピングモールを出てからは今日二の速さで歩いて思っていたよりも早くに着いた。ちなみに今日一は自宅からバス停への道のりの時。


 お店に入って、席に着いて注文をする。私は人気定番メニューのパンケーキを頼んだのだけど幸はそれに加えてオムライスを頼んだ。それには思わず突っ込む。


「ちゃんと全部食べれるんでしょうね」

「お腹減っているから平気でしょ」

「私小食だし、食べかけとか食べられない人だからね」

「大丈夫大丈夫」


 ものすごく不安だけれど残したらそれだけレトルト以外の料理を食べたかったのだろうと思うことにした。しばらく待つと料理が運ばれてくる。

 最初に運ばれてきたのは幸が頼んだオムライス。それが届いた瞬間すぐ食べ始める。一口頬張ると目を輝かせている...ように見える。前髪であまり見えない。それからは一口、また一口と頬張りながら食べていき、あっという間にもぬけの殻ならぬもぬけの皿となった。どうやら私もいつの間にか疲れが溜まっているらしい。というよりまだパンケーキ届いてないんですけど。

 また少し待つと二つのパンケーキが運ばれてきた。見た目は平たいパンケーキであるが、三段になっておりバターも乗せてあって食欲をそそるがそれだけではなく。なんとたっぷりと入ったはちみつの容器がある。つまりチョコフォンデュのように付けて食べられるのである。それをたっぷりと付けて口に運び咀嚼する。あぁこれがカロリーの暴力である。甘すぎて美味しすぎてほっぺが溶けて落ちる感覚がする。さすが人気定番メニューである。ちなみに幸はさきほどよりも確実に目を輝かせながら食べている。美味しすぎて食べるのが勿体ないと思いながら贅沢に食べていって完食した。もちろん幸も。その後は支払いを済ましてお店を出て帰路に就く。


「ほら、あとは帰るだけだから」


 私はそう言って幸に手のひらを差し出す。すると幸も私と同じように手のひら差し出してきた。どうやらなんでかは知らないけれど自分から手を取りたくはないらしい。しょうがなく私は手の甲を上にして差し出された手を取る。そのままバス停まで歩き、乗って、支払いをして降りる。あとは自宅まで歩くだけなんだけど...。


「確かによく歩いたけど、もう少しで家だから頑張ってほしいなぁ」

「...無......理......」


 本当に無理そうな顔をしている。バス内は少し混んでて途中から座ったから回復しきれなったらしい。しょうがないなぁ。


「ほら!乗っていいよ」

「......」


 私は幸に背を向けるように片膝をついて身を屈める。幸はふらふらとおぼつく足取りでありながら無事に私の背中に身を預ける。そうしたらばあとは立つだけ。気合を入れて膝を伸ばすと、すぅーっと持ち上がった。めっちゃ軽い。

 そして人の太ももってやわらかいはずなのに硬い...。まぁほぼ毎日一緒に入ってるから分かってはいたのだけど、体重を測ったり持ち上げたりしたことがなかったからこんなに軽いのだと今知る。一応肉は付いてきているはずだけど、幸が人間になるのはまだまだ先なのか...。


 色々と考え事をしていたら自宅に着いた。中に入っていつの間にか寝ている幸をベッドに寝転がす。本当はお風呂に入ってから寝て欲しいのだけれど、数日後には捨てられるベッドだからまぁいいかと私も寝転がる。


 今日は私が一人で買い物行くよりも疲労が溜まっている。何より手を繋いでいた腕が支え棒代わりにされていたから悲鳴をあげている。だけど二人で行った買い物、もといお出かけはとても楽しかった。だからこれからもお出かけしたいから美味しそうな物を探しておこうと思った。

 横で爆睡している幸を見る。前髪が邪魔で表情が見えないけど寝ているから大丈夫だろうと前髪を横に流す。そこから出てきたのはとても幸せそうな顔した表情だった。


「幸もたのしかった?」

「すぅー、すぅー」


 返ってくるのは寝息だけ。当たり前だけど聞かずにはいられなかった。だって、私だけそう思っているのはとても寂しい事だから。


「いつか教えてね」


 私は溜まった疲れが連れてくる睡魔を受け入れるように目を閉じた。

最後まで読んでくれてありがとうございます!

投稿ペースを週一にしたい...。

ぜひ!高評価やポイント、感想をいただけたらとても幸いです!

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