表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その日暮らしのおじさんの冒険  作者: よろず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/74

スーツ男の影響


数日後。


昼前、友丸の携帯が鳴った。


画面に表示された名前を見て、友丸は僅かに眉を寄せる。


珍しい相手だった。


「もしもし」


『坂田友丸。お前のせいで怪我人が多数出ている』


「俺のせいじゃねえだろ」


あまりにも理不尽な第一声に、友丸は即座に言い返した。


『撮影者の真似をして、小型ナイフで魔物へ突っ込む馬鹿が増えている』


「そいつらのせいじゃねえか」


『私もそう思う』


「じゃあなんで電話してきたんだよ」


『日本だけなら放っておく』


その言葉に、友丸が少し黙った。


嫌な予感がする。


『アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジア。今や世界中だ。黒いスーツに小型ナイフで異界へ入る連中が急増している』


「……そんな流行ってんの?」


『お前は自分がどれだけ話題になっていると思っている』


「知らねえよ」


『だろうな』


呆れた声が返ってきた。


数日前、東京異界でも似たような冒険者を何人も見かけた。


まさか海外まで同じことになっているとは思わなかった。


『おかげで各国政府から日本政府へ要請が来ている。撮影者本人から、模倣をやめるよう注意してほしいそうだ』


「政府が注意すればいいだろ」


『各国とも、とっくにやっている』


「じゃあ俺が言っても同じじゃね?」


『本人が言うのと政府が言うのでは違う』


「面倒臭いな……」


友丸は椅子へ腰を下ろした。


すると電話の向こうから、さらに面倒そうな話が続いた。


『それから、各国からもう一つ要望が来ている』


「まだあんの?」


『今後は、他の異界から持ち帰った武器や防具を使えと』


「…………は?」


友丸は携帯を耳から離しかけた。


聞き間違いかと思った。


「なんで?」


『撮影者が明らかに特殊な装備を使っていると分かれば、スーツとナイフだけ真似する者も減る――というのが向こうの言い分だ』


「いや、それ俺の物だろ」


『そうだな』


「なんで外国の政府に使う装備まで決められなきゃならないんだ」


『私に怒るな』


「つけ上がってない?」


『つけ上がっている』


即答だった。


友丸は思わず黙った。


政府の人間が認めるくらいには、向こうの要求も行き過ぎているらしい。


「じゃあ断ってくれよ」


『もう断った。お前が何を持ち込み、何を使うかは日本政府が決めることでもない』


「ならいいじゃん」


『だから装備の話はな』


嫌な言い方だった。


『代わりに注意喚起くらいはしてくれ。こちらも各国に対して話をつけやすくなる』


「嫌だよ。俺、配信者じゃないし」


『世界中から配信者だと思われている』


「撮影してただけだぞ」


『龍をナイフで殺しながらな』


「たまたま持ってたのがあれだっただけだって」


『それを世界中の冒険者に説明してやれ』


完全に面倒事を押しつけられている。


友丸が返事をせずにいると、女がふと思いついたように言った。


『それとも、私と結婚するか?』


「しない」


『まだ何も言っていないぞ』


「どうせ結婚したら何とかしてやるとかだろ」


『よく分かったな。私と結婚するなら各国政府くらい黙らせてやる』


「注意喚起する方がマシだな」


『そこまで嫌か』


「面倒事が増えるだろ」


『失礼な男だ』


声は怒っていなかった。


むしろ少し楽しんでいる。


友丸は小さく息を吐いた。


「絢香に頼んで配信で言ってもらえば?」


『彼女は無理だろう』


「ああ……」


言ってから友丸も納得した。


数日前に見た絢香の店を思い出す。


長蛇の列にテレビクルー。


ただでさえ人気配信者だったところへ、氷竜の一件まで重なった。今はまともに時間を取れる状態ではないだろう。


少し考えて、別の顔が浮かんだ。


「……近藤に頼むか」


『近藤?』


「あいつなら顔も出してないし、俺が出ても問題ないだろ」


近藤の配信へ声だけ出て、真似をするなと注意する。


それなら大した手間でもない。


『できるのか?』


「聞いてみないと分からん」


『なら頼んだ』


「断られたら知らねえぞ」


『その時は結婚という選択肢が――』


「切るぞ」


『冗談だ』


絶対に半分くらい本気だろう。


友丸は通話を終えると、そのまま近藤へ連絡を入れた。


事情を話してみる。


しばらくして返ってきた答えは、思った以上にあっさりしていた。


『いいですよ。やりましょう』


「……軽いな」


ともあれ、近藤とのコラボ配信が決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