嫉心
第十二話投稿しました!
災難続きを乗り越えた先にあるものは幸か不幸どっち?
うーん、なんか読みづら...いや!読みやすい!だから最後まで読んでくれると嬉しいです!
「た...ただいま~...」
そろそろ夜が更けっていく時間に私は自宅の玄関を開け、靴を脱ぎ、廊下を歩いてリビングに恐る恐る入る。最初に目に映るダイニングテーブルにはいない。だけど、この部屋の中で他に目につくものはもうベッドしかないのでそこに目を向けると、そっぽ向いて携帯をいじって(いるように見える)寝る準備が整っている(というかもう寝てそう?)倖の姿が映る。
一応、起こさないようにに音を立てないようにこっそり歩いてベッドに近づく。そして念のために手を付いて顔を覗き込む。目を瞑って静かに息をしている。見たところ倖は寝てしまったらしい。
......いつもは倖の方が朝ごはんのために早く起きてしまい、寝顔を拝むことはあまりない。だから、この状況は少し珍しいから少しの間拝むことにした。
これもまたいつも思う事だけれど、髪って大事だよね...。切ったのが私とはいえせっかくの美顔なのにそれ以上のガタガタの髪型の方に目が付いてしまうからもったいないと思う。付き合った今なら散髪に行ってくれるんじゃないかと淡い期待を抱く。
そんなことを思っていた折、倖は都合良く寝返りを打って仰向けになった。...せっかくだし、片顔を覆う前髪をどかして顔の全貌を拝む。...美容院薦めよって思った。
いつまで見ていてもいいのだけれど、ずっと見ているのも悪いと思い、睡魔が襲ってきているのもあって寝る準備をしようとベッドから離れようとした時、不意に声が掛かった。
「何もしないのね。浮気者」
ずっと寝ていると思っていたから、一瞬ビクッっと体が強張ってしまった。こういう反応を人に見られるのはとっても恥ずかしい。
倖とおしゃべりを続けるためにベッドに座る。
「浮気じゃないって...、朝あんなことしたんだから機嫌直してよ」
「あれは前払いだから。むしろそれが無かったら今の私がどうなってたか分からないけれど」
「そ、そうなんだ...」
「それじゃあ、私の言う事聞いてもらおうかな」
「......一つだけだよ?」
どうしてこんなことになったかと言う話をするためには約二週間前に遡る。
***
喧嘩して仲直りしたと思えば、インフルに罹り、それが治ったかと思えば少しの間入院するという怒涛の不運の嵐が押し寄せてはいたけど、ところどころに晴れ間という幸運があったおかげでこの約二週間を乗り越えられた。......例えがあまりしっくりこないけど気にしない。
そこで、やっと一段落が付いた私は、最新の連絡内容が「仲直りできた!」で終わっている花音にその件でのお礼がしたいという旨を送った。そして返ってきた内容が「別にもうしてもらったはずだけど、仕方なく貰ってあげる」という捻くれたものだった。いつもの花音だなと思いながら返信をしていって、最終的に花音を敬う会の日程が決まった。
そして、次にやる事は同居人に伝える事...なんだけども、少し前にもこういう流れがあったけどその時は連れて行った。だけど今回は私が花音を労って心身を癒させるのが目的のため、友達の友達である倖を連れて行くと目的を達成できないと断言できる。だから今回はお留守番をさせなくてはならない。
ベッドでごろごろしている倖の元に腰掛ける。
「倖ー。ちょっとお話が...」
「私には都合が悪そうな話な気がする」
そう言って、倖は私の話を聞くためか起き上がって私の隣に腰掛ける。
「この日、友達...花音とお出かけするから...」
「私は?」
「......お留守番」
あまりにも言いづらい言葉を溢して目を逸らす。勝手に友達と話を進めて予定を立てて、まだパートナーになって日が浅い彼女は家にいてねっなんていう罪悪感をものすごく感じる事をしてしまっているのだから直視出来るわけがない。
じゃあ、順序を逆にすればいいじゃんと言われれば何も言い返せない。私って倖と出会った日もそうだったけど、無計画に行動をしてしまうところがあるのかもしれない。でもいい方向に働いてくれているから気にしなくていいかな。今は違うけど...。
「...浮気するの早いね」
「浮気ではない!」
そんなことを言われるとは思ってもみなかったので、つい反射で逸らしていた顔を戻し大きい声で否定してしまった。その結果、悪気はないとはいえ隣にいる倖の耳に大ダメージを与えた。それには倖も思わず横に倒れる。
「うるさ...」
「ごめん...。だけど倖も悪いと思う」
