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外伝の外伝つまり――――本編? 神々の日常1

King of the root    姫宮遥



「遥さん…、遥さん…?」


朝、お茶を淹れに寝室を出て帰ると、起床して隣に僕がいないことに驚き僕を探している摂理をお目にかかることができた。

寝ぼけながら隣にいるものだと思っていた僕を探す様は今日も酷く愛おしい。


「やあ、摂理。おはよう。」


「おはようございます。遥さん。」


僕を見つけて、この手にもっている茶式セットを見て状況が理解できたのかホッとした顔も可愛らしい。

朝からまた妻の可愛らしさを再確認してしまう。


アーリーモーニングティーとしてガラスポットの中で紅茶の名前の通りに鮮やかな色を醸し出す正統派のダージリンを、

スプーン型のストレーナーで受けてカップに容れる。


その様子を見て摂理はあることに気が付いてくれた。


「あれ? 遥さん、そのカップ新しいのですよね?」


「ああ、そうだよ?摂理。 会心の出来だ。」


最近自作用品に凝っていて、昔お母様がご存命であった時に陶器を習った経験を思い出しながら作ったんだ。


「あら?遥さん、このウサギ、可愛いですね。」


全く、僕の妻は本当によく僕の気が付いてほしいところに気が付いてくれる。正に理想の妻だと思う。

カップの持ち手のところに小さなウサギの彫刻を載せてある。


「摂理が以前、ウサギが好きだって言っていただろう?」


「遥さんっ、覚えていてくれたんですね。」



「当然さ、摂理の趣味嗜好、栄養状態、睡眠時間、生理周期まで把握してる。」


「は、遥さん?」


まあ、流石にそれは引かれてしまうか。


「急がなくてもいいけれど、飲み終わったら朝風呂とかどうかな?

