34 完全な聖女
そういいながら、私は思い切って目の包帯を剥ぎ取った
あれ?
私は目にペタペタ触れる。
見えない......
私の予定では、すでに目は完治して見えている予定だった。
クルデラが私に見透かされたくなくて、包帯を外すなと言ったんだと思ったのに...
あれ?
頭が真っ白になる。
目が見えない......
もう私、みんなの顔も見えないの?
誰かの手を借りて生活するしかないの?
一気に不安が押し寄せる。
そして、さすがに目に涙が溜まり始めた。
それを見ているのだろう。
クルデラが慌てている気配が感じられる。
「見えないって言ったじゃないか。見ようとして魔力を無意識に発動してもいけないし、もうしばらくは目を塞がないと。
あれだけの魔力を、手ならともかく目から放出するなんて聞いたことがない。ただ、ちゃんと完全な聖女の力を使えば、治るとは思うんだが.....」
私の目の上に、ハンカチのような布を当てられる。
私も、その布を受け取り、目を抑えた。
「ちゃんと完全な聖女の力って何?いつもの傷を治す力とは違うわけ?それ、早く欲しいんだけど。どうやったら完全になるわけ?」
「ああ、完全な力...そうだな...今までの聖女は説明する前に与えていたから...ええとだな」
クルデラは言いにくそうにしている。
そういえば聖印の模様もリリーから教えてもらったものと少し違っていたのを思い出す。
あの矢の部分がいるのかしら?
「ねえ、私のアザって未完成なんじゃない?」
私は、おもむろにブラウスのボタンの上を開けて、マークのあるあたりを見せた。
アーサーやクルトやトーマスは鼻血をぶっ放していたけど、ハーレムな世界で何百年も暮らしているクルデラなら、桃もメロンもみかんも柿もしっかり見尽くしているに違いない。
案の定、ため息が聞こえ、
「わざわざ見せなくても、歴代聖女の聖印を見ているからわかる。むやみやたらと見せないでくれないか?」
そうクルデラの声が聞こえる。
学園でもここでも......
くそっ、こっちが痴女みたいじゃないの。
医者に診察受けるのと一緒よ。
「まあ、それだけ脱ぎっぷりがいいなら安心した。聖女の力を完全に使おうと思ったら、君の力と、分散された初代聖女からもらった俺の力がいるだろうね」
「へ?あなたが聖女の力を持っているの?」
なんで私の脱ぎっぷりが関係あるのかしら?
というか、桃の端なんて脱いでるうちに入らないわよ。
「君の聖女の証のマークは君と俺で一つ。初代聖女は聖女が堕落するところを好む。だから、それが一つになる過程を俺の中で楽しんでいた」
それを聞いて、ぞわっとする。
脱ぎっぷり...ね...なるほど。
一つになるとかさ、綺麗な言葉使ってるけど、絶対アレじゃん。だってこの世界は疑似恋愛ゲーム...
でも、風呂使っただけで、キャサリンはお母様から叩かれてたわよね。この国の貴族の世界は、貞操観念が強いし、そんな想像したものとは違うのかもしれないわ。
多分...ね、私の想像とは違うと思う。
でも一応、一応ね。きくわよ
「それ.....どうやってやるのかしら?」
「まさに、体の関係を持てばいい。」
はい、終了。
それをリアルに言ったら終わりよ。
破廉恥とか貞操観念とかじゃないの。
もっと考える動物になろうとかそう言う感じよ。
「だれがやるもんですか。初代聖女も、人様が男に溺れていく姿を見て楽しいものなのかしら?」
私は最大限に眉を顰め眉間に皺を寄せた。
その顔がおかしかったのか、クルデラのくすくすと笑い声が聞こえる。
「そこまで露骨に嫌がられるとはね。今回だって、君が魔力を使いすぎてて、回復させるためには、もしかしたらやらなきゃダメかなと思っていたぐらいだし」
クルデラはなんのこともないように言う。
おそらく、そこに羞恥心や恋愛感情も何もなく、作業として当たり前のように受け入れていた行為なのだろう。
それも、初代聖女の願い?
子供の頃からこの神殿の閉鎖空間で育てられて、聖女のために体を差し出すように初代聖女から仕込まれた男。
ぞっとするが、それがおかしいと言う認識すらこの神殿に閉じ込めて持たせない。
魅了だけじゃない。
かつてリリーが行った洗脳と同じ状況だ。
「なに?それ?もし、同意なしてやったら、私のいた世界は犯罪なんだからね。却下よ!それ以外の回復方法を探して!」
望まない行為は、犯罪です!
それを明確に突きつけると、今までは拒否られたこともないのか?驚いた声がする。
「君って、いろんな男性を誓約魔法で鎖をつけておきながら、意外とウブだよね?」
「あのね、ウブとかウブではないは関係ないの。
私は結婚間際で男に騙されたって言ったでしょ。だから、そんな純情さは捨てました。
だからといって、愛のない行為はしたくないのよ」
「そうなのかい?今までの聖女は快楽を追い求めていたけど.....ダメなのかい?」
「おバカ!私たち二人が、擦れまくった大人だからって、この体のキャサリンは違うでしょ。かわいそうじゃないの。そんな仕事上、仕方ないのでやりましたみたいな...」
そういうと、クルデラは
「ああ、マグナカルタ家を敵には回したくないな。マグナカルタ夫人には勝てるけど、君と一緒で破壊神だからね。それに、君はまだアーサー王子の婚約者だって聞いたしね」
そんな返答がぼんやり返ってきた。
「といってもね、それ以外の行為で聖女の力を一つに合わせる方法を知らないからさ。とりあえず、アーサー王子と婚約破棄して、俺と結婚する?」
クルデラは敵は少ない方が良さそうだと真面目に呟いている。やっぱり、クルデラは明らかにおかしい。
「とりあえず、風呂に入るわ。ああ、自分で洗うから結構!風呂まで連れて行ってちょうだい。そして、明日には学園に行くから。いいわね!勝手に婚約破棄とか結婚とか話をするんじゃないわよ!」
私はクルデラに向かって指を突きつける。
クルデラからは
「別に体を見ても、君と関係を持っても俺はなんとも思わないと言ってるのに...」
という、何を抵抗しているんだろう?と言わんばかりの呆れた声が聞こえる。
どっちの感覚が正しいのかバグりそうだわ。
解体!解体!
絶対神殿解体!
そうブツブツ呟く横で、クルデラからはさらりと爆弾発言が落とされる。
「こうなったのは俺の責任でもあるから、なんとか目を治すために協力はするけどさ。でも、君が完全な聖女にならない限り、その目は治らないからね」