「まぁ...そうね。話戻すけど、私が言ったこと覚えてる?」
「...どれ?」
「......」
どうやら私が思い出すまで何も言ってくれないらしい。急に言われても出ては来ないけど、ずっと私の事を見てきているから引っ張り出してこない限りは話が先に進まないのだと思う。どうしてこんなことに...。
多分、お留守番に関して文句があるんだろうけど倖が言ったこと...、私は手で水を掬うように簡単に浴室で倖に言われたことを思い出す。ずっと私の事を見ていた倖は表情で察したのか自分で答えをばらした。
「私を”不幸”にするつもり?」
「うーん...」
ちょっと一日出かけるだけなのに簡単にはいかない。それを面倒くさいだとかは全く思わないけれど、こういう時にお互いが納得できる案が思い浮かばないのはなんとかならないかなとは思う。だから結局のところはここに辿り着く。
「ごめん、その日だけ”不幸”にする」
「ふぅん」
「お詫びはするからさ」
「当たり前」
なんとか丸く収まって、後日「とりあえず、当日帰ってきたら私の言う事一つ聞いてもらう」とお詫びの内容が言われた。なんだか嫌な予感がする内容だけど、それを断れる権利は私にはないだろうからなるようになれ精神でその日を待つことにした。
その日になるまでの間の倖は少し棘があったように感じたけれど、いつもの倖とさほど変わらないと思って過ごしていた。感情を抑え込んでいるとも知らずに。
そして私が出かける今日の朝、自宅を出ようとした時に突如として倖に呼び止められた。
「どうしたの倖」
「お腹出して」
「...なんで?」
「お詫びの一種」
「......はい」
今日はお詫びという言葉に一番弱い日なのでそう言われたらそうするしかない。私の今日来ている服はお腹を出していない(そもそも持ち合わせていない)ので、お腹が見えるような位置まで服の裾をたくし上げる。......急に何をさせられてるのかという当惑といつも通りに押し寄せる恥ずかしさで頭の中は混乱する。
そんな中は倖は屈んで私のお腹に顔を近づけようとする。
「ちょっと!何しようとしてるの!?」
「......」
「何か言えー!」
明らかに普段はしないことをしようとする倖を止めるために摘まんでいた服を放して倖の肩を押すのだけど、これが全く動かない。
それに加えて服を放すのが遅かったせいで倖の顔に服が被さる。言い換えれば、もう倖の眼前には私のお腹があるということ。そう思うとさらに恥ずかしくなる。
そんなことを思っている間にもさらに状況は悪くなるもので、倖は私の腰に腕を巻き付けてきた。元々肩を押してもびくともしないのに余計に動かなくなった。なので私がすることは力を抜いて時が過ぎ去るのを待つこと。...最近力で丸め込まれることが多すぎるなぁと、そろそろ本格的に筋トレとかを始めないとなぁとそんな呑気な事を考えていると突然お腹に柔らかい感触がした。
「ひゃあ!」
感じたことのない触感をお腹で感じてつい素っ頓狂な声を上げてしまった。ただ、今私たちがいるところが玄関なことに今更気づき、一応の反抗の意志をと思って倖の肩に置いておいた手をこれ以上声が漏れないようにするために口元に添える。
何をされているか、何が触れられているかもわからない。しかもその感触は今もずっと感じる。だから、そろそろ離して欲しいと声をかけようとした時、不意にこそばゆい刺激を触れられているところから感じて、つい反射的に前屈みになり、その刺激から逃れようとしたけれど巻き付かれている腕のせいで出来なかった。
何やら皮膚が強く引っ張られているような感じとこそばゆさを同時に感じさせられながら声を我慢したとても長く感じる十秒が経ち、やっと私は解放された。
「何したの?」
「もう行く時間じゃない?行かないの?」
と言って、まるで何事もなかったかのように今の時刻が表示されている携帯の画面を見せてきた。...もう出ないと遅刻が確定する時刻になっていた。今日は私が主催者だから遅れる訳にはいかない。
「あぁもう!行ってくるね!」
「行ってらっしゃ~い。.........本当は首が良かったんだけどね」
何やら倖がぼそっと言った気がするけどそれを気にする時間はなく、集合場所に行くことに専念した私は無事に間に合い、花音と合流して花音を敬う会が始まった。
その内容はカラオケにマッサージ屋、そして景色の良い温泉宿で浸かって飲み食いをする日帰りのプチ旅行。
ただ、朝の倖の行動のせいで頭の片隅にはずっと倖がいて、お風呂に浸かる時にお腹が薄く赤くなっている部分があった。そこで私はやっと”印”を付けられていたことに気づいた。
