王都屋台ストリート。8
奥歯を抜いたあとが地味に痛いです。
今回はなかなか出血も止まらなかったんですよ……。
鎮痛剤を飲んで凌いでいます。
三秒終了でなかった占いも終わり、わざわざ立ち上がったケンタウルスが直角のお辞儀で見送ってくれる。
立ち上がったケンタウルスは思ったより大柄で威圧感もなかなかでした。
「……ケンタウルスの占い師がいるってだけで、フォルス村の価値が上がりそうな気もするんだけど?」
外に出てぽそりと呟く。
気軽な占いは結構好きなのだ。
「彼だけなら大歓迎なのねー。ただ彼に執着している幼馴染みが駄目なのねー」
「幼馴染みかー。自称でも事実でも面倒だよね、両思いじゃないと」
「女性で寄生型ですもの。最悪のパターンでしてよ」
「あぁ……」
ホラー系恋愛話でよく見かける設定だ。
読んでいて何時も思う。
どうして切り捨てられないのかと。
幼馴染みだと御近所とか親戚とかが絡む可能性も高いから、難しいとも聞くけどね。
「フォルス村まで一人で来たら守ってあげると良いのです」
「ん? そんな気配がしたのかしら」
「アイリーンとのやり取りでかなり思うことがあったみたいなのです」
「そうなのね」
私の何が彼の琴線に触れたのかはわからない。
ただ良い人そうだったので、本人が納得できる人生を送れればいいと願う。
「ん。結局エンペラーは行くの?」
「う。二十四時間営業なのよ。ちゃんと席を外すから安心していいのよ」
「あ、言われてみると、大体誰かとは一緒だもんね」
トイレまでは入ってこないが、お風呂は一緒に入っている。
寝るときも一緒だ。
濃い関係だとしみじみしてしまった。
「何となく夜に行きたい気分」
「じゃあ、当初の予定通り教会祈祷所へ行くのねー」
「そうしましょ、と!」
女の子が突っ込んできた。
ローズがぼんと跳ね返す。
優しく受け止めなかったところをみると、わざとだった模様。
スリかな?
「いたぁい! スライムに突き飛ばされて、骨が折れちゃった! 慰謝料寄越せ」
おぉ。
既に完璧な洗脳済みらしい。
「骨は折れていないのです。突っ込んできたのは彼女なので正当防衛なのです」
「真っ直ぐ突っ込んできたもんね。ん? あのテントに隠れているのが親かしら」
「有名な当たり屋なのです。騎士を呼ぶのです」
「ん。近くにいるから呼んでくるの」
モルフォがぴょんと跳ねて、目にも留まらぬ早さで騎士を呼びに行った。
「骨が折れたから、慰謝料寄越せ!」
走って近寄ってきて、両手を突き出した少女。
何処を骨折しているというのか。
そもそも痛みで素早い動きはできないだろうに。
「はい! 近寄らないで。当たり屋行為。現行犯ね。大人しくしろよー」
自分に乗せて高速移動してきたモルフォ。
説明をしっかりしたのか動揺しない騎士も凄い。
「御苦労様です」
「あ。助かります。こいつ、逃げ足が速くて」
「関係者っぽい人もいますけど、どうします?」
私はすっとテントの陰に隠れている男女二人を指差す。
恐らく両親だろう。
指差された二人は飛び上がってから逃げる。
なるほど、なかなかの逃げ足だ。
一家揃って筋金入りらしい。
「ローズ」
「主様に冤罪をかけようなんて、許しませんわよ」
ばしゅっと空気が鳴ったと思ったら、ローズが一瞬で二人を捕獲している。
二人とも正反対の方向に逃げたはずなんだけど……どうやったんだろう?