スノーシトラスを切って浴槽に浮かべてある。

それとスノーシトラスで作ったシャンプーや石鹸も作ってみたんだ。きっと摂理も気に入ると思うよ。」

朝から柑橘系を接触・摂取すると光毒効果で染みの可能性? 僕や摂理達には紫外線なんて無意味だから関係ないさ。


「…迷宮の至宝と呼ばれるスノーシトラスがそんな扱いをされていると聞けば、

侵入者(そとのひとたち)は即倒しますね。」


「摂理が気に入るかどうかが問題なんだ。侵入者(そとのにんげん)なんて―――――――――――――」

「どうでもいい、ですよね?遥さん。ふふふ、久しぶりに聞きました。」


一本取られたね。

「最近、言ってなかったかな?摂理。」


「ええ、最近ご無沙汰でしたよ?遥さん。」



「そうか…。最近は充実しているからね。

所で摂理、飲み終わったようだしお風呂に行こうか?」


「え?遥さんも一緒に行くんですか?」



「何か問題でも?」


「いえ、何も問題はありませんけれども…。」



「摂理と朝からイチャイチャしたくなってね。どうかな。」


「で、でも、今の時間帯だったら雪花(おねえちゃん)の方は起きているかもしれませんよ?」



雪花(おねえちゃん)の方なら雪花(いもうと)と昨日夜遅くまで話していたようだから、きっとまだ起きてないさ。

だから、ね?摂理。良いだろう?」


「はっ、遥さんっ!? んん~~~っ!! んっ。」


摂理に無茶を言う時はキスをすると大体押し通せる。問題は僕が止まれなくなるところだ。

だが、この後の様に事象が確定できるのならその場では我慢して見せよう。


「遥さん…。」


ディープキスで寝起きの摂理には若干酸欠気味なのか、蕩けた表情をしている。


「摂理もそれでいいみたいだし、――行こうか。」







この後、滅茶苦茶朝シャン(意味深)した。










朝食を摂理と作っているとお寝坊な二人組が部屋からやって来た。


「おはよう、雪華(ゆきか)雪花(せつか)。」

どちらも雪花(せつか)なんだけれど、それだと混乱するというのと、

お姉ちゃんの雪花(せつか)自身の希望もあって、未だ小さい雪花(せつか)には、

向こうの世界の雪花(せつか)の事を親戚のお姉さんだという事にしてある。

別に僕も摂理もどちらの雪花(せつか)も大切な娘だと思っているし、

幼い雪花(せつか)本当の事を言っても良いのだと思っているのだけど雪花(せつか)本人の希望とあれば意を汲むことにしよう。



「…おはよう、ございます。お父様、お母様。」


「おはようございますっ!! おとーさま!! おかーさま!!」


妹の方は朝から元気いっぱいだけれど、

お姉ちゃんの方はどうにも歯切れが悪いし、こちらを直視しようとしない。

どうやら寝坊したことを恥ずかしがっているのかもしれない。それもそれで可愛らしい。


とてとてと可愛らしい足音を立てて雪花がこちらに走って来ては僕の膝の上によじ登る。

摂理にエプロンを着けてもらいながら今度は最近出来た雪花用の椅子に乗りに行く。

僕の椅子は蜂の紋様をあしらった意匠の椅子。摂理の物は孔雀。

お姉ちゃんの物は猛禽。ちっちゃな雪花の方は狼をモチーフに刳り抜いて造った物だ。


ただ、雪華はそれまで僕か摂理の膝の上が定位置だったために、

自分の椅子に座る前に、僕か摂理の膝の上に乗りに来る。可愛い。

以前、お姉ちゃんの方にもしてあげたことがあったが、照れられてしまった。

僕としては娘に椅子にされることは悪くない気分だ。その大切な重みを改めて実感できる。





「「「「頂きます。」」」」


モーニングは、ココナッツ☆モンスターという僕の迷宮(ダンジョン)に生息している、

細長く棘の付いた手足のヤシの実のモンスターを、手足をもいでかち割って半分にしたものの上に、

米を容れて、予め抜いておいたココナッツミルクをかけて天薬草と塩茸を加えて炊いたナシルマに、

同じく、ココナッツミルクを使った汁物。こちらには即伸魔海藻(シュトロームウィード)をメインに、

小魚を日干ししたものを加えてある。出汁は小謡(カンツォネッタ)(ボニート)の物を使ってある。

塩見の利かせ方と、ココナッツミルクの癖の合わせ方には気を使った物だ。

そして、摂理が腕を振るってくれたスノーシトラスを使ったフルーツサラダがある。

当然のことながら無農薬、ビオの菜果だ。

女王刃嘴鶏(マザーブレードビーク)の卵による卵焼きも素晴らしい出来だ。

芯は敢えて崩して、外側の数巻きだけはしっかりと形作る。歯ごたえよりもとろふわ感重視だ。

飲み物は鳳凰梨(フェニックスアナナス)の果実ジュースを混ぜたアールグレイの紅茶だ。

朝に相応しい酸味と爽やかな香りを醸し出してくれる上に、何度刈り取っても再生してくれるので収穫が容易い。

これらは迷宮支配者一族(うち)だからこそできるラインナップだ。

因みに残飯は出なかったけれど、出ても迷宮(わがや)には居候が何人かいるので彼らに喰わせておけば問題ない。

掃除をしてくれている報いにはなるだろう。



それと、食事の最中の話だけど、サラダが出てきたときに我が家の小さなお姫様が、

「今日のおとーさまと、おかーさまのにおいがするー。」と言い出して何故かお姉ちゃんが真っ赤になって俯いてしまった。



昼までは、例の勇者君たちの動向とそれから必要と考えられる対策を考えるのを、

雪花のペットになった狼と、雪花が何処かでまた拾ってきた獅子の小屋を作ろうと設計図を考える片手間の更に片手間で考えていると、

雪花が、「わんちゃんとがーちゃん、おそとにだすの?」と不安そうに聞いてきたので設計図は氷結粉砕することにした。

当然の事であるはずだ。間違いない。


その後は家庭菜園の様子を見に行くことにした。

トマトやネギやレタス等日常的に使う野菜とバラや百合等の花を育てている。


肥料は食事の際の廃棄物と暴走梨の樹油と養殖した魚竜と秘奥義貝の殻と

女王刃嘴鶏(マザーブレードビーク)の卵の殻と雑草のように出現したモンスターを燻したものと

麹にした黄金米の米糠とシャインマスカットの搾りカスを。シャインマスカットと言っても岡山県の名産品の方ではなく、

物理的に光り輝くマスカットだ。

天山水を混ぜて長期発酵させたものを女神様パワー(笑)で細かい翡翠色の結晶にして使っている。

量はガクッと減るけどね。


結晶ってどう見ても吸収しやすい栄養にはならなそうなんだけど何故かよく育ってくれる。

逆に栄養過多で根腐れや栄養化する過程で根焼けにもならないのがいいね。

その上、栄養を与え尽くしたら地表近くから土色に変わっていく本当に謎仕様の特性肥料だ。

それを先行して撒く用と後で追加として撒く用では配分を変えて使っている。

長いこと見に行ってなかったので大量に昆虫モンスターの幼虫の溜まり場になっていたけど。

害虫になりそうなのはそのまま肥料になってもらったり、他エリアへ移動させてもらうことにした。

魚竜を丸々一匹使ったのが良かったのだろうか?

