灯台下暗し(ジャンル:現実ちょいホラー?)
「すまないね、急に呼び出してしまって」
「い、いえ」
き、緊張する。 社長自ら社員を呼び出すなんて普通あり得ないぞ。 俺自身5年勤めて始めてだし。 い、一体どんな要件だろう…… あ! この前の企画立案に貢献(と言っても対したことは出来てないけど) したからか⁉︎ いやぁ、さすがトップの人はそういうところしっかり見えるなぁ。 しょ、昇進とかあるのかな? ついに俺も出世できるのか⁉︎ いやぁ、母さん喜ぶだろうなぁ。 今日仕事終わったらすぐ連絡しよう! 仲間にもちょっと自慢できるな、いつまでも平社員じゃ飲みの席でも愚痴しか言えてないし。 よぉ〜し、ようやく俺の人生の分岐点が………
「すまないが。 君には今日付けで辞めてもらう」
「……へ」
「話はそれだけだ。 手続きについては後で説明をさせる。以上だ」
……… は、はは。 い、意味分からないし。 期待してた俺バカみたいだ。 あ! なんですかドッキリですかこれ⁉︎ TVの企画かなんかでしょ! そうじゃなきゃこんな急に……
社長の目を見て、そんなポジティブな考えは踏み潰された。 まるで興味のないような目で、早くこの場から消えろと訴えかけるように。 …… ふ、ふざけんなよ!
「そんな急に! 言われても納得できません!」
「大丈夫だ、退職金などはしっかりと支給しよう」
「っつ! そうじゃなく! なんで俺が辞めなきゃいけないんだ! 理由を教えろよ!」
社長だろうが関係ねぇ。 意味も分からず路頭に迷うなんて絶対に嫌だ、てか無理だそんなん。 俺がなにした、何もしてないのに未来を潰されてたまるかよ!
「……… 君は、蟻を踏み潰したことはあるかね?」
「………はぁ?」
何言ってんだこの人? 蟻? 今そんなの関係ないだろ!
「そんな話はしてないんだよ! 話をそらすなよ! 」
「そう、まさにその感覚だ。 君はもしも蟻を踏み潰していても気にはしないだろう? 私は今まさにその感覚だ」
なんだと? 俺を蟻だとでも言いたいのか? 人をバカにすんのも大概にしとけよ?
「ざけんな! こんなの違法だ! 訴えてやるよ」
「どうとでもしなさい。 君がどう頑張ろうと結論は変わらん。 そう、まさに人と蟻と同じだ。 蟻が人に勝つなんて不可能だよ」
どこまでもバカにしやがって…… このまま俺が引き下がると思うなよ! その余裕な表情、すぐにぶっ壊してやる。
「ぜったい! あんたのこと刑務所にぶち込んでやるからな!」
俺はそう言って部屋を出た。
§§§§
「……… ふふ。 元気なものだ」
現実を見れていない、と言えるが。 君が有能ならば勝ち目はあったかもしれない。が、君は至って平凡な社員だ。 不祥事と言えばどんな小さくてもミスは発覚する。 社会的地位も経済的余裕もない君が私を訴える? 茶番に付き合うほど、私は暇ではないのだよ。 なぜなら………
「足下を意識するほど、私も暇ではないのでね」




