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勝ったぜ

「聞いたかイーリス。突き穿つ神滅の槍! ゲイ! ボルグ! リベリオン! でお前を打ち倒すってよ」


「ぷぷぷー!! 人間風情が神を倒せるはずないじゃないですかー! というか恥ずかしくないのでしょうかね。そういうの中二病って言うんですよ。てかクトゥグァこそ邪神ですし。……あとカイト、後で私を邪神扱いした罪として首締めますから覚悟してくださいね」


 俺がキッカケを与えると、イーリスは実に生き生きとした表情で、ヒビキとかいう男を嘲笑い、大袈裟に笑った。でも多分、なにもしなくても煽っていたと思う。


 ヒビキは中二病という単語に対し露骨に恥ずかしさと怒りから顔を真っ赤にしたが、わざとらしい咳をついて事態を曖昧にした後、ティアの元に歩み寄った。


「こんな可愛らしい少女に手錠をするなんて……お前はよっぽどなド畜生だな。見ろ。この子の酷い有様を! これじゃあこの子まで変態みたいじゃないか!」


 俺がド畜生なのは否定しないし、一見するとティアも変態に見えるのも否定はしない。だがティアが変態に見えるという事実を大声でいうのはいかがなものだろうか。


「お嬢さん。見たところ回復職だろう? よければ俺のパーティに入らないか?」


 ヒビキはティアの手を握ると、無駄にイケメンっぽい声を作って、彼女の耳元で囁いた。ティアはというと、さきほどまでのビクビクとした反応はなく、しばし困惑したように黙り込んでいたが、やがて小さな口を開いた。


「カイトは、ワタシの心の弱さに漬け込んで、このような羞恥プレイを受けさせました」


 ヒビキはその発言を聞いて勝ち誇ったように顔を綻ばせ、ならばと目隠しを外そうとする。だが、ティアはそんな彼の手を掴み止めると、不意に頬を赤く染め、もどかしげに脚をもじつかせながら話を続けた。


「だからでしょうか。あなたの囁きにはワタシの体はピクリとも反応しないのです。しかしカイトがワタシにしてくれた悪魔のような囁き…………あれは魅惑な果実そのものです。あの声を思い出すと……ンぁ…………ッ!」


 ティアは溶けるような声をあげると、腰を抜かしてその場にしゃがみこむ。そんな様子を見て、この場にいた全員が戦慄した。


 いや、正確にいうならばイーリスとティアを除いた全員である。ティアの言うカイトの囁きとやらは、イーリスが俺の声を真似て発したものであり、チェリーボーイな俺からしてみればあんな肉食発言は断じて言えたものではない。


 そして恐らく、俺も含めて戦慄している全員が異性との経験が皆無であった。ティアが発した甘い嬌声は、言うなれば刺激が強すぎた。リーゼやヒビキの連れていたエルフ達も気まずそうに顔を赤らめ黙り込んでしまっていた。


 余裕そうに鼻歌を歌っているのはイーリスただ一人である。


「……いや、これどう返答すればいいの?」


「分からん。俺も助けて欲しい」


 ヒビキは顔を真っ赤にして、俺に救いを求めたが、俺だってどうすればいいかわからない。とりあえず事の原因を倒せばいいんじゃないかな。これが十八番の責任転換。


「……イーリス。どう責任取ってくれるんだ?」


「いやいやいや! 私はちょっと声真似しただけですよ! ティアが勝手に調教されたんです! 文句あるなら二人で調教しなおしてください! そうです! そこのヒビキって人が悪いんじゃないですか! あなたが地雷を踏み抜くのが悪いんです!」


 イーリスは邪悪な笑みを浮かべながら、ヒビキのことを指差した。実に真摯に訴えた声で、彼女の本性が見えてない人からしてみれば、それは正論に思えるだろう。


「あの男がセクハラしたの? やーねぇ……」


「そういえばあいつ、大声で変態とか叫んでたぞ」


 ざわざわと、いつのまにか集まっていた見物客がざわめきだす。……そういえばまだポメポーメを捕獲し終えていないのだが、この損害賠償はどこで求めればいいのだろうか。


「なっ……! 俺は彼女のためを思って……!! ええい! この世界は力が全てだ! 決闘だ! 俺が勝ったらお前が悪い! 責任とってやれ!」


「お前もお前で結構横暴な奴だな。大人げねえぞ! 廃課金者みたいな装備してるくせに!」


 ……絶対こいつと戦いたくない。装備とかレベルが釣り合わない。状況的に言えば初めて一週間しか経ってないオンラインゲームで無理矢理ランカーと戦わされるような事態である。そんなことしたくない。負けるから。


