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外伝 とある勇者の軌跡 目指せスーパー従者

あれから僕はヤバッカ伯爵家令嬢付従者(仮)となった。

お嬢様(仮)についていくと、入り口でヤバッカ伯爵が待っていた。

連絡は事前に護衛たちがしていたのだろうけど、

伯爵自らお出迎えとは驚きだ。

そんな伯爵は娘であるお嬢様(仮)に言った。


「シャロン、勝手に従者を拾ってきてはいけないと言っただろう。

元の所に返してきなさい。」


ヤバッカ伯爵は聖薬教団との癒着を中心とした悪評があるが、

この時ばかりは正義の使者に見えた。

それに対してお嬢様(仮)は、


「嫌ですわ。」

即ち―――反論。


「どうしてもか。」


「どうしてもですわ。」



「いつものようにどうしてもか。」


「いつものようにどうしてもですわ。」

あっ、いつも『どうしても』って言ってるんだ。我儘だなぁ。


「ならいっか。シャロンちゃんがどうしてもっていうなら、パパOKしちゃう。」


「パパ、大好きですわ。」


正義の使者チョロっ。

正義の死者に代えたほうがいいんじゃないだろうか?

正義があってももはや死人に口なしで論争における防御力は0。

そんな正義の死者が僕に、


「シャロンちゃんに手を出してみろ、

一族全員廃棄民に代えてやる。」


耳元で恐ろしい声で恐ろしい事を呟いた。

その迫力を30秒前にも出してほしかったと思う。



そんなこんなでヤバッカ家で世話になることになった。

実家には手紙を出した。


『ヤバッカ伯爵家に誘拐されました。』

という内容で。


母さんからは、


『頑張ってね。』


という1文が返信されてきた。

果てしなく解釈に困る。

僕の状況を完全に理解しているのか、

それとも冗談だと思ったのかはわからない。

まあ、仕送りを始めれば嫌でも状況を理解されることになるけど。


それから僕は様々な事を仕込まれた。

食器の洗い方。

頭に本を乗せても落とさない歩き方。

美術品の算定眼。

護衛用の戦闘技術。

ガーデニング(対貴族向け)。

お嬢様の投げたゴミを地面に落ちる前にキャッチする技術。

掃除。

ワックス塗り。

女装。

女装をした男に見える男装。

女装をした男に見える男装したような女に見える女装。

男装した女に見える女装。

走り高跳び。

棒高跳び。

計算能力。

モンスター学(最高学部基準)。

全身で喜びをアピールする体操。

全身で哀しみをアピールする体操。

全身で笑いをアピールする体操。

モノマネ。

エキゾチックなダンス。

フォーマルなダンス。

イケボになるための発声法。

イラスト生成技術。

地図判読技術。

簡易地図生成技術。

貧乏揺すりをコントロールする技術。

髪結い。

ファッションセンス。

トーク力。

料理。

小物感アピール力。

凄そうなやつアピール力。

お嬢様を小ばかにしない喋り方。

空気の読み方。

お嬢様の歴史。(公向け編)

政治的相関図把握。

ひたすら回り続けても気分が悪くならなくなる特訓。



幾つか明らかに無駄そうな技術もあるけれど一応、

これらをマスターしなければ執事長にはなれないらしい。


いつの間にかよく解からないレールが引かれてる。

今すぐ脱線したいんですけど!?


