アクターズ「第十六輪」-狂信者-
この物語はフィクションです。日本国内では未成年の喫煙行為は、法律で禁じられています。ですが、日本が崩壊してしまった社会なので、各地で法があったりしますが、基本的には誰が喫煙しても良いという背景がこの作品にはある為、描写はその様になっております。
アクターズ「第十六輪」-狂信者-
村が何やら騒がしい。メビウスと調葉師の少女は眠たい目をこすりながら話し合う。
「この様子だと、何かあったみたいね。」
「むにゃむにゃ...なんの騒ぎでしょうか...」
メビウスはこんな事態だというのに眠そうだ。
「バカメビウス!!!起きなさい!北の国は内乱中って聞いたでしょう!?油断してちゃダメよ!」
「はっ...!そうだった...今一体何が起こっているんでしょうか...?」
「多分だけど、何か乱闘騒ぎが起こっているんじゃないかしら。早く準備して広場に出るのよ!」
「わかりました。しかしこの村は安全なように見えたのに」
「さっさと行くわよ!」
そうして2階の階段を2人は駆け降りる。だんだん騒ぎは大きくなっているように音からわかる。
「自警団がやられたぞ!!」
「くそ...自警団はこれでも喫演者が混じっているんだぞ...!一体何でこんなことに...!」
村人たちは大騒ぎだ。メビウス達はそこで、血まみれになった自警団の隊員達が担架で療養所に担ぎ込まれるのを目にした。皆酷い怪我だ。うめき声が聞こえる。
「これは一体何があったんですか!?」
メビウスは村人に問う。
「分からない...しかし、襲撃があったことは確かだ。この所平穏だったのに...なぜ」
「襲撃ですか?」
「ああ。タバコ葉栽培村はその特性からか、襲撃を受けやすい。だから自警団がいる。しかし、その自警団さえこてんぱんだ。」
「そんな...そうだ、僕も喫演者なんです!何かできることは...」
「分からない...この状況では...」
話していると、タバコ畑から大きな爆発音が聞こえた。メビウスと調葉師の少女はそちらの方を見る。すると...
タバコ葉畑が囂々と音を立てて燃えていた。煙がこのくらい夜中だというのに視認できる。
「なんてことをするんだ...」
メビウスは拳をギュッと握りしめる。
「抑えなさい、メビウス。敵はどこにいるかわからない。理性を働かせて、まずは身の安全を考えなさい。」
「でも...親切にしてもらった人々がこんな目に遭って...僕は我慢できそうにありません...!」
調葉師の少女はメビウスを宥める。
「まだ何が起こっているのかも正確に分からない。あなたは北の国を救うって言ったんでしょう?なら、まずは事態を静観しなさい。あなたがここで死んでは、何の役にも立たずにおしまいよ」
「そうだった...抑えないと...。タバコ葉畑の方に向かってみましょう。何かわかるかもしれない」
「ええ。」
そう言って2人は村の中心から少し離れたタバコ葉畑向かって進んだ。すると、メラメラと燃える畑で倒れている人が何人もいる。
「大丈夫ですか!...息がない」
「この煙にやられて、死んでしまったようね。諦めましょう。」
「そんな...でも...」
「あなたは死体をその目で見たんでしょう!?だったら、自分達が生きることをまずは考えなさい。情をかけるのは、死んでからになさい」
「...」
そうして2人は燃え盛るタバコ葉畑を観察していた。火元がどこか分からなければ、どうしようもない。
すると、近くから大きな高笑いが聞こえた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!タバコ葉が燃える!!!ネオニコチンが吸える!!!神とも近くなる!!!」
騒ぎ立てる男が1人いた。タバコ葉畑の燃え盛る中心で。
「誰だ、お前らは。」
2人は見つかってしまった。身を隠そうにも、茂っていたタバコ葉畑はすでに灰と火に化してしまっていた。
「お前らが誰かは知らねえけど」
「北の国...いや、『大東北神国』の儀式を、邪魔させるわけにはいかねえなあ...」
「出てこい...俺は、『副流演者』のラクダのキャメル。ここに来てるっこたあ、余程のバカか喫演者なんだろ?」
メビウスと2人は姿を現した。もはや燃え盛るタバコ葉の影に隠れるにも限界だった。
「僕が喫演者だ。お前、この村になんて酷いことを...許せない。」
「お前か!待っていたぞ...!『儀式』は最中だ、お前も煙と死んでいった『焚き木』の魂、存分に吸っていけ!」
「もっとも」
「お前もここで焚き木になるんだがなあ!」
そう言って、キャメルはメビウス向かって襲いかかってきた。
キャメルの一撃を交わしたと思ったメビウス。しかし、キャメルの煙技はうねったように見えると、メビウスに向かって再度攻撃を当てに来る。
「ぐああ...!」
攻撃をくらいメビウスは吹っ飛ぶ。そして、キャメルの追撃が続く。うねった煙技に死角はない。メビウスも煙の壁を作り応戦するが、壁を迂回して煙はメビウスに攻撃を仕掛けてくる。
「くっ...煙が何度も何度もうねってこっちへやってくる...煙壁でも防げない...!」
「あひゃひゃひゃひゃ!!!そうさ俺は『ふたこぶ』のキャメルさ、煙技もうねるんだよ!時代のうねり、思い切り味わいやがれ!」
