表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザムザ  作者: 塩崎栞
22/37

二十二章 最後のかくれんぼ

 その言葉が合図だったかのように、双子が私の前にしゃがみこんだ。全く同じ角度で首を傾げ、私の手を取る。

 何の感情も読み取れなかった表情が嘘だったかのように、双子は愛らしい笑みを浮かべていた。それでも彼女らの手は氷のように冷えていて、現実味がない。


 双子の唇から、鈴が鳴るような声が零れ落ちた。


「さあ、シオンお姉さま。アフタヌーンまでかくれんぼしましょうよ。賭け金はカミーユお姉さまが作るお菓子! 今回こそは負けてられませんわ。ねえ、リース?」

「ええ、リーン。私たち、見つからないように必死に隠れるわ! さすがのシオンお姉さまでも、思いもしない場所を見つけたの。それに今回は、カミーユお姉さまも参加してくださるって! 全員でするかくれんぼなんて、久しぶりだわ。さあ、早く一緒に遊びましょう」


 ……何を言っているの? 


 私は呆然と双子を見返す。双子は笑っていた。楽しくて楽しくて堪らないというように、無邪気な笑みを浮かべている。それに反比例するように、私の顔は醜く歪んでいた。


 貴方たちは見ていたでしょう。私がやってしまったことを、もう取り返しがつかないことを知っているでしょう。血塗れの赤ん坊がそこに転がっているのが見えるでしょう。

 どうしてそんなに平然としているの。末っ子を殺した私に、どうしてそんな風に笑いかけることができるの……?


「……冗談はやめて。私、かくれんぼなんて」


 顔を上げたときには、双子とカミーユの姿はなかった。闇を舞うワンピースの裾も、闇から伸びる白い腕も見当たらない。


 それどころか、私が蹲っているのは別館のダイニングではなかった。石造りの床が一直線に伸びている。天井に近い窓から、淡い日光が漏れている。左を向くと、見慣れた扉がった。古びていて、刻み込まれた木目がもう薄くなっている。ドアノブには「シオン」とローマ字で書かれた札がかかっていた。


 ここは、本館の私の部屋……?


 ということは、ここは本館の二階の廊下か。なぜ、こんなところに私はいるのだろう。カミーユと双子は、赤ん坊の死体はどこにいったのだ。


 私の身に一体何が起こっている。


 どこからか、双子の声が聞こえていた。ひどく反響して聞こえづらい彼女らの声は、楽しさと愛嬌で満ちている。


「さあ、シオンお姉さま。私たちを見つけてくださいな」

「カミーユお姉さまを探すのも忘れないでくださいね」


 双子の声は最後にぴたりと重なった。


「かくれんぼスタート!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