第2話〜タメイキ〜
〜あらすじ〜
自分の子供のように二従兄妹の大輝を想う美輝。
だが、大輝は美輝とは全く別の感情を募らせていたのだった・・・
一方、布団を取りに美輝の部屋に行った大輝は。
「・・・何だコレ。」
ある1枚の写真を見つけた。
幸せそうに笑う美輝の姿と・・・同じく、笑顔の自分が知らない男。
茶髪の、サラサラした髪に、美輝よりずっと高い身長。(大輝よりは劣るけど)整った顔立ち・・・
それらは全て、大輝が全く知らないものだった。
その全く知らない人物と、美輝が幸せな笑みを浮かべている・・・大輝は、妙に苛立った。
それは―――独占欲、情けなさ、悔しさ・・・決してよくない感情が渦巻いている、どす黒い苛立ちだった。
「・・・ま、いっか。」
美輝と同様、根掘り葉掘り探ったりする性分ではない大輝は、そっとその写真を元あった場所に戻した。
だけど・・・まだ、苛立ちは絶頂に位置している。
―――何故かは・・・今まで、自分が見てきた中でいちばんの美輝の笑顔だったから。
『その笑顔を、自分に向けてくれない。』・・・変わることがない現状。充分熟知していたはずが・・・余計、そのどす黒い苛立ちが渦巻き模様をどんどん増やしていく。
渦巻きは、苛立ちに比例して増え・・・熟知していたはずの現状に反比例する。
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不可解なグラフに少年が悶々(モンモン)と悩んでいる頃。
「あ、コレって美輝のママじゃないっ!?」
恵夢が、美輝に向かってケータイをズバッと出す。
「・・・え?」
美輝は、引き気味で疑問符付きで聞き返す。
「コ〜レッ!アンタのママの神楽麗沙様じゃんっ!明日ニューシングル発売するんだってぇっ!随分前から知ってたけど・・・美輝っ!絶対明日CD屋行こぉねっ!ねっ!?」
「は、はい・・・」
引くのも当然。いつもクールキャラの恵夢がこんなに騒いでいるのだ。
騒ぎの原因は、神楽麗沙。40歳にして、18歳のような容姿を持つ・・・それが決め手となって、今大ブレイク中のモデルを本業としたタレント、司会、女優、歌手、ダンサー・・・俗にいうマルチタレント。
そして、美輝の母親でもある。
「てゆーかさっ!あの神楽翔一郎様もお正月とかには帰って来るんでしょっ!?麗沙様との結婚騒動の張本人っ!」
「・・・恵夢、そのレッテル古いってぇ・・・」
美輝の母は、当時IT企業の若社長の神楽翔一郎と17年前に結婚した。
・・・よって、恵夢の発言は大のジダオなのである。
「いーなぁっ!新年早々2人の有名人があの豪邸に集うなんてっ!」
もうすっかり興奮状態の恵夢に、美輝は苦笑した。
・・・「2人の有名人」という“レッテル”について―――心の中で溜息を吐いた。
でも、本当に心の中から溜息が出るのは、バイトの時間。
授業時間は著しく過ぎ、放課後になった。
金銭的に、とても・・・いや、ギザ、ギガント、ギガンティック・・・もといビックバン裕福な神楽家は、バイトなどは無用の長物だった。
そんな神楽家の娘の美輝がバイトをする理由はただひとつ。「HHK(暇で暇で困っちゃう)」だからだそうだ。
面接の時、このHHKを語源ナシで店長に言った美輝も、かなりの度胸者である。(こんな美輝を引き取った店長もかなりのものだが・・・)
さて、場所はあるひとつの洋風な建物の前に移りまして。
「こんちにわ〜っ!」
美輝は裏口関係ナシに、普通の客用の表口から入ってくる。
「あ、美輝ちゃんっ!」
「「こんちにわ〜」じゃなくて、「こんにちは〜」でしょ??」
店内には、ツッコみどころが見事にズレている男女計10名が和気藹々と働いていた。
「コラ。美輝。そこは客用入口。即ち表口。店員は裏口だろ?」
1人、ツッコみどころがバッチリ合っている少年が美輝の頭を軽く小突く。
小突かれたところを摩りながら、美輝は
「はぁいっ!拓海先輩っ!」
敬礼のポーズをして、笑顔をつくった。
―――心の中で、溜息を吐きながら。
この少年は、18歳ながらも家業である洋風料理を継いだ少年・・・早瀬拓海だ。
美輝が最も苦手とする・・・“彼氏”。
―――大輝の頭の中でグルグル回っている写真の・・・茶髪の少年だった。
美輝が、拓海と付き合い始めたのは・・・美輝が店員になってから数日後のことだった。
美輝と拓海が初めて顔を合わせたのは、面接時。
「神楽美輝さんですね?」
「はいっ!高校2年生ですっ!」
「・・・ここは高校生は雇わないのだが?」
「はいっ!知ってますっ☆」