葉に栄養が行きすぎているところが多少あるけれどその割には花の付き方や実の付き方も悪くないんだよね。


採れた野菜には何を食べても体調が崩れない仕様じゃなかったら危険な位おかしな程栄養が詰まっている。

普通の人間なら病床から飛び起きるか、勢い余って死ぬか、別の生き物に作り替わるかするんじゃないかな。

まあ、冗談だけれど。

試しに植物モンスターに与えてみたらいきなり進化した程度の実績はあるから強ち可能性が無いわけじゃないんだけれどね。

ああ、そういえば迷宮(うち)の外にも植物モンスターが大繁殖している所があったね。…面白いことになりそうだ。

栄養の塊を一番楽しくなるタイミングで吸収してもらおうかな。うん、それもいいね。


特製肥料で育ててある家庭菜園の野菜は僕達にとっては美味しくて栄養のある食べ物だ。

でも只の人間に耐えられる保証はしないよ?

カリウムの過剰摂取はナトリウムの排出を促すとか、亜鉛中毒とかどんな栄養素でも過剰摂取は本来危険なんだけれど、

僕の家族は普通の人間とは別格だから特に問題はないんだ。種族レベルで違うからね。

魔力とかそういうのも普通の人間には過剰摂取は良くないよね。

何にせよ取り過ぎは良くない。肥料に詰まっているのは栄養だけじゃなくて純魔力やその他の力が高い水準の存在密度で固めてある。

それに加えて僕の属性魔力もほんの少しだけ薄らといれている。

僕の属性魔力を極限まで濃くしたものは曾てこの世界を支配していた旧き神の存在を壊した存在を侵しめる猛毒だ。

むしろ高栄養の強制摂取等よりもそちらの方が危ないだろうね。

世界の神である摂理や僕の係累たる娘達でなければ安全であるとは言えないだろう。

現にマスコミ姉弟は一時期おかしくなった時もあったから。

普通の人間が人間らしい人間性を持ったままで日常的に食べるのは難しいかもしれない。さしずめ禁断の果実というところかな。

食べたが最後、もはや日常には帰れない破滅の甘露。神話における黄泉の国の悪質な楔だったり、狡猾な蛇の贈物だったりのようにね。

ああ、そういえば僕や僕の妻も神様だったね。


その肥料は食用の葡萄等を育てている果樹園でも使っている。

中に足を踏み入れれば沈み込む程に耕している。

勿論僕には女神様的な特別仕様で地形のマイナス効果の一切を受けないために汚れない臭わないめり込まない。

しかし、通常の人間にはめり込むほどフカフカなので、ある意味一歩歩く毎に浅い落とし穴にはまる気分だろう。

果実に辿り着く前に番犬(モンスター)が新しい肥料に侵入者を変えてくれるだろう。


それと、肥料にも使った米糠は脱脂したあとに自作の酒器の材料にもさせてもらっている。乾いた状態でも削れにくいし、

サラサラしているし何より軽いのが良い。

滑らかにするために化粧薬を施すのは大好きだけれども、そうすると若干ばかり重たくなるだろう?

だからこそ素材は軽くて、少量の塗り薬で十分なものを選びたいんだ。

お酒を含めない食事の時には皿に料理がくっつきにくい厚塗りの物が好みだけれど、

お酒を呑むのにあまり重たい酒器は好きでないのでね。

因みに今日のウサギのカップは砥石の粉末を使った物で塗薬を多目に使った物でそれらとは別物だ。

摂理は少々重くて危なっかしい陶器の方が大事にしたくなる気がして好きなのだそうだ。

変わっているとは思うけれどそれを言うと「遥さんが言いますか?」と笑われた。どういう意味なのだろうね?




昼食は丸々全て摂理にお任せした。

宝貝と刃骨(ナイフボーン)(シーブルーム)のマリナーラパスタをメインに、

短銃七面鳥(デリンジャーターキー)の丸焼きを切り分けたものや、

重雷牛(ボルトスタイン)の牛乳を使ったラザニアは素晴らしい出来だった。

特に短銃七面鳥(デリンジャーターキー)の丸焼きはピーが家族を連れてやってくるという事でかなり多めに作ってあった。

…いつも思うのだけれど、時折家族を連れてやってくるピーは鶏肉が好き過ぎるのだけれど、

孔雀って、そういう嗜好だっただろうか?

