二十三章 少女の決意
カチカチと時計の針が動く音が聞こえている。
私はどうすることもできないまま、冷たい石の床に蹲っている。
かくれんぼをしよう。
双子は言った。
アフターヌーン・ティーまでの二時間の暇つぶし。一週間前も行った、ただのお遊び……。
あの子たちは何がしたいのだ。私が殺人という罪を犯してしまったのに、何よりも大事な儀式は失敗したのに、こんなこと……。
双子だけではない。カミーユまでこんなことに参加するなんて。普段の彼女からは考えられなかった。
狂っている。双子も、カミーユも、この状況も、この屋敷も。
一番狂っているのは私だ。末っ子を殺した。
あの死体はまだ別館に転がっているのだろうか。冷たく腐っていく赤ん坊を想像し、気分が悪くなる。
そもそも、私はなぜあそこまで暴走してしまったのだろう。末っ子にナイフを振り上げたあの瞬間、私は私ではなかった。怒りと絶望に染め上がった私に、私自身の制止の声は届いていなかった。
私はオリヴィエに夢を食べられた。それは事実だ。そして私は何を思った? あのとき私は何を考えて、あんな行動を……。
――帰る場所を奪われた。
……ああ、そうだ。あの子が食べていたのは、私の悪夢だった。
私は悪夢を失ったと同時に、帰る場所を失ったことに気づいた。そもそもあの夢は悪夢ではなかったことにも。
どういうことだ、今までそんな考えはちらりとも頭に浮かんだことがなかったのに。
帰る場所を失った? 悪夢ではなかった?
私自身、理解できない考えで、あのときの私は動いていた。取り返しのつかないことをしでかした。
私の中に、まだ足を踏み入れていない領域がある。私の心の中にまだ「何か」が住んでいる。それを私は探るべきではないか。この屋敷のことも、私自身のことも、そしてオリヴィエのことも、その段階を踏まない限り決して解決できないのではないか。
そして、その領域を開く鍵はかくれんぼにあるのではないか。
確証はなかった。ただ今はこう考えるしかないという思いが、不安と疑念を凌駕している。何が起こっているのか理解できていなくて、それでもずっと床に蹲っていると発狂してしまいそうで、だから私は何にも分からないまま動き始める。
私の中に眠る「何か」の声によって、私はこれからの行動を決定する。
制限時間は午後三時から五時までの二時間。私はその間に双子とカミーユを見つけなければいけない。
悪夢のようなこの世界に、終止符を打たなくてはいけない。
未だに震えている足を叱咤しながら、立ち上がる。
最初に探す場所はもう決まっていた。




