契約
――――目の前ではいかにもコックって感じの奴が鉄板で胃を刺激するような音と香りを生み出していた。
カフェ行こうとか言っていたが、本能のままに値が張りそうな店に皆で突撃したら鉄板焼きの店だった。まぁ、入った以上は仕方ないね。損をするのはイケメンだけだ。
「こちらはアマテラス諸島産の丘アワビと霜降海老です」
コックがそう言って巨大なアワビとロブスターを見せ付けるとその二つを豪快に鉄板に乗せた。その身が焼け始め、ジューっと香ばしさが広まったとき、俺達は歓声をあげ、イケメン君は泣きそうになっていた。
「カイト! 凄い! 私こんなの初めて……」
「ああ…………。あの二つだけで12万G……」
タダほど美味いものはない。まぁ俺達に奢るなどと無責任な発言をする奴が悪いだろう。割り勘っていえばいいのに。
「それで? 何の用だよ。お、このアワビの肝を使ったソースを付けるともっと旨いぞ」
「本当だ! 凄い美味しい……! じゃなくて! 真面目な話をするんだからしっかり聞いてくれ」
イケメン君は料理に感動しながらも、すぐに深刻そうな顔を取り繕えるとなんとか本題に入った。
「君達はリーゼロッテ様をどうこうしようとここに来たのだろう?」
「観光するついでだな」
「彼女が次逃げ出せばこの街は経済的に破綻してしまうんだ。リーゼロッテ様はそんな未来を望んでいない。どうかこのまま観光だけして帰ってくれないか?」
イケメン君はこれまでの爽やか紳士ではなく、鬼気迫った雰囲気であった。
だが分からない。誰がどう見たってこの街は賑やかだし全ての人が車らしきものを持っているくらい豊かであったからだ。
「おいおいおいヴェーダさんよぉ。なんでたかが小娘一匹に街の運命が掛かってるだ? 政略結婚でもするの?」
考えうるとすれば、街が赤字続きな所為で、金はあるけど人間の屑みたいな性格の豚を擬人化したみたい大貴族に嫁がなければいけないとかだろうか。
それでリーゼはあんなことやそんなことをされる前に楽しい思い出を作ろうと…………!
「おまっ! いくらファンタジーな世界だからってさも当たり前のように女騎士オークみたいなことしていいと思ってるのか! 人間の屑!!」
「君何か勘違いしてるよね。遠慮なくスカートを脱がせたりする奴に屑扱いされるの本当に心外なんだけど。というか女騎士オークってなに? とりあえず落ち着こうか。皆見てるから」
異世界の住民のくせに女騎士がオークにあんなことやそんなことをされるテンプレを知らないとは……。まったく呆れたものだ。
まぁそんなことはおいといて、確かに辺りを見渡すと、視線が集まってしまっていた。元々冒険者のような奴が来る店ではないようで、服装の時点で反感を買っていたようだった。
今更視線だなんて手遅れな気もするが、とりあえず黙って話を聞くことにしよう。ズズズとストローでトロピカルスペシャルとかいう飲み物を喉に通す。うん、美味い。
「アルトゥリックでは沢山の魔法具とかポーションを生産して皆が儲かっていたんだがもう生産過多なんだ。車は街の皆が持ってるし、けれど輸出となると大量運搬ができないから無理。けど皆投資をやめようとしないし、銀行は馬鹿みたいに金を貸す……」
「それがなんだってリーゼと関係があるんだよ。そいつら馬鹿が破産しておしまいだろ? 株なんてする奴が悪いんだ」
「ああ僕もそう思うさ。けど問題は街の全員が馬鹿ってことさ。リーゼロッテ様もね」
「リーゼも投資しちゃったのか? あいつ幸運最低レベルなのに。あ、イーリス! ティア! お前人の霜降海老取るなよな。ガーリックライスもだよ。太るぞ」
気付けば皿からアワビの残りと海老と肉とガーリックチップスが消え、代わりにティアとイーリス達の皿が豪華になっていた。
「機械は太りません。全て胃の役割を果たすパーツによって魔力燃料となります」