そして今日のデザートは僕の担当だ。

僕が依然作ったガラスの上から漆で幾何学模様を付けた皿の上に、

ボトムアップルのゼリーを重雷牛(ボルトスタイン)の牛乳を使ったクリームで挟み込み、

鳳凰梨(フェニックスアナナス)の果実で飾った特製ケーキと、

洪爆加加阿(フラッドボマーカカオ)とユニオンキルシュとハニーメロンのチョコレート菓子を用意した。

メイド服と給仕服を着た記者姉弟が物欲しそうにしているけれど、

悪いね。これは僕の家族用なんだ。

それに、我が家のお姫様方は残すつもりはなさそうだから諦めて欲しいものだね。

まさか、僕がどうでもいいものたちの為に労力を振るうとでも?




昼からは薪を割って豪紅猪(クリムゾンボア)の燻製を作ったり、

我が家の麗しき姫達の服を作るために織物をしている。


肉に関しては薪や燃焼材から拘る。

千梵桜の薪材に暴走梨(アバレナシ)のチップを燃焼材に燻製を作る。

ソーセージを作るときも結着剤とかなんて使うことは無い。


織物は灰色織蜘蛛(チィタカァ)の繊維を地底河藍(アケローンインディゴ)で染めた浴衣が好評で、

妻や娘たちが欲しそうにしていたので気合を入れて作ろう。

雪華には、「…浴衣を着るとますます女性にしか見えません。お母様とお呼びした方が宜しいのでしょうか…。」

と真剣に悩まれたのは少し反省した方がいいのだろうか?

そうなると、母親が2人になって問題がある……某魔法少女なリリカルな世界でも母親が2人という現象もあるし、

特に問題ないよね。

因みに、この浴衣は一見防御力が低そうで危うげだが下から突風が吹こうと、神器による攻撃がこようと、

様々な意味で防御力を発揮して大丈夫な一品だ。

灰色織蜘蛛(チィタカァ)七呪冥神蜘蛛(アトラナート)にまで進化してくれていれば更に良いものができるのが唯一の心残りだ。

摂理と僕の神儀礼装(そとゆきようスタイル)はそれで作ったんだけれど、やっぱり着心地がいいんだよね。

フィット感が素晴らしいんだ。わざとらしくない艶も摂理の肌を引き立てて良いしね。

以前はいたのだけれど、最近アリスが食べちゃったからね。また成長を待たないといけない。



夕食は雷雲牛(ユピテルバイソン)のフィレに忍海老(シノビエビ)と秘奥義貝のバター焼き。

ゴールドゴードを焼いたものにリキュールグレープのワインで味付けしたもの。他にもあるが、

僕が織物をしている間に全て摂理が用意してくれていた。配膳は愛娘たちも手伝ってくれたようだ。

シャイニングマスカットの自家製ワインを合わせたかったが、まだ時期が足りないので異世界から取り寄せることにした。

一級翠玉蜥蜴(エアステススマラクト)や通称VVと呼んでいる凝酒(ヴァインシュタイン)蜜蜂(ヴェスパ)が発生したので、

良い畑になっているとは思うのだけれど、

一級翠玉蜥蜴(エアステススマラクト)特級翠玉蜥蜴(グローセスマラクト)に進化していないところを見ると、

最高級ワインを生み出す畑にはまだ遠いのだろうか?

あのトカゲのモンスターは良いワイン畑に発生して、畑の質に合わせて進化するから良い指標になる。

日光浴ばかりしている割には電撃襟巻蜥蜴(エレキトカゲ)などより遥かに強いしね。もはや竜に近いし。

代わりに滅多に働かないけど。まあそんなことはどうでもいい。

結論としては山に作った畑のワインはまだお披露目には遠いという事だ。

それと今度はマセラシオン・カルボニックでも試してみようかな。渋みは好きではないし。

いや、あのせっかちな作り方はやめておいた方がいいかな。日本人大好きの例の安ワインと同じ方法だからね。

食べた事は無いけれど所謂縁日や海の家の食事見たいな物がアレに近いものだろう。その雰囲気の中でのみ価値がある。

ごり押しで人気が出た芸能人の様にマスコミにプッシュさせて売れているんだ。

経営としてあのワインの商売の在り方に関することはともかく、飲む側とすればありがたがって飲もうとは思えない。

例のワインの輸入業者がおべっかに来た時に持ってきたワインが例のワインで無かった時には当然だと思えたくらいだ。

「姫宮様が成人された時には是非」だってさ。我が家には千万円以上のワインがあるのを知って持ってきたのかは知らないけど、

千年に一度だとか、何処かのアイドルの様な売り込みで紹介しているご自慢のワインでは流石に手土産にはできなかったのかな?