 だがこういうときの大衆はなんとも理不尽だ。血の気の盛んな冒険者達はさらに群れを作って集まると、好き勝手に野次と声援を飛ばし始めたのだ。


「やれやれー!」


「装備が不公平だー!」


「はいはーい! 賭けるならここだよー! 倍率はヒビキが1.5でカイトが114だ! 公開されているレベルを確認する限り40以上差があるからね!」


 倍率114だなんて、もし勝てれば大金持ちじゃないか。なんてこと思って見てみれば、イーリスが既に賭けていた。大穴……というか仲間を信じて俺に入れてるかと思ったが、彼女意外にも堅実である。だが、これはいい傾向だ。


 幸運最低値が賭け事に勝つはずないのだから。この原因を作ったイーリスには痛い目見てもらわなきゃ困る。俺の気が済まないからな。


「リーゼも買ってくれば? ヒビキのほうを」


 リーゼも幸運値がイーリスとどっこいどっこいだ。そんな彼女がヒビキに賭ければ、当然運気は傾く。……はずだ。


「いいんすか? あたし賭け事とか初めてなんすよね! 冒険者っぽくって凄いやってみたかったんすよ!」


 リーゼは快活な笑顔を浮かべ、チャームポイントな八重歯をちらりと見せると、賭け事の波に呑まれていった。よし、これで運気は俺に味方するだろう。


「なぁヒビキさんよ。レベル差が40以上あるってのはさすがに辛いんだ。ハンデとして俺のタイミングで決闘を始めていいか?」


「それくらいなら構わない。さっさと始めて誤解を解いてもらうからな!」


 バカめ。俺はこの一瞬の間にこいつが悶え苦しんで倒れるような勝利のビジョンが見えたぞ。ジャイアントキリングしてやる。


「よし、ティア。俺の隣まで来てくれ」


「……フぁ、はい。その、よろシければ後でもっと凄イ命令を…………」


「頭のネジ落としてきちゃったんだな。可哀想に。正気に戻ったら絶対悶え苦しむぞ。お前」


 俺はじゃらりと手錠の鎖を引っ張り、ティアを無理矢理すぐ隣に立たせた。ヒビキは俺が何をしようとしているのかが分からないらしく、見学しているパーティメンバーと共に困惑して首を傾げている。


「んじゃ、始めよっか。カウントダウンするぞ。5、4、3、2!」


 別にカウントダウン中に開始しないとは言っていない。俺はすぐさま行動に出た。剣を持ってない手を伸ばし、ティアのフリル付きスカートの裾をしっかりと握り締め、そのままたくし上げた。


「……致命的なエラー。…………公衆の面前で、ワワワワ」


 ティアが上気して顔から湯気を出すなか、一番に反応したのはヒビキであった。仕方ないことだろう。彼はティアの白く艶やかな太ももから、普通であれば見ることもない薄緑まで見えているのだから。


「変態!」


 ヒビキのパーティメンバーであるエルフが至極当然なことを大声で言うなか、俺は隙だらけのヒビキの股間に向けて持っていた剣を突き出した。相手は寸止めするだろうが、こちとら【オンリーワン】なんて特別なスキルがあるんだ。ぶっ刺したってなんも問題はない。


「嘘だろおまあああああああああああああああああああああ!」


 ヒビキが股間に深々と突き刺さった刃を見て、悶絶しながら叫び声を上げた。イーリスいわく、痛くないらしいが、視覚的なものもあるのだろう。だが遠慮する理由はない。


「【パラライズタッチ】! 【パラライズタッチ】! 【パラライズタッチ】!」


「やめろおおおおおおおおおおおお! やめてええええ!」


 よかった。麻痺耐性はないらしい。ヒビキは股間を押さえたまま力なくその場に倒れ、痺れて感覚がなくなっているであろうアソコに対して涙を流し、戦闘不能である。俺はスッと剣を引き抜き、可能な限りのドヤ顔を浮かべて、勝利の一言。


「勝ったぜ」

バカガイは、腹足綱 有肺目 トレジャーシェル科に分類される一枚貝の一種で明かりの少ない多湿な地域に生息している。


バカ貝の由来にはいくつかの説がある。

馬鹿が本物の宝箱と勘違いして喜ぶ様から馬鹿が喜ぶ貝という意味であるとする説。

捕食行動時、蓋を閉じずに身を丸出しにするさまから、バカな行動をする貝とする説。

上記二つの意味があるとする説。

頻繁に場所を変える「場替え貝」から来ているとする説。



殻長は40~100cmほどで、殻は非常に頑丈で、ハンマーで叩き割ろうとしても簡単には割れないほどであり、この貝殻を加工し、武具を作る研究が進められている。殻は生息地域に合わせた木材柄に、端は鋼色をしており、その見た目は宝箱のようである。しかし底に当たる部分に殻はなく、遺跡や洞窟で地面に付着している。発見当初は二枚貝かと思われたが、底に穴が開いていたことから一枚貝の分類となった。蓋の開閉は呼吸や排泄物を出すための穴が進化したものだと言われている。


