二十二章 最後のかくれんぼ
その言葉が合図だったかのように、双子が私の前にしゃがみこんだ。全く同じ角度で首を傾げ、私の手を取る。
何の感情も読み取れなかった表情が嘘だったかのように、双子は愛らしい笑みを浮かべていた。それでも彼女らの手は氷のように冷えていて、現実味がない。
双子の唇から、鈴が鳴るような声が零れ落ちた。
「さあ、シオンお姉さま。アフタヌーンまでかくれんぼしましょうよ。賭け金はカミーユお姉さまが作るお菓子! 今回こそは負けてられませんわ。ねえ、リース?」
「ええ、リーン。私たち、見つからないように必死に隠れるわ! さすがのシオンお姉さまでも、思いもしない場所を見つけたの。それに今回は、カミーユお姉さまも参加してくださるって! 全員でするかくれんぼなんて、久しぶりだわ。さあ、早く一緒に遊びましょう」
……何を言っているの?
私は呆然と双子を見返す。双子は笑っていた。楽しくて楽しくて堪らないというように、無邪気な笑みを浮かべている。それに反比例するように、私の顔は醜く歪んでいた。
貴方たちは見ていたでしょう。私がやってしまったことを、もう取り返しがつかないことを知っているでしょう。血塗れの赤ん坊がそこに転がっているのが見えるでしょう。
どうしてそんなに平然としているの。末っ子を殺した私に、どうしてそんな風に笑いかけることができるの……?
「……冗談はやめて。私、かくれんぼなんて」
顔を上げたときには、双子とカミーユの姿はなかった。闇を舞うワンピースの裾も、闇から伸びる白い腕も見当たらない。
それどころか、私が蹲っているのは別館のダイニングではなかった。石造りの床が一直線に伸びている。天井に近い窓から、淡い日光が漏れている。左を向くと、見慣れた扉がった。古びていて、刻み込まれた木目がもう薄くなっている。ドアノブには「シオン」とローマ字で書かれた札がかかっていた。
ここは、本館の私の部屋……?
ということは、ここは本館の二階の廊下か。なぜ、こんなところに私はいるのだろう。カミーユと双子は、赤ん坊の死体はどこにいったのだ。
私の身に一体何が起こっている。
どこからか、双子の声が聞こえていた。ひどく反響して聞こえづらい彼女らの声は、楽しさと愛嬌で満ちている。
「さあ、シオンお姉さま。私たちを見つけてくださいな」
「カミーユお姉さまを探すのも忘れないでくださいね」
双子の声は最後にぴたりと重なった。
「かくれんぼスタート!」




