真実
リーゼはイケメン君たちを率いて、始まりの街ではなく魔法具工業都市アルトゥリックへと足を進めていき、やがて見えなくなってしまった。
「……なんだったんだ? というかイーリス。なんでそんな待ってましたみたいな顔してんの?」
「そりゃあ! 待ってましたもん。あ、カイト! そこに矢が一発飛んできますので注意してください」
未来予知的な神様パワーはズバリと当たった。突如として夜闇を切り裂き現れた一本の矢は、俺の足元に突き刺さった。
矢には手紙が括り付けており、おそらく撃ったのはイケメン君の仲間であるバカっぽそうな犬耳少女だろう。……名前はベネッティアとか言っただろうか。まぁそれよりも中身である。
「何が書いてあるのですか? ワタシは一応、リーゼに命を助けてもらっているので……それにあの態度の変わり様は異常ですので中身が気になって仕方ありません。早く見せなさい」
ようやくフリーズから開放されたらしいティアは、とてとてと歩み寄ると背伸びをしながら手紙を覗く。さっきまではなんだか格好良かったイーリスもぴょんぴょんと飛び跳ねて手紙の文面を見ようとする。あざとい。
わざと背伸びしてやりたいところだがまぁここは話が進まなくなるので素直に座り込んで内容を確認することにした。
「【マジックライト】」
ティアが言わずとも照明の魔法をしてくれる。手紙には一ミリのズレもない文字で文章が書かれていた。魔法か何かを使ったのだろうか。ともかく内容を把握する。
――――突然このような事態に巻き込んでしまってすまない。君たちが少しの間だけ一緒にいたドラゴネットの少女はアルトゥリックの街を支配するアルトゥール・エルリック家の長女なんだ。
僕たちは彼女の家来で、家出した彼女を探すために始まりの街に来た。そしてすぐに彼女を発見したまではよかったのだが、リーゼロッテ様はどうしても冒険者業をやってみたいとおっしゃってだな。それも新人パーティに入りたいという条件もオマケつきだ。
そういうわけで新人冒険者を探していたらちょうどよく現れたのがカイトとイーリス、君たちだ。だから僕は代表者として接触を図り、リーゼロッテ様をパーティに加入させても問題ないかチェックした。結果から言おう。問題大有りだった。
なんなの? 僕から金をせびるわモナ蟹に殺されるわ、モンスター図鑑を無理矢理強奪するわ、酒場で幼女を脱がしたり、晒しクラゲプレイをしたり、ふざけんなよ屑男が。
僕は一見すると心優しいイケメンってキャラを作って接触していたが、あんなセクハラを見せられて、今からでもぶん殴ってやりたい。紳士たるべき男が恥ずかしくないのか? 僕だったらあんなことされたら自害するね(嘲)。
「余計なお世話だわ畜生が。あいつあんな爽やかなイケメンフェイスしてこんなこと考えてやがったのか」
くしゃりと、俺は手紙を掴む力を強める。手紙はまだ続いていた。
――――ああ。なんでリーゼロッテ様が貴様らのようなパーティに入りたいと駄々を捏ねたのかが未だに理解できない。さっぱり分からない。僕が彼女を君たちに紹介したとき、どれだけ必死にポーカーフェイスを保っていたか分かるか。
「保ててなかったじゃねえか。メッチャ顔歪めてたの覚えてるからな」
「カイト、手紙にツッコミを入れるの、はたから見ると変な人だからやめません?」
「うっさい」
はたから見なくてもクレイジーな邪神にとやかく言われる筋合いはない。俺はこの手紙にツッコミを入れながら読むと既に決めているんだ。それはもう、何年も前に交わした約束のような決意である。
――――案の定リーゼロッテ様に危険を及ぼしたではないか。濁流に飲み込まれたり、今回の半径1キロに渡る超広範囲の麻痺といい何をしたらそんなことが起きる? 貴様らは狂っている。
「……全部リーゼの所為だよ馬鹿」
――――しかしコヅカカイト。もしまた会えることが出来たならば、リーゼロッテ様の体になった感想を教えて欲しい。へその辺りとか太腿を触ったんだろう? 翼とか尻尾を動かしたんだろう? どんな感覚だったんだ? あと……彼女がパンツを履いていないというのは本当なのか? ああ! 羨ましい!
僕もリーゼロッテ様の中に入りたかった! 髪は甘い匂いはしたのか? あと彼女がなんでもかんでも服から道具を取り出すが、あの物理法則を無視したマジックの種は分かったりしたのか? 胸を触った感触とか感度はどうだったんだ?
ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん! リーゼたんの髪の毛クンカクンカしたい! あのまな板に顔を埋めたい……! スリスリしたいよおおおお!
「ただの変態じゃねえかああアアアアアアアアアアアアアア!!」
まだだいぶ続きがあったみたいだが、俺は感情の赴くままに手紙をビリビリに引き裂いた。