能天気にそう答える現高2の美輝を、拓海は疑わしい目で見つめた。
その目には、「何故それを知っていて受けてるんだ?」という疑問が隠されてある。
「だって私、HHKですもんっ!」
「・・・は?」
いきなりのアルファベット3文字の登場に、拓海は思わずズッコケそうになる。
瞬時に思い浮かんだHHKの語源は、「H(風船)H(膨らんで)K(壊れちゃう)」だそうだ。何故風船なのかは、多分拓海の弟がまだ幼稚園児だからなのだろう。
「・・・まぁいいだろう。ただし・・・ひとつ定めがある。」
「何ですか?」
拓海は、ニコッと微笑んで・・・思い描けない一言をサラリと言った。
「俺と付き合うって定め。」
もう、本当にサラリと。
一瞬、美輝の表情が固まった。
「・・・店長・・・いや、もとい拓海先輩。なんでですか?」
歳もひとつだけ上ということもあり、あえて美輝は先輩という用語を取り出し、“拓海”の後に引っ付けた。
「あぁ。一目惚れっつーの?美輝ちゃんに。」
髪をクシャッと掻きあげ、履歴書をパサッと置き拓海はふわりと笑う。
客観的に見ると、「色っぽい」以外何も言えない動作だが・・・美輝には、「キャラ違ぇっ!」としか考えようがないほど、容姿に見惚れる余裕もないほどパニクっていた。
「いや、私、男の子と付き合ったことないし・・・」
「・・・関係ねぇよ。そんなコト。ちゃんとリードするから。ヨロシク。」
拓海は美輝の有無も聞かず・・・唇にそっとキスした。
「・・・え?」
初めてで、しかもいきなりで短いキスに、実感する余裕もなかった美輝は、顔が離された後、素っ頓狂な呟きを出した。
「・・・俺さ。自分が欲しいモノって・・・手に入れる手段考えられない性質なんだよね。」
舌をペロッと出して、拓海は笑顔をつくった。
「じゃ、これ“美輝”のタイムカード。」
「え?はい?」
「明日から。ヨロシクね。“色々”と。」
最後にフッと微笑み、拓海は部屋を後にした。
・・・まるでマンガのような展開の早さに、付いていけなかった美輝は・・・その場にペタリと座り込んだ。
ハッキリしていることは・・・「ココを選ぶんじゃなかった。」という・・・取り返しがつかない、後悔。
拓海の裏表。それと・・・
―――最悪のファーストキス。
「・・・ハァ。」
誰もいない場所で、美輝は溜息を吐いた。
―――もう、限界かも・・・バイト・・・
彩り鮮やかな数本のステンドグラスを眺めながら、自分の限界さえも予知していた。
「どうしたの?元気ないね。溜息なんてらしくねーぞぉ?」
そんな美輝の隣に、ある1人の綺麗な女性が座る。
「・・・篠原先輩っ!いや、なんでもありませんよっ!やーですねぇっ!溜息なんかぁっ!」
篠原恵美。恵夢の姉だ。
美輝が信頼できるバイトの先輩。色々な冗談話を笑顔で受け入れてくれる、恵夢とは少し対照的な温厚な性格の美人。
「そう?なんかあったら言ってよね?必ず乗るからねっ!」
「・・・ありがとうございます!」
―――打ち明けられたら、どれだけラクなのだろう。
美輝は、そう考えたが・・・打ち明けることは、できなかった。
・・・人に対して甘えたくない。頼りにしたくない。
たとえそれが、恵美であれ・・・美輝は、その考えを崩さなかった。
その考えが、美輝の「何があっても表ではめげる表情を出さない」という前向きな性格に繋がっているのも、相違ない。
そして今日も、表では「明るいいい店員」を演じて、裏で「拓海との関係」に悩んでいる美輝。
何回目か分からない、美輝の溜息が春風に溶け込み・・・悩みだけを残して儚くも、消えていった。
『比例×反比例』裏コント〜R15の謎〜
作者「さてさて、今日はこの小説・・・自称R15(15歳以下観覧禁止)の分類を指定している謎について迫ります。」
大輝「・・・もう謎は自分で分かってるクセに。意味ねーんじゃん。」
作者「・・・そんなシケたこと言うなよ。」
大輝「つーか第一に、なんで俺がココに登場せなきゃなんねぇんだ?」
作者「それはだね・・・R15にするような行動を取るような人物は誰だと思うかい?」
大輝「・・・あの茶髪のチャラそうで変態そうな野郎じゃねーの?(拓海のことです。)」
作者「いえいえいえ・・・不覚だろーけどね・・・」
大輝「なんで俺が不覚しなきゃなんねーんだよ。」
作者「・・・やっぱ教えんとこうっ!ネタバレするかもだし!」
大輝「・・・ワケ分かんねぇ。ま、いっか。」
R15の真相は、8〜10話以降明らかになります。
・・・どうでもいいなんて言わないで下さいよ?(^□^;)




