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呪われ王子と金次第聖女※第三章完結  作者: まる
第三章

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爵位

王陛下から呼ばれている、と朝一番に言われて朝ごはんもそこそこに玉座の間に馳せ参じた。膝をつこうとしたところ、王太子殿下にそれを止められた。なんで止めてくるんだ、と思っていると王陛下が玉座の間に入ってくる。とりあえず頭だけを下げていると、玉座に王陛下が座った気配がした。


「面をあげよ。そんなふうに畏まるのは我らの方かもしれん」


その言葉にどう言うことだろう、と思って顔を上げる。王陛下は難しそうな顔をしていた。


「ルリアートから報告を受けた。此度の働きにも感謝しよう」

「ありがとうございます」

「これから、子々孫々に続く呪いが解かれるまで、お主には祈りを捧げてもらわねばならぬ。もちろんルリアートもだがな」

「はい」

「魔法使いシュルベルがお主のことを呪いを解くのに必要だと言ったのであれば、お主をこの国から出すことができなくなる」


王陛下の言葉に、すぐに頷いた。元からお母さんとテスがいるこの国を離れるつもりはない。王陛下は私が頷いたことに満足したのか、難しそうな顔を少し緩めて、私に笑いかけてくれた。


「もとより出るつもりはありません」

「それはよかった。アルルとしてもお主を拘束することはできぬからな」


王陛下がそう言って自分で自分の言葉に笑った。私もそれに釣られて笑ってしまう。確かにアルルにとって私は難しい問題だ。意思を尊重して外に出しても呪いは解かれないし、意思を無視して拘束すれば、下手をすると女神ティアの怒りを買いかねない。

私がみずから望んでアルルにいてくれることが、アルルの願いだろう。


「アルルにいて祈りを捧げてもらうならば、爵位と称号を授けよう」


王陛下がそう言ったのを聞いて、複雑な気持ちになった。爵位と称号を授けられれば、私の生活はアルルで安定する。でも、それを授けられると言うことは貴族の縛りができると言うことだ。宴やお茶会に参加しなければならなくなる。


私が嫌そうな顔をしたのを王陛下は見逃さなかった。


「嫌か」

「できれば遠慮したいです」


王陛下は私の言葉を聞いて声を上げて笑った。本当に面白いと思っている笑い方だった。


「そうか。ルリアートもな、お主がそう言うだろうと言っていた」


その言葉に王太子殿下を見ると、私のことを見て肩をすくめてみせた。


「しかしな、アルルとしてはお主が国から出ないという確約が欲しいのだ」


それは理解できた。今の状態ならどこにでも行ってしまえる。そして私がどこかに行ったとしても残った家族を人質にすることはできない。女神ティアの怒りを買う可能性があるからだ。


「それでな、考えたのだが」


そこで王陛下は言葉を区切って、玉座から身を乗り出した。なんだ、と思って近くもないのにのけぞってしまう。何を言われるんだろう。少し嫌な予感がした。


「わしの息子の誰かと婚約してはくれんか」

「…」


その言葉にすぐに反応できずに呆気に取られた。何を言っているんだ、この人は、と思って同意を求めて王太子殿下を見る。すると王太子殿下は難しそうな顔をして王陛下を見ていて、私の視線には気づいてくれなかった。


「六人、王子はいる、そのうちの誰かでいい」


そう言われてもすぐには返事ができない。降ってわいた話に驚いていると、王陛下はニンマリと笑った。


「何、相手はすぐに決めずとも良い。婚約の約束だけはしてほしい。そうでなければやはり爵位と称号はもらってもらう」


爵位と称号で縛られるか。婚約者という立場で縛られるか。どちらがいいだろう、と思った時に思い浮かんだのはギリウス王子の顔だった。なんであの人の顔が出てくるんだ、と頭の中から振り払う。


どちらで縛られたいかならば、爵位と称号の方がましだろう。そう思って口を開こうとした時、私よりも先に王太子殿下が口を開いた。


「父上、実はフューイに求婚しています」

「真か」

「俺以外にもフューイに好意を持っている王子がいます」

「そうか!それなら話は決まったな!」


王陛下がそう言って膝を打った。そして、嬉しそうに笑う。


「いい報告が聞けることを楽しみにしておるぞ。ルリアート」


玉座から立ち上がった王陛下がそう言って、踵を返して立ち去ってしまう。私の気持ちは、と思ったけれど王太子殿下の真剣な顔を見て、安易に爵位と称号に逃れようとしたことが間違いだったことに気づいた。王太子殿下は本気で、私にそばにいて欲しいと思っているんだ。


王太子殿下が王陛下が玉座の間から立ち去るのを見送った後、こちらを向いた。その視線の強さにぎくりとしてしまう。


「フューイ」


呼ばれて背筋が伸びた。


「はい」

「本気で考えてくれ」


そう言われてこくりと頷く。王太子殿下は返事は今でなくてもいいと言った。でも本気で考えなければいけない時がきている。王太子殿下の視線が外れて、そっと息をついた。




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