「神も太りません。むしろこれくらいのお布施は最低限あってしかるべきで、私を崇拝する人間はもっと増えるべきであって――――」
「僕のお金なんだけど……それ分かってるよね? ね、僕のお金なんだけど」
「そういう細かいことはどうでもいいから早く続き話してくれない?」
あんまり奢ったアピールされるとありがたみが無くなってしまうじゃないか。
「……はぁ。分かったよ。もう絶対奢らないから。それで話は戻すけど、リーゼロッテ様は街の人が破産しないように皆が生産した魔法具を買い取って貰えるように契約してしまったんだ! 代わりにリーゼロッテ様が作る超一級品のアイテムがタダ同然で買い叩かれる契約をね。その所為で彼女はろくに睡眠も取れていない…………」
「それで? なんでそんなことを教えてくれたんだ? リーゼロッテ様が望んでないから帰ってくれって話ならそんなこと言わない方がいいだろ」
俺が正論を言ったのがそんなに珍しかったのかティア達がパチパチと小さな拍手を送ってくれた。新手の挑発だろうか。
一方でイケメン君は苦虫を噛み潰そうとして自分の舌まで噛んでしまったかのような表情をして、黙り込んでしまった。
「…………正直な話、僕らはリーゼロッテ様の自由を優先すべきだと思っている。君たちのとこで彼女が楽しそうに頭のおかしな魔法具を使っているのをみてそう思わされた。この街にいてはリーゼロッテ様は一生、心の底から笑うことも、何かを楽しむこともなくなってしまう…………!!」
さっきまで落ち着けと言っていたイケメンはどこへやら、彼はカウンターを強く殴った。ダン! と力強い衝撃が響く。再び視線がこちらに集まっていた。まるで俺が悪いことをしたみたいだ。とりあえずこの空気を治せねば。
「手紙にペロペロしたいとか書くくらいだもんな」
「……。ゴホン! けれど僕らの勝手な行動は間違いなく彼女を傷つける。馬鹿なんじゃないかってくらい優しすぎるんだよ、彼女は。だからどうかこのまま引き下がってほしい。どちらも苦しむ運命しかないなら、まだ楽なほうを選ぶ権利があるはずだ」
うーん……。どうしようか。リーゼを攫うか攫わないかの悩みは大したことではないのだが、ここで諦めて引き下がる演技をすべきかどうかが悩ましい。イケメン君を言いくるめて手ごまにすべきか、けれど言いくるめられなかった場合必要以上に警戒させてしまう。
「……ああくそ。なんだって男に対して、告るべきか否かみたいな悩み事を抱かなきゃならないんだ」
「え、告るんでスか!? ワタシそういうの気になります。やはり愛に姿形性別種族は関係ないのですね」
俺の呟きに対して、ティアが過剰反応した途端、周囲がざわついた。イケメン君も嘘だろお前と言いそうな顔をして、咄嗟に席を立っていた。
「嘘だろお前……!?」
「いや嘘だよ! 信じるなよこのポンコツの言うことを!! というかお前はシリアスな雰囲気にしたいのかしたくないのかハッキリしろよ畜生! とりあえずは分かった! 帰ります! 帰ればいいんだろ? ただ…………」
「ただ……?」
「観光するにしても金ないからお金貸してください」
「死ねよお前…………」
イケメン君の口からぼそりと、本音が吐き出された。だって仕方ないじゃないか。観光するフリをするにしても片道でほぼ全財産使っちゃったんだもの。
ココナッツポメポーメ(椰子果実弾性生物体)は、腹足綱後鰓類の無楯類に属する軟体動物である。空に生息する軟体動物で貝殻が完全に消失している。
地方によってはココナッツポメポーメをココナッツミルクスライムと呼ぶ地域もある。ココナッツポメポーメの名前の由来は、ポメポメと泣く奇妙な生物がココナッツオイルと同等の成分の油を出すからと言われている。また、ポメポメと泣く奇妙な生物を食べてみたらココナッツミルクの味がしたからという説もある。これは、見た目と匂いが食べられそうだから食べてみたためと考えられている。