パーティーで芸能事務所の社長が横に連れていた秘書の方が売込み中の芸能人より美人だったときの気分に近いね。

アレは経営的にはフランスに対する価格調整の影響力とか色々あるけれど、もはやこの世界に来た以上どうでもいい。

あのワインの生産法の様に解禁日を先に設定して作るためにガスを詰め込むのは余りにも風情が無い。

もしやるとしたら当然ガス自然発生式の方だ。

イベントとして消費されるからワインでさえあれば良いと温風に当てて展示してあるようなアレとは違って、

しっかり造ればもしかしたら悪い造り方でもないのかもしれないし。

まあ、自作のワインは置いておいて今回は取り寄せにしておこう。


取り敢えずは今回はドイツワインだ。

そう思っていたら、摂理が用意してくれていた。ピースポーターか。

実に僕の好みを理解している。嬉しいよね、こういうの。

「ありがとう摂理。そういう気分だったんだ。」

摂理がお酒を出現させると、雪華が凄く気まずそうな顔をした。

…前からそう思っていたけれど、お酒は苦手なのかもしれない。

子供に飲酒を勧めるつもりもないので良いけれど。



「遥さんはゼームリングの完熟させた甘仕立てがお好きですものね。旧格のアウスレーゼ位の。」


「ケルナーでも良いけれどね。何にせよ甘い方が好みだ。後必要以上に渋いのは好みじゃない。」



「知ってます。アイスワインとかデザート酒好きですものね。

それと基本的には赤と白なら白がお好きでしたよね、遥さんは。」


「きつくない物が比較的多めだろう?」



「遥さんって日本酒でも十回程も仕込んだお酒とか好きでしたよね。銘柄は忘れましたけど。」


「まあ、あのお酒は口に含んだ瞬間と喉を通った時の味が一貫していて、香りも良いからね。」



「甘党な遥さん可愛いです。」

そういう摂理も可愛いけれど、こういう時の摂理の表情はお母様に本当に似ていて少し困ってしまう。


「それはそうと、ドイツワインは格付けや方針を変えてしまったのは残念だよ。」



「遥さんは甘い白ワインが大好きですものね。特にドイツの甘さと高級さが一致していた時の。」


「元某ロマネなオーディフレ○ドとか、あっさりと喉を流れるものなら赤でも好きなものはあるけれど、

やはり白の方が進むかな。楽に喉を通る気がする。

葡萄と土地と生産者の質と組み合わせ、後は呑む側の好みと気分と食べ会わせの問題なのだろうけれど、

基本的にドイツ語圏内のワインは好みだね。地球温暖化の影響や市場の関係もあって甘さに以前ほど拘らなくなったのは残念だよ。

それでも、ドイツワインは好きだよ。

土産用のフランケンの個性だけを意識して極端に強めたキツいので無ければ。

……どうしたんだい、摂理。そんなにニコニコして。」



「いーえ、遥さんが美味しそうに私の料理と選んだお酒を呑んでくれているのが、嬉しくて嬉しくて。」


「僕も、僕の味覚の要求に応えてくれる妻を持てて幸せだよ、摂理。」



「遥さん…。」

お酒を飲んだら理性が薄くなる前に寝室へ直行しよう。

片付けは我が家には剣士と記者姉弟(めしつかい)がいるから問題ないね。

まあ、僕はお酒にはあまり強い方でないから食後に飲むことにしよう。

完全解毒術式もあるけれど、それを使うとお酒を飲む意味も薄いからね。風情もないし。

第一、摂理の期待に応えられないだろう?

食事が終わるとワインを呑んだ僕の耳に娘たちの声が入る。





「…、せつかちゃん、今日も私と寝ましょうか。」


「うん、寝るー。わんちゃん、がーちゃんも行くよー。」

蕾輪獅子(ブルジェレオン)が先に走ってドアノブに飛びついてドアを開け、

高速氷狼(スピードフェンリル) が重たそうに上で俯せに寝転んでいる雪花をのせてトボトボと歩いている。

……落とすなよ、解っているよね犬。スピード型でパワーはないなんて言い訳するはずもないよね?

落とすはずなんて、アリエナインダカラ。




精神感応でヘタレ狼に意思を伝えると摂理を横抱きして寝室に入り後ろ手で鍵を閉め、

そこで僕は理性を手放した。

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