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呪われ王子と金次第聖女※第三章完結  作者: まる
第三章

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今後

夕食を摂った後、王太子殿下に俺の部屋に来てくれ、これからの話がしたい、と言われた。確かにこれからの私の立場の話はしておいた方がいい。そう思って部屋を訪ねた。王太子殿下はゆあみをした後だったらしく、いつもよりも軽装で出迎えてくれた。


王太子殿下の部屋は当たり前だけれど、私の部屋よりもいつも豪華だし広い。一番いい部屋をあてがわれているのだろう。そしてそれを王太子殿下は気づいていない。


「座ってくれ」

「もちろんです」


暖炉の前に置かれているテーブルと椅子も私の部屋にあるものよりも装飾が凝っている。椅子に座ると柔らかく私を受け止めてくれた。私に続いて入ってきた侍女がテーブルに紅茶を置いてくれる。そのポットとカップひとつとっても私の時よりもいいものが使われているのがわかった。


「失礼します」


侍女が頭を下げて出ていく。王太子殿下についている侍女は年嵩で、仕事ができる女性なんだろうと思わせた。やっぱり侍女頭とかがつくんだろうか。


「これからの話をしたいんだ」

「わかっています。私も自分の立場が気になります」

「…王宮に仕えて祈りを捧げてもらいたい」

「お任せください。でもそれだけでは時間が余ります。街に出て医者でもやろうかと思っているのですが」

「危ないからな。フューイに何かあれば、魔王の呪いが解けなくなってしまう」

「エルム様を貸していただけませんか。用心棒として」


そう言うと王太子殿下が指先を顎に当てて考える素振りをした。しばしの沈黙が続く。


「それでもいいとは言えないな。不特定多数と関わるのはやはり危険だろう」

「そうですか」


食い下がって無理なら無理だろうな、と早々に諦めがついた。どうせ王太子殿下がいいと言っても王陛下がなんというかわからない。魔王の呪いを解くのに必要だと言われている人間を王家は安易と外に出したくはないだろう。それなら、騎士団の治療とかはさせてもらえるだろうか。王家の人間の治療とか。貴族は嫌だなあ、と思いながら王太子殿下を見ると王太子殿下はテーブルに置かれてあるポットを見つめていた。


「騎士団の治療や王家の人間の治療はさせてもらえるでしょうか。力を使わなさすぎるのも不安です」

「それはこちらから頼むことがあるだろうな」

「よかったです」


私が話しかけると王太子殿下は顔を上げた。髪の先からぽたりと雫が落ちる。濡れている王太子殿下を見るのは初めてだな、とふと思った。


「王宮付きの侍医として過ごしてもらうのが一番良いかもしれないな」

「そうですね。私も立場があると安心できます」


王太子殿下の言葉に頷いて、カップを持って紅茶を飲んだ。侍医なら騎士団の治療にあたることも王家の人間を治療することもおかしくない。居住はどこになるんだろう。私の部屋はそのまま使えるのだろうか。


「住居はどうしたらいいでしょう」

「今のままでいいんじゃないか」

「そうですか。ありがとうございます」


それが聞けて安心した。お母さんと離れずに済む。部屋は自分で見つけろと言われたら大変だっただろう。そこからしばらく沈黙が続いた。もう話は終わったと言うことだろう、と退室する機会を伺いながら紅茶を飲む。


「フューイ」


王太子殿下が私の名前を呼ぶ。改まってどうしたんだ、と持っていたカップをテーブルに置いた。


「これは個人的な願いだが」

「はい」

「そばにいてくれないか」


恋に疎い私でも、それが仕事の話ではないとわかった。少なからず動揺して、王太子殿下から視線を逸らす。どうしよう、と思いながら浮かんだのはギリウス王子の顔だった。


「私は」


しゃべり始めても何を伝えていいかわからずに、そこで言葉が途切れてしまう。自分でもわからないけれど、王太子殿下の気持ちに応えられないことだけがわかってしまった。私はこの人と一緒に生きることはできない。私の顔を見ていた王太子殿下がふ、と笑った。


「…返事は今じゃなくていい」

「…なぜですか」

「気持ちは変わるものだからな」


王太子殿下はどこかスッキリとした表情でそう言った。そう言い切られてしまうと、そうなのかな、と思う。私は意外と流されやすい性格だったらしい。


「気持ちは変わるものですか」

「そうだな。形を変え、姿を変えるものだ。返事はそれがはっきりしてからでいい」


気持ちが流動的だと言われてしまうと、余計に不安になった。私ははっきりと返事をできる日が来るのだろうか。戸惑いながら頷くと、王太子殿下がもう遅い、と言った。


「明日は早いぞ。よく寝ろよ」

「はい」


その言葉で立ち上がり、部屋を辞した。とんでもなく大きな問題をひとつ抱えた気分になって廊下を歩いた。


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