ローズは二人を体内収容して戻ってきた。
中で暴れる二人を見て騎士に拘束された少女も大人しくなる。
「このまま連れて行ってあげて。集合は教会祈祷所ね」
「わかりましたわ。では、犯罪者の移送に協力しましてよ」
「御助力感謝します!」
まずは私に敬礼。
続いてローズにも敬礼。
警備の騎士は礼儀正しいようだ。
さすがは王都。
「これで少しは減るかしらね、絡まれるの」
「また別の有象無象がやってくる予感しかないのねー」
「絡まれない祈祷とかしてもらえないかしら?」
「サカリアスでも無理なのです」
「やっぱりか……」
筋金入りのトラブル体質。
本人はなるべく避けているつもりなんだけどねぇ。
「そういえば、祈祷所って何をしてもらえるのかな?」
「う。基本は祝福を授けてくれるのよ」
「祝福?」
「お布施の金額に応じて、願い事が叶いやすくなるのねー」
「人気は子授けの祝福なのです」
お布施の金額に応じて叶いやすくなるというのが世知辛い気もするが、実際効果が確実にあるなら大金を叩いても後悔はしなそうだ。
「子授けかぁ。お貴族様とか切実よね」
「う。ケンタウルスで占ってから来る人も多いのよ」
占いに祈祷。
何処の世界も頼るものは変わらないのかしら。
神様への願いもあちらよりは叶うみたいだけど。
「え?」
「どうしたのねー?」
「何か、こう。禍々しい気がする」
豪奢な教会ミニサイズ版。
ステンドグラスが美しい建物からは、嫌な気配が漂ってきた。
「……さすがはアイリーンなのです。随分と酷い祈祷に神様が怒っているみたいなのです」
「え! じゃあ、これって神様の怒り的な?」
「そうなのです。勘が良い人は避けているのです」
「でもアイリーンは避けないのね?」
「勿論。教会関係の不正なら、サカリアスに迷惑がかかるもの」
あとね。
ここが最後の砦とばかりに足を運ぶ人たちに対して、失礼極まりないでしょう?
扉を開く。
中は衝立で仕切られているだけで、情報がだだ漏れのセッティング。
気軽な祝福ならそれでもいいけれど、聞かれたくない話も多いはずなのに。
「しまった! 何の祝福を頼むか決めてなかった」
「一応トラブル回避の祝福でいいのねー」
「とほほ。でも一番気になるのはそれだから、無難か」
ほとんど効果がないとわかっていても頼むのには少々抵抗がある。
詐欺行為を働いているとわかっているなら尚更だ。
『確実に男児をとおっしゃるのであれば、お布施が必要でございます』
『……いくら何でも多すぎます。当家に爵位を売れとおっしゃいますの?』
確実に男児を、というのがおかしい。
あくまでも祈祷は願いを叶いやすくするための祝福だ。
願いを叶えるためのものではない。
『暗殺の祝福ですと、御提示されたお布施に桁を一つつけていただかなくては困ります』
『はぁ。苦しませないで殺すだけなら、この金額でいいのかしら?』
暗殺の祝福。
それって祝福していいものなの?
って言うか、頼む場所を間違えてない?
『奥様へは不妊。愛人へは男児の懐妊。この御希望ですと二件の承りとなりますが……』
『馬鹿を言うな。これは二つで一件。分ける案件ではあるまい?』
……えーと?
騎士に囁いたら最初の人以外は捕まるよね。
「……ほとんどの人は自分の話にしか興味ないのねー」
「暗黙の了解もあるのです」
「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
小声で囁き合っていると声がかけられた。
目しか見えない漆黒の衣装を纏った案内人が一つの衝立を指し示す。
運良くというべきか悪くと言うべきか。
一番駄目な気配がした。
「子授けでございますな?」
「違います!」
外見から察した性別と年齢で判断したのかもしれないが。
はっきり言って不愉快である。
反射的に大声で否定した。
「……では、如何な祝福を御希望でございましょう」
「トラブル回避の祝福を希望します」
「トラブル回避、ですと。その件は難しいのでお布施を弾んでいただきますが、如何でございましょう」
「具体的にいくらですか。相場がわからないので金額を明確に指示していただかないと困ります」
相手の嫌がりそうな発言を繰り返す。
しかしさすがは一番やばい奴。
堂々ととんでもない金額をふっかけてきた。
「御本人の運命に干渉する祝福でございます。トラブル回避で10000ブロンとなります」
100万円ですって!
それで完全に回避できるなら大変お得な気がするが、全く効果のない気休めにその値段は出せない。
「完全に回避できるならこれをお渡しできますが」
私はすっと一枚の金貨を差し出した。
一億円。
今の私には簡単に稼げる金額だ。
「完全に回避して差し上げましょうとも!」
欲で肥えたでっぷりとした手が、意外と早く金貨に手を伸ばす。
私は当然音も高く手の甲を叩いてやった。
喜多愛笑 キタアイ
状態 苛々MAX。new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
最近迷惑メールが多くて困ります。
とりあえず国からの調査依頼はメールではこないよね……と思った次第です。
次回は、王都屋台ストリート。9の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。