***
そんなこんなで今に戻ってくるのだけど、都合良く時間は待ってくれない。だから今、私はお詫びという名の倖の言う事を一つ聞く王様ゲームようなことが行われている。その内容は...。
「ほ、本当にしなきゃいけない?」
「へぇ、私は自宅で一日を一人で過ごして、あなたは違う女性と一緒に過ごして、挙句の果てにはそれを断ろうとするんだ。これはもう私への興味が尽きて、他の女性に浮気という乗り換えを...」
「分かった!分かったから!するから...」
「そう。それじゃあどうぞ」
そう言うと同時に倖は目を閉じた。今も私はベッドに座っていて、倖は横になったまま。そんな状況の中、私はその命令を成し遂げるために深呼吸して、心の準備をさせて倖に四つん這いで迫り寄る。
再度見る倖の瞼が閉じている顔。......ダメ。見ていると心が揺らいで臆してしまう。だから私も目を閉じて顔を近づける。そして、私の唇を倖のにくっつける。
そう、これが命令。それに加えて十秒間くっつけなければならない。言われた時はそんな事は無理だと思っていたけれど、いざしてみるとそれを止めていた後ろ向きの感情はドロドロに溶かされて無くなり、代わりに心地良さと気持ち良さが満たす。
だけど、もう十秒は経ってしまっていた。だから、名残り惜しくも離さなくてはならない。それが倖の言った、私にして欲しいことだから。
私は手に力を入れて離れると同時に目を開ける。そしたら倖の手が追いかけるように私の顔に添えてくる様子が映った。
「まだしたいなら、目を閉じて」
私はその言葉を聞いて目を閉じる。そして、添えられた手に導かれて再びくっつける。途中、唇をはむはむとされてとても柔らかい感触を味わいながらしばらくの間そうしていた。
「ん~!満足した」
「それは良かった」
倖が私の顔に添えていた手を肩に移動させてポンポンとして漂っていた甘い空気が霧散する。お詫びというのに私もいい思いをしてしまった。
倖から離れてまたベッドに座る。倖もまたそうしてきた。そして、私は気になってた事を話す。
「なんでこの命令にしたの?」
「......分かってないの?」
「え?えーと...う、羨ましい...とか?」
「は?友達としたの?」
「してない!してない!倖が初めてだよ!」
分かっている振りをして答えたら大変な誤解を招いてしまうところだった...。実は私も今日のプチ旅行を楽しみにしていたから、目先の事だけを考えていてあまり倖のことを見ていなかった...。ただ、今の私にそういうものは無いから目の前の倖に集中することが出来る。今更...だろうけど...。
「言いづらいこと言うね...」
「予想は出来てるけど、どうぞ」
「ちょっと...考えていい?」
「はぁ~、あなたの好きはその程度ですか」
「......」
「後でもう一個”お詫び”ね」
「はい...」
ゲームでいう最大で百の親愛度メーターがあるとして、体感八十ぐらい溜まっていたのが一つのミスでごっそり減って五十ぐらいなって取り返しがつかないことをしてしまったのだと自覚する。そのぐらい今の倖は私に対して失望していると思う。私は倖と付き合えて嬉しくて、ほっとして気が緩んでしまったのかもしれない。いや、かもじゃなく...していた。
その当の本人はバサッと後ろに倒れてそっぽ向いて携帯をいじりだしてしまっている。
そんな倖を再び私に向いてくれるように、私が長年培ってきた本の知識を広げて考える。倖が零した不満は浮気、一人ぼっち、それ以外にもあるかもしれないけれどこれだけで十分。こんな分かりやすいことに気づかない私は本当に何を見ていたんだろう...。朝の倖の行動だって...とりあえず誠心誠意謝らないと。
「ごめんなさい!」
「何が?」
返ってくるは当たり前の如くドスの効いた声。だからと言って怖気づて引き下がるわけにはいかない。怒らせて当然の事をしてしまったのだから...。
「今日のお出かけが楽しみで...ここ最近、倖のことあまり見ていなかったから...。倖が抱えていた感情に気づかずに放ったらかしにしてしまったから...」
「......あなたってさ...自宅にある本全部読んだの?」
倖の口が開いてくれるのを待っていたら前触れもなくそんなことを言われた。ここで嘘吐く必要なんて全くないから正直に答える。
「ちゃんと全部読んだよ」
「......」
倖は私を無言で冷ややかな目を向ける。うん、私自身もそうしたくなった。それを察してか倖は何も言わない。
主に恋愛関連の本を読み続けてきた私だったけど、その真価を発揮する頃にはもう事が起きてることが多い。言ってしまえば、知識を持っているだけの腐れである。