ゼットです。今では庭仕事をしているときが一番の幸せです…。

因みに一番嫌なことはお嬢様に強制的に昇進試験を受けさせられることだ。

最初は辞退しようとしていたが、ヤバッカ伯爵が怖いので、

試験を受けてワザと落ちることにしていた。

まあ、Dランク試験は受けるのにもお金がいるけど、

そこはヤバッカ伯爵家が出してくれているから問題ない。



それとお嬢様と一緒にダンジョンに入ったりもした。

その時に前から聞いてみたかったことを聞いた。


「前から聞いてみたかったんですが、銃樹(ガンフラ)をどうやって倒したんですか?」


銃樹(ガンフラ)は幹から顔を覗かせている大量の尖った種を飛ばしまくってくる非常に強力な植物モンスターだ。

しかも全方位に全弾打ち終わっても、再装填まで早い。

お嬢様があの時の2次試験で倒したモンスター達の中でも別格だ。

もはや打つ手は無いように思えた。


「あんなのは簡単ですわ。 この大きな盾をしっかり構えておけば全く問題ないですの。」


…成程、と思った。

その時は持ってきていなかったが、お嬢様は巨大な盾を魔法を使って更に防御範囲を高めたものと、

所謂『魔法使いの杖』として戦扇・大紅団扇を使うのが主流なスタイルらしい。

射程と範囲、そして威力に優れていても機動力が無ければ相手からすれば正面だけに気を付けていればいいのだ。

後は盾を構えたまま行える攻撃方法、例えば魔法なんかを使えば完封できる。


高い機動力や特殊な攻撃をしてこない相手には非常に有利な、

防御特化の魔法使い型。


そんなお嬢様は一足先にC級にまで合格していた。

お嬢様曰く、

「悪い道具を使うから、引き時も早まって力を付ける機会も減るのですわ。

いずれ段階を上げて良い道具に代えていくというのなら、

最初からしっかりと良い道具を持っていればその分引き際までが遠くなりますから、

1回の探索で多くのモンスターを倒せて、

経験だけでなく、モンスターを倒すこと自体による自己の能力向上効果(レベルアップ)も合わさって、

道具だけでなく肉体性能も良くなるでしょう?

技量や経験なんて積むのはそれからでも遅くありませんわ。」

確かに正論だ、お金持ちにしか言えないが。

そんなお嬢様と僕のコンビの戦歴は決して悪くは無かった。

ただ、その戦歴に反して一向にDランクに合格しない僕は色々とお小言を多方面から貰った。







気が付けば実践している間に喋り方も少し農民っぽく無くなってしまった。

そんな試験合格してから暫く経ってのちょっとした従者見習い生活を生きて…。


「明日はわたくしの誕生日なの。」


「あ、はい。おめでとうございます、お嬢様。」



「ゼットはわたくしの誕生日を祝ってくれるのね。」


「まあ、従者ですから。」



「それもそうですわね。

世間は明日は女神様誕生祭と浮かれてばかり。

ガレクスも何時もそちらばかりに気が言っていたわ。」

お嬢様相変わらずガレクスさん好きですね。


年が変わる月の25日。

クリアリプルスでは、女神様が地上に降り立ったのがちょうど明日だと言われている。

誰がそれを見たのかわからない。

まあ伝説なんていうものは大体そういうものだろう。


「ところでDランク試験の発表結果は昨日でしたわね。

結果はどうでしたの?」


「落ちました。お嬢様の従者辞めます。」



「あなたいつもそればっかりですわね。」


「口癖みたいなものです、気にしないで下さい。」



「『お嬢様の従者辞めます』が口癖の従者なんて破綻してないかしら?」


「まあ、それにDランクに為ったら、年会費が掛かりますから。」



「どうせお金を払うのはヤバッカ家ですわよ?」


「それでもです。」



お嬢様は意外と軽口にも乗れるようで、

意外にもテンポがいい会話ができる。

でも、そんな軽やかなテンポはあっさりと止まってしまった。

「…そうなったらいつか従者を辞めて元の生活に戻れなくなるから、かしら?」


「……気が付いてました?」



「気が付くも何もあなた解かりやすいですわよ。」


「……。」

そこまであからさまにしてきたつもりは無かったんだけどね。

一見性格の悪くて親の権力を笠に着る小物悪役令嬢のようなお嬢様は、

実際にも性格の悪くて親の権力を笠に着る小物悪役令嬢のようなお嬢様で、

やり方は間違っては無いことが多いけど、やられた側には酷く厭らしい。



「…昔話をしてもいいかしら?」


いいですよ、どうせ僕には拒否権なんてありませんし、

そんな戯言を言おうとして、僕はそれを飲みこんだ。

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