肉食で、空気の振動に対して極めて敏感であり獲物が近づくと蓋を開けて捕食行動を行う。この際、獲物が殻より大きいと自らの殻に戻ることができず、身を露わにしたまま消化に専念することが確認されている。


乾燥に弱いためある程度の湿度があるところに多く生息するほか、閉鎖空間を好んでいることが確認されている。そのため多くのバカ貝がダンジョンや洞窟に生息しており、本物の宝箱と見分けがつかなくなる。そのためギルドは宝箱を開ける前に必ず敵感知を使うことを推奨している。


バカ貝は同一個体が卵子と精子を持つ雌雄同体である。ただし成長中の個体にあっては雄の機能が先に成熟することが多い。一般には他の個体と相互に交尾することで受精し産卵する。雌雄同体のため自家受精もできるが、産卵数・孵化率とも著しく低下する例が多い。交尾の際、精子は精莢せいきょうと呼ばれる入れ物ごと受け渡されるのが普通である。一般には生殖器を直接挿入しない動物が精子の入れ物として精莢を形成するが、バカ貝は直接交尾をするにもかかわらず精莢を作るため、その機能は精子運搬のためだけではなく、精子の栄養体ではないかと考えられている。精莢は雄部生殖器の一部を鋳型として形成されるため分類群によって違った形をしているが、概ね半透明で細長いのが一般的で、受け取った側の雌部生殖器内で分解される。


また、生殖器に恋矢と呼ばれる石灰質の槍状構造を持ち、交尾の際にはそれで相手を刺して刺激することが知られている。生殖期には大触角の間の「額」の位置が盛り上がってこぶ状になっているのが見られることがある。これは頭瘤とうりゅうと呼ばれるもので、性フェロモンを分泌すると考えられている。


卵は黒魔水晶の殻で覆われた球形のものを産む。産卵場所は地面の浅いところや朽木の下、木の根元の隙間などで、卵は頭部後方側面の生殖孔から一つずつ産み落とされ、一箇所にまとめられるのが普通である。多くは1週間から1か月程度で孵化する。通常の水生巻貝に見られるような幼生期は卵の中で過ごすため、孵化した子は小さくとはいえ既に宝箱の形をしている。


バカ貝を主食とする動物(天敵)としては、ミミックが最も有名である。ミミックはトレジャーシェル科のみを捕食するヤドカリの仲間で、消化液で作った泡によって貝の中身を溶かし捕食すると、その貝殻を宿として使うようになる。ミミック以外にも多くの動物が捕食者となり、なかでも竜類は主な天敵の一つである。またギガントパイソン、触手プレイカ、潜行ワーム、テラプラナリアにも捕食されるほか、やローラレイ、グレムリン、ゴブリン、オークなどの亜人・魔族など敵は非常に多い。


人間とのかかわり。


肉は美味とされ、食用にされる。塩蒸しや含め煮、缶詰などに調理される。

乾燥粉末が薬用にされることもある。殻に付いたまま塩を振りかけて一つ一つ擦り洗い、空鍋で蒸すと肉が離れる。鍋には貝の液が煮汁となって残るから、それを濾して醤油と酒か味醂を加え、煮立ったらとろびにし、肉を入れ佃煮風に煮詰めて、引き上げたら扇ぐと光沢がよい。適宜に包丁を入れ、小さいのはそのまま、元の殻をきれいに洗って乾かした中に盛りつけ、供する。

宝箱と同じ見た目をしているため、幸運が上がるとされ、冒険者にも人気である。


しかしその宝箱であるが、宝箱に似ているのではなく、古代人たちがトレジャーシェルの貝殻に似せて宝箱を作った。もしくはトレジャーシェルの殻を再利用したのではという説もあるが、真相は闇の中である。


バカ貝は人間を飲み込むときがあるが、消化は極めて遅く、加えて容易に引き抜けることから上半身だけわざと飲み込まれて、楽しむというハードなプレイをした冒険者カップルが、年間で19件。窒息を原因にギルド管轄のプリーストの下に搬送されており、ギルドはモンスターでマンネリを解消するのはいい加減止めろと呼びかけているが、効果は薄い。

また搬送された人の全員が束縛鰻や晒しクラゲでのプレイをし、搬送されたことがあったという実態から、これらのモンスターが密集して生息する始まりの草原は重要視されている。


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