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その日暮らしのおじさんの冒険  作者: よろず


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何かの記録映像



『研究室の未分類物体も光り始めました』


 通信機から、宮本の声が届いた。


「こっちの台と同時か?」


『ほぼ同時です。表面に刻まれた線に沿って、同じ黄金色の光が走っています』


 離れた場所にある二つが、同時に反応している。


 こはくは窪みの中で光を見下ろしていたが、やがて石台から浮かび上がり、友丸の肩へ戻った。


 それでも、台に刻まれた線は消えない。研究室にある未分類物体も、発光を続けていた。


「危険はないのか?」


『温度と気圧に変化はありません。魔力反応は上昇していますが、出力は安定しています』


『北田、部屋全体を映して』


 櫻子の指示を受け、北田が正面の壁へ向き、胸元のカメラを調整した。


 石台から伸びた光が床を走る。


 光は部屋の四方へ広がり、壁に刻まれていた模様を次々と浮かび上がらせた。やがて正面の壁が、薄い白色の光に覆われる。


「何か始まるみたいだな」


「みゃ」


 壁の中央に、ぼんやりと影が浮かんだ。


 最初は崩れた線の集まりにしか見えなかったが、少しずつ輪郭が整っていく。


『記録映像のようです』


 宮本が告げるのと同時に、壁に映し出された光景が動き始めた。


 映し出されたのは、広い洞窟だ


 複数の者たちが、起伏の激しい地面を進んでいる。


 二本の脚で歩く者もいるが、人間とは明らかに身体の輪郭が違う。頭部や手足の形も統一されておらず、同じ種族なのかさえ分からなかった。


「人間じゃないな」


『ええ。』


 宮本が答える。


 人間ではない者たちのそばには、それぞれ小さな生物がいた。


 地面を走る個体もいれば、宙に浮かんでいる個体もいる。身体の色や耳の形には違いがあったが、大きさはこはくとほとんど変わらない。


「みゃ」


 こはくが映像へ顔を向けた。


 記録の中で、一行が洞窟の分岐へ到着する。


 先頭にいた小さな生物が左右の道を確かめ、片方へ前脚を向けた。人間ではない者たちは迷うことなく、示された道へ進んでいく。


 場面が切り替わった。


 今度は、岩場で休んでいる様子が映し出される。


 一体の小さな生物が突然立ち上がり、洞窟の奥へ向かって鳴いた。その直後、暗がりから巨大な魔物が姿を現す。


 人間ではない者たちが立ち上がるより早く、小さな生物がもう一度鳴いた。


 魔物の動きが止まる。


 わずかな時間だった。


 その間に全員が岩陰から離れ、魔物との距離を取る。動けるようになった魔物が追おうとしたときには、すでに大きな扉が閉じられていた。


「こはくと同じか」


 友丸が肩を見る。


 こはくは映像を見たまま、返事をしなかった。


『進路の選択と、周囲の警戒。それに魔物の動きを止める能力』


 宮本が映像から分かったことを並べる。


『あの小さな生物たちは、彼らの移動を助けていたように見えます』


「全部、こはくと同じ種類なのか?」


『外見はよく似ています。ただ、これだけで同じとは断定できません』


 映像が再び切り替わった。


 次に映ったのは、友丸たちがいる部屋よりも広い空間だった。


 床には複数の石台が並び、その上に琥珀色の物体が置かれている。研究室にある未分類物体と、形も表面の模様も同じだった。


 人間ではない者の一人が、物体の前で何かを操作する。


 表面がいくつかに分かれて開き、中から白い煙が流れ出した。


「開いたぞ」


 空になった物体へ、小さな生物が自分から入っていく。


 首には細い輪状の装具が取りつけられていた。


 身体を丸めて横になると、表面が閉じる。琥珀色の光が一度だけ走り、内部の姿が見えなくなった。


 別の石台でも、同じ作業が行われている。


 小さな生物たちは抵抗することなく、次々と物体の中へ入っていった。


『卵ではなかったんですね』


 北田が呟く。


『生物を収容するための物に見えます』


 宮本の声にも、普段より力が入っていた。


「こはくが入っていた物もか?」


『可能性は高いと思います。ただ、まだ最後まで見ましょう』


 記録の中で、部屋の明かりが変わった。


 人間ではない者たちが一斉に動き始める。


 石台から下ろされた琥珀色の物体が、台車のような物へ載せられていく。運び出す先は一か所ではない。複数の出入口へ分かれ、それぞれ別の方向へ運ばれていった。


「何かから逃げているように見えますね」


 北田が映像を追いながら言う。


 詳しい理由までは分からない。


 ただ、動きに余裕がないことだけは伝わった。


 最後に残った人間ではない者が、部屋の奥を振り返る。その足元には、まだ一体だけ小さな生物が残っていた。


 その個体には、首輪がない。


 人間ではない者が何かを告げる。


 音声は残っていなかった。


 小さな生物はその場を動かず、運び出されていく容器を見送っている。


 そこで映像が乱れた。


 白い壁に無数の線が走り、記録が途切れる。


 部屋には、石台の光だけが残った。


「終わりか?」


『再生できる記録は、そこまでのようです』


 宮本が答える。


『映像はすべて保存しました。細かく解析すれば、ほかにも分かることがあるかもしれません』


「最後に残っていたのは、こはくか?」


『似ていますが、判断できません。映像がいつ記録されたものかも不明です』


 友丸が肩へ目を向ける。


 こはくは何も言わず、記録が消えた壁を見つめていた。


「覚えてるのか?」


「みゃ」


「今のは、どっちだ?」


 こはくは答えず、友丸の肩へ伏せる。


 北田が石台へ近づこうとしたとき、通信機から小さな警報音が聞こえた。


『待ってください』


 宮本の声が強くなる。


『研究室の物体に変化が出ました』


「何が起きた?」


『表面に継ぎ目が現れています。先ほどまではありませんでした』


 続いて、硬いものが動く音が研究室から届いた。


『物体が――』


 宮本が息を止める。


『開き始めています』



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古代人(?)のオトモ的な存在なのか
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