第34話 キャラクターの身長比べの際、髪の毛で稼いでる奴ってどうなの?
外に出かけた僕達は、
取り敢えず近所の集落の様子を軽く見ることにした。
ポイントを使った情報収集でも幾つもの情報が入っては来ているが、
自分たちの目や耳でも確認しておこうと思ったからだ。
以前来たときとは比べ物にならないほど、集落は発展していた。
此処が国になるのも時間の問題だろう。
僕達はフードを深くかぶったまま、
その中でも一際賑わっている商店に近寄ることにした。
店の入り口付近にいたこの集落で見かけた中では裕福そうな服を着た少女に話しかけた。
「少し話を聞いてもいいかな?」
「めっ、女神さ―――」
そうだった。
この集落では僕達は有名神だった。
それでも、声だけでバレてしまうものだとは…、
どれだけ僕の事を意識して生きてるのかな、この子は。
…いや、今はそんなどうでもいいことを考えている場合ではない。
「摂理。」
「はい。意識除去術式。」
「―めがみしゃまぁ?」
「取り敢えず、人目につかない所に行こうか、
お菓子をあげるから僕についてきてね。」
「は~い。」
「この子の将来が心配です。」
「将来悪い男に騙されて連れて行かれそうな子だね。」
「…或いは現在進行形でそうなっていますが。」
「そんなことはどうでもいいさ。」
「誘拐犯がそれを言っては駄目です。」
「そういうものかな?」
「はい、そういうものです。」
そうやって、僕達は少女とともに人目につかない所にまでやってきた。
「摂理、この子の状態は?」
「私達のいうことに何でも従いますし、何でも答えます。」
「えげつないね。」
「魔王が言いますか!?
一応この術式では物事が終わった後には言動を行った記憶は消えますし、
しかも後遺症も残らない、被術者に優しい術式なんですよ。」
「どうせなら、廃人になるくらいにした方が、証拠の完全な隠ぺいに…、
いや、この子は裕福そうだから集落への影響は大きくなりそうだし…、
そうだね、摂理の行動が正解だ。君は素晴らしいよ。」
「爽やかな笑顔で言っても、何一つ言葉に爽やかさが掛かっていないのですが。」
「摂理は気にしなくてもいいよ。僕も気にしないことにするから。」
「遥さんは本当に人間らしくないですね。」
「それは、必要な事かな?」
「………私は、そう思います。」
付けこみやすくなるから?
そう言ったら、怒られるだろう。
そうなった時に、少女にかけた術式が解けても困る。
…こういうところが、人間らしくないというやつなのだろうか?
だとしたら、『人間らしさ』なんてどうでもいい。
「そんなことよりも、そろそろこの少女に尋問していこうか。」
「…はい。」
「この近くの迷宮の事は知っているね。」
「しってるよ~。」
「評価はどうだい?」
「う~ん。」
「聞き方が悪かったかな。
じゃあどんな風に周りの大人たちは言っている?」
「え~とね、たしかモンスターが強くなるのが早いとか、
ふだんは海にでるのに、さばくがあった、とか言ってるよ。」
海以外の場所も浸透してきているわけだ。
「はなのおばけが強いんだって。」
砂漠薔薇の事か。
ランクC+の植物系の強力なモンスターだ。
普通はなかなか自然発生で出るモンスターではないけれど、
特殊な環境だからだろうか?
摂理曰く、迷宮主の意識やセンスが多少なりとも影響するらしいから、
それもあるのかもしれない。
夢判断ならぬ発生モンスター判断か、…どうでもいいね。
「この集落について教えてくれるかな?」
「えーと海とさばくのりょうほうのめずらしいものが手に入るから、
すごく、おおきくなったんだよ。今は、お父さんがみんなをまとめてるの。
お母さんは弟を産んだ後死んじゃったけど。私もがんばるの。」
中々面白い立場にいるようだね。
「他の国の事で知っていることがあったら教えてくれるかな?」
「う~ん、むかしせめてきた国があったみたいだけど、
女神様がやっつけちゃったんだって。」
「そうか。迷宮主について知っていることは?」
「う~ん、わからない。」
「女神については?」
「清らかなさざ波の女神さまは、まおうに閉じこめられているけど、
ときどき出てきては、助けてくれるんだって。
ここをまもってくれてるんだよ。でも…、」
「でも…?」
「でもすこしこわいの。」
「怖い?」
「よくわからないけどこわいの…。」
「だそうだ、凡そ僕たちの思い通りに物事は進んでいる。
いい傾向だと思わないか?摂理。
摂理からも聞いておきたいことはあるかな?」
「特にはありません。
ありがとうお嬢ちゃん。お嬢ちゃんのおかげでお姉さんたちは助かりました。
そういえばお嬢ちゃんのお名前は?」
「キャロルです。」
「ありがとう、キャロルちゃん。
後はもう帰っていいよ。そして此処で会ったことは全て、総て忘れているの。
じゃあ、さようなら。」
そして女の子は去っていった。
「何処かで聞いた名前でしたね。」
「きっとどうでもいい名前さ。
僕達の行く先に障害にはなりえない。
そんな名前だよ。」
「そろそろ行こうか、『バグ』に会いに。」
「どうやって行きますか?」
「なるべく優雅なものをお願いするよ。」
「では、―――――――解放。」
眩しい光の後に、僕が見たのは、
天輪を頭上に掲げたを太陽の光に透ける純白の鳥の様な翼を背に持った女性。
まさしく神話に語り継がれる天使の姿をした摂理の姿だった。
「遥さん、これが私達天使の本来のあるべき姿です。」
「で、普段それをしない理由は?」
「よく、天井が低いところを歩く時天輪をぶつけるんです。」
「えっ、天輪ってそういうものなの?」
「まあ、はい。」
「他の理由は?」
「翼が邪魔になったりしますし、
第一、補助装置でいる間は、
この状態になっても飛べる程度しか変化はないですよ。」
補助装置を止めさせてみるか?
そうすれば戦力に…、いや、
そのときに天使は僕に従う必要はあるのか?
完全なる世界の僕に成り果てはしないだろうか?
「遥さん?何を考えているかは何と無く解かりますけど、
私は遥さんの補助を止めたくはないですよ?」
まさか、心が読めるのだろうか?
「あっ、今読まれた、とか思いました?
違いますけど、最近何と無く遥さんの考えを理解できるようになりました。
相手を人間ではなく、事象を起こしだす装置ととらえて、
主観的に疑いの目を向け、客観的に判断する。―――それが、遥さんの考え方ですよね。」
「凄いね摂理は。
その容姿に、その人間観察力が合わさればどの場所でもどの世界でも、
中心になれる。」
「中心になれる素質を持ちながらも、
利益的な面でしか中心にいる価値を感じられない遥さんが言うと、
何か皮肉にしか聞こえてきません。
でも私…、そんな遥さんの事も嫌いじゃないんですよ?」
「僕も優秀な君の事は決して嫌いじゃない。
多少怪しいくらいの方が使いがいがある。」
「……遥さんがそういう人なのは嫌というほど理解してます。
では、私に掴まって下さい。
遥さんを空の旅へご招待します。」
そう言って差し出す摂理の手を、僕は握った。