ココナッツポメポーメの別名は椰子果実弾性生物体は「椰子の実の中身のような弾性の生物」という意味でそのままである。大世界中心帝国名ではも椰子丸という。ただし、腹足綱 前鰓亜綱 盤足目に椰子丸科という科があり、ヤシマルという名を持つ種類が存在するので、混同しないよう注意が必要である。
大陸に生息する種は多くが40cm程。大きなものは300cmを超えるものもある。ヴェスプッチ西海岸に分布するココナッツポメポーメは750cmにもなる。(・ω・)のような模様が描かれている部分が頭部で、背中と腹部からココナッツオイルを分泌する。貝殻は完全に退化しているが、貝殻の代わりにゴムのような弾性を得て、打撃や圧迫によるダメージを無効化する。雑食で、内臓には食餌由来の毒素があることもある。
ココナッツポメポーメにつつくなどの刺激を与えると、椰子汁腺とよばれる器官からココナッツオイルを分泌する。この液は、外敵に襲われた時に移動を困難にしたり、あるいは液が外敵にとって餌となるため、それ以上襲われなくなるのではないかと考えられている。このオイルの質も食餌に由来する。卵は黄色く細長い麺のような卵塊状になり「空面卵」とよばれる。
また、体内には浮き袋が存在し、ココナッツガスと呼ばれる甘い匂いのする気体を体内で精製することで宙を浮遊することができる。また、体内のココナッツオイルを放出することで急加速も可能となる。
普段は、高度300~3500mほどの上空を浮遊し、空藻類を食べている。食餌が不足してくると、地上に降りて餌を探す。嗅覚が発達しており、全身で弱い匂いも感じ取ることができる。
雌雄同体で頭の方に雄の生殖器官を、背中に雌の生殖器官を持つ。前方の個体の雌の器官に、後方の個体が雄の器官を挿入するといった形で、何個体もつながって交尾する。このような交尾形態は「連鎖交尾」といわれる。春から夏にかけて繁殖期で、その際は輪になってつながりながら宙を漂い交尾を行う。一匹が生む卵は数万個で、卵は約2週間で孵化し、孵化した幼体は成体の体内で二週間の時を過ごしたのち、上空1200m地点で放たれる。寿命は平均にして1~4年ほどだが、中には20年以上生きる個体もいる。
人間とのかかわり
マシュマロとゼリーを足して2で割ったようなさわり心地や、癒し効果のある匂いを放つことからペットとして人気である。しかし油断をしていると煙突などから脱走するため、飼育難易度は高い。大きな街ではポメポーメ人形などが売られていることも少なくない。始まりの街ビギンではS,M,Lサイズまであり、Mサイズは一つ600Gである。デートの際に彼女に買ってあげると喜ばれるという噂もあり、幸運の象徴ともされる。
ココナッツポメポーメから分泌されるココナッツオイルは美容、健康効果があり、財力のある女貴族などから大人気である。またその身は甘美な味わいで高価な嗜好食品となる。ココナッツポメポーメは生息地域を理由に養殖が困難であり、野生種を捕獲する他ないため希少価値が高い。群れで行動する固体と単体で行動するものがおり、単体で行動するポメポーメのほうが原因は分からないが質が高く、価格差は10倍以上にもなる。
一方で群れで行動するポメポーメは比較的安価となる。また、ポメポーメを捕獲する第一生産者が受け取る金銭が少ないことから大きな社会問題となっている。
そのため最近ではココナッツポメポメオイルの瓶に「この商品はフェアトレードです」などと書いて通常より高価な値段で売られている製品が見かけられるが、実際に金銭が冒険者達に届くことはなく、資本家達の懐に収まる定めである。世知辛い。