「はぁ...」
「ど、どうかした?」
「許してほしい?あなたの愚行」
「うん...」
「そっ」
そう返事して立ち上がる。何をするんだろうと倖の行動を見ていると、私の前に来て肩を押し、そのまま二人ともベッドに倒れる。
「これからあなたに溜めさせられたものをあなたにぶつける」
「うん」
「抵抗したり、目を閉じたりして拒んだら許さない」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
「......召し上がれ」
とても突っ込みたかったのだけれど、拒んでいるのではないかと思って受け入れる言葉を口にする。
というよりなんで私はこんなに冷静なのかというと、私はずっと恥ずかしいという理由で好きとか愛してるとかそういう”愛”を伝えてこなかった。だけど倖は言葉ではなく、今しているように行動で不器用ながらも伝えてくれている。だから、私は恥を捨てた。私も伝えたいと思ったから。今更なんて知らない。
今、私の唇を粘液を纏った柔らかい物がこじ開け侵入してくる。それには思わず声が漏れるが受け入れるように私も絡みに行く。されるがままではなく、倖が抑えていた感情を受けて止めたいから。
それから先の事は私たちの領域だから想像に任せるけれど、終わったのは時計の長針が二周していた。
「はぁはぁ」「はぁはぁ」
運動した後のように私たちの息が上がる。
「お風呂...入る?」
「うん...」
「というより、私は許されたの?」
「許したけど...、もう二度と...しないで...」
湯はりのボタンを押して倖の元に帰ってきた私は、唇を倖の首と唇に一回ずつ触れてから言う。
「心を入れ直したから、もう大丈夫」
「もうちょっと早くしてほしかった...」
「ごめんね。大好きだよ倖」
「......それはそれで調子狂う」
照れ隠しなのかそっぽ向いてしまう。だけど愛を伝えるとそういう反応をする倖が可愛いと思う。そういう表情をもっと見たいなぁと思った時、そういえばと忘れていたことがあった事を思い出す。
「ねぇ、倖」
「なーにー」
「私と一緒に美容院行かない?」
「..................いいけど」
「そう言ってくれるとは思わなかった」
「.........」
何故か倖が私の耳元で承諾した理由を教えてくれた。ものすごく可愛い理由でつい抱きしめてしまった。それに対して抵抗をされるのだけど力が入っていない。なんだか素直になれない子供みたいで見る目が変わる。
「なんか今失礼な事思ったでしょ」
「思ってないよ」
そう言いながら頭を撫でる。それも抵抗するために撫でている手の首のところを掴まれたけれど、やっぱり力が入っていない。とても久しぶりに立場が上な気がする。
そうこうしている内に湯はりが完了したという音が鳴って一緒に入る。
「何か...すごい体に染みる」
「私も」
お風呂に浸かりながら沈黙の空気が流れる。だからと言って決して気まずくない。むしろ居心地がいい。ふと窓の外を眺めているとたまたま満月が空に浮かんでいた。だから、私がカップルは全員言ってるでだろうと思っている偏見である言葉を口にしてみる
「月が綺麗ですね」
「...死んでもいいわ」
「なにそれ?すごい不穏なん...」
すごい勢いでお湯をかけられた。喋っている最中で急だったから口に大量のお湯が押し寄せてきて咽る。だけど倖はそんな私を放置して話す。
「知らないのに言うな!」
「ゲホッゲホッ」
「意味知りたいなら自分で調べて!」
「ゲホッゲホッ」
「......」
「ゲホッゲホッ」
さすがに申し訳ないと思ったのか背中を擦ってくれた。私が落ち着いて会話を再開する。
「いや、みんな言ってそうなセリフだから言ってみたくて...」
「ふんっ」
ふてくされてしまった。だけど、今日のお出かけの予定を立てている時に思っていた事を倖の機嫌を取るために言ってみる。必ずと言っていいほど興味を示すだろうけど。
「ねぇ、倖」
「なに!」
「二人で予定立てて、旅行行こ?」
「...うん」
可愛い。恥なんてさっさと捨てておけばよかった。
私たちはその後も湯船でゆっくり雑談を交わした。それが盛り上がって二人とものぼせたのは内緒。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
「月が綺麗ですね」っていうセリフ、私はとても好きです。言ってみたいし、言われたいですね。
ぜひ!高評価やポイント、感想をいただけたらとても幸いです!




