神も物も者も全て等しく****!!
予約投稿し忘れました(震え声
……さて、手紙はビリビリに破り捨てた。今からリーゼを追ったとしてもどうにもならないだろう。だがパーティのリーダーは俺で、ティアは酷く動揺した様子で俺の意見を待ち望み、イーリスは神の目線で俺の発言を待っていた。俺はどうすべきだろうか。シリアスに対応すべきなのだろうが、イケメン君の所為でそういう気分にも浸れない。
「……とりあえず、山賊討伐の報酬貰いに行こうか。家の問題に関わるわけにはいかないし。下手にお偉いさんの問題に首突っ込んだら打ち首にされるかも」
ひとまず、情けない案を提示して安泰を求めることにした。だが散々な目に会ったはずのティアが思いのほかに反発する。
「ここで助けに行けばヒーロー……勇者になれますよ?」
「いやぁ……勇者にはなりたくないんだよなぁ。そんなアメリカンな」
「アメリカン……? とにかく、紳士たるもの率先して助けないと」
「紳士は紳士でも変態紳士だ。ブリティッシュしても無駄だ」
自分で言っておいてなんだが、少しむなしくなった。
「ここで助けに行くのがルールです」
「そんなルール知らん」
「美少女が助けを求めてますよ」
美少女……確かにリーゼは紛れもなく可愛い。快活な笑顔とかスレンダーな体つきとか、ノーパンとか。ただまぁ実験馬鹿なのがいかんせん酷い。多分もうしばらく一緒にいたらスキルのこともあるし、死んでると思う。
「……残念美少女だよなぁ」
「皆助けてますよ?」
「その皆は勇者になるべくして来た奴だろ。俺のスキルを見ろ。遠慮なくナイフぶっ刺したって相手は無傷だ。種も仕掛けもねえ」
その通りだと思ったのか、ついにはティアも観念して押し黙った。俺にエスニックジョークは効かぬ。だが待っていたかのように神様はおっしゃるのだ。
「スキルは確かに弱いですけど、カイトだけですよ? 混沌の神と戦いの神と死神に目をつけられているのは。それに死神に至ってはあなたにお熱です。格好いいとか見せたくないんです? 美少女達に。それでも異世界転生した男ですか? 普通なら皆、くっそきもい台詞吐いて助けに行きますよ」
「……ああいうキャラじゃないんだよ俺は。格好いいところは見せたいっちゃ見せたいけど」
「ふぅん……腰のエクスカリバーは使わな過ぎて錆びちゃいましたか。皆普通もっと手入れしてますよ」
酷い下ネタだ。酷すぎて突っ込む気にもならない。何が酷いってそんなことを言っておいて上手いことを言った気になってこちらを見下すイーリスが滑稽だった。だが俺が内心馬鹿にしているのも彼女は見透かしていて、怪しい笑みを浮かべると、耳元で小さく囁くのだ。
「…………本当にいいんです? カイト。助けたらお礼に何でもしてくれるかもしれませんよ? 好感度が上がれば簡単です。あいつは絶対媚薬とか作ってるタイプですから、実験と称してDTを廃棄処分してエクスカリバーが【聖撃】できちゃうかもですよ?」
そう言って彼女は数歩後ろに下がると、国によっては怒られかねないハンドサインをかました。ティアが理解できずに首をかしげていることから、それは俺がいた世界でしか意味のないサインなのだろう。……やっていることが中学生か中年のおっさんである。
「よし、助けようか」
さきほど渋っていたのが馬鹿みたいなくらい、俺は軽々と決意した。…………俺は勇者ではない。英雄でもない。この世界のルールなんか知らんし、多分道徳的でないことは既に結構やっている。
まぁこんなごたごた考えているけど、要約してしまえば一言に尽きる。
「男は狼だから」
イケメン君だってそうじゃないか。彼だって一見すれば英国紳士のように優しく、イケメンだが手紙に現れた本性はケダモノそのものであり、やっぱ俗物なんだなぁと。さすがにあんな文章書けるほど俺は手遅れでないと思うが。
「それでティアはどうする? 俺は馬鹿だけど頭悪いってわけじゃないから断言できる。さすがに貴族の娘に下手に干渉すれば指名手配もあるぞ」
「機械は恐怖しません。ワタシは命の恩人に恩返しをするだけでございます。…………手伝ったら、また耳元で囁ぃ……ウヘェ」
ティアも最初は鉄面皮を保ち、抑揚のない機械的な声でなんだか格好良かったが、その威厳もすぐに消え失せた。嫌だこの機械。壊れちゃってる。
「これで久々に大規模な戦いが巻き起こる気がします! ぐへへ……想像するだけで心が躍りますよ。剣と槍がぶつかり合い、稲妻に炎が炸裂する。響くのは怒号と悲鳴……ああ! 戦いはどうしてこうも人を輝かせるんでしょうか!」
それぞれ小さな差異は合ったが、まとまった。人間も機械も神様も所詮は欲望に塗れた俗物で、おめでたい糞ったれである。
「とにかく! とりあえずは帰還しよう! それで明日アルトゥリックとやらに向かおうじゃねえか。リーゼが幸せに暮らせてるならそれでいいし、漫画とか小説でよくある不幸な貴族の娘みたいになってるなら…………攫っちまおうか。言っとくけど俺はやると決めたらやるからな。この世界に来てから色々躊躇がなくなってるんだ」
俺はドドドドとオーラを滲ませて、格好つけたポーズを取りながらそう宣言したのだ。