「メビウス!煙の動きをよく見るのよ!うねるタイミングを見計らってよけるの!」
メビウスは燃え盛るタバコ葉畑の灯りの中必死に目を凝らす。煙技がこちらに向かってきては、こちらの動きを見てからうねらせるのに気がついた。
「見切ってしまえば、大したことない!」
メビウスにキャメルの放つ煙撃は当たらなくなった。この旅で鍛えた実力か、メビウスは煙撃をとっさに避けれるようになっていたのである。
「ほう!『ふたこぶ』の煙技、かわすとは大したものじゃねえかあ!!!なら、これはどうだ!!!」
すると、キャメルはタバコを力強く吸い、何やら拳のような形をした煙を思い切りメビウスの方へ放った。
「煙技!」
すぐに煙の壁を放ち身を守ろうとした。しかし、煙の拳はその壁を破り四散させ、やがて直撃した。
「うわああああ!!!」
メビウスはまたも吹き飛ばされてしまった。調葉師の少女も今度は、指示を出すことができないでいた。
「あひゃひゃひゃひゃ!!!『ふたこぶ』の力、思い知ったかあ!!!腕の2つの力瘤も、今日は騒がしい!!!」
猛攻が続く。かわしてもかわしても威力の高い煙の拳が狙ってくる。やがて、メビウスの一本目のタバコは燃え尽きてしまった。タバコを付け替える暇もなく、煙技が襲ってくる。
「あひゃひゃひゃひゃ!!!お前も焚き木になって『儀式』の供物となれ!!!」
「間一髪、間に合った」
そう言っているのは、自警団の喫演者であった。しかし、すでに血まみれで怪我ばかりしている。
「あなたは...!」
「ハアハア...自分の村を自分で守れないで、何が喫演者だ...。早く兄ちゃん、次のタバコを...」
「『焚き木』がまた増えたぜえ!!!『神様』に捧げるための供物があ!!!」
そういうと再び、キャメルの口から放たれた煙の拳が、自警団の喫演者めがけて飛んできた。
「危ない!!!」
しかし、メビウスは自警団の喫演者を救うのに間に合わなかった。彼は吹き飛び、燃え盛るタバコ葉畑の中に消えていった。そこから、なんとも言えない匂いがした。あの難民村で嗅いだのと同じ匂いが、辺り一体を充満していた。
「燃える...燃えるぞ...!『焚き木』が燃えている!!!『火の鳥』様、もう少しです...もう少しで、『神』の国が到来する!!!」
キャメルは不気味に大声で笑いながら、訳のわからない事を言っていた。メビウスは、痛む体を引き摺りながら、再びキャメルの前に立ち塞がった。
「お前...!自警団の人の死をよくも笑ったな。死は、苦しくてとても辛いものだ。難民村で見てきた...。そんな苦しみを、生み出すお前が僕は許せない!」
「あひゃひゃひゃひゃ!『焚き木』がしけたことを言ってちゃあ、『火の鳥』様もお喜びにならねえ...」
「何を訳のわからない事を!」
メビウスは2本目のタバコに火をつけると、再びキャメルに向かって煙技を出した。今度は輪っかの斬撃である。
「あらよっと!!!」
しかし、キャメルは軽くかわしてしまう。攻撃が全く通用しない。
「煙技!!!」
何度も煙技を当てようとするも、タバコ葉畑の煙で視界が悪い。一向に当たらないままだ。
「何してんだ、『焚き木』は焚き木らしく、さっさと燃されてちまうんだよ!!!」
メビウスに煙の拳がまたも放たれる。今度は煙の壁で和らげる暇もなく、直撃。
「う...煙技が通用しない...なんでなんだ...」
「信仰心の違いだ!!!『火の鳥』様は俺をいつも見守ってくださっている...!この俺にも、目を下さったんだ!!!」
キャメルの煙技は再びメビウス向かって襲いかかってくる。今度はうまくかわせたものの、もう体力が残っていないのを感じる。
「何か...何かあいつに、一撃加えられれば...!」
メビウスは冷静にタバコを吸いながら考えた。相手の煙技は確かに強力で正確だ。しかし、反対に言えば、正確すぎる。この煙の視界不良の中で、ああもこちらを狙い撃ちできるのは、何かがおかしい。もちろん、練度が高いだけの可能性もあるが。
「あひゃひゃひゃひゃ!!!何を考えている!信仰の力はこの中でも決して揺らがないのさ!オラオラオラ!!!」
かわしながら考える。すると、一つ策が思いついた。もちろん、勘でしかない。これでダメなら、おしまいだ。
メビウスは、こちらを狙って飛んでくる煙の拳の中、あえてかわそうとせずにそのまま突っ込んでいった。そして、力の限りの一撃をかました。
「うごおおおおおおお...!!!なんだよ、『焚き木』のくせに、『焚き木』のくせにいいいい!!!」
キャメルは一心不乱になり、メビウス向かって勢いの増した煙技を放つ。しかし、メビウスにはもはや通用しない。これをメビウスは狙っていたのだった。
「お前の信仰心は、かげろうだ。実体がない。所詮は自尊心の埋め合わせに過ぎない。」
「だから、一撃あえて加えにいった。そうすれば、格下だと思っていた相手が急に攻撃してきたのだから、冷静さを保っていられなくなる。」
「何をほざく!!!」
キャメルとの肉弾戦になった。しかし、煙技ばかりに頼るキャメルと、これまで泥臭い修行や旅を重ねてきたメビウスの差は、歴然としていた。メビウスの怒りの拳が、キャメルを貫く。
「うおおおおおお!!!」
「がはっ!!!」
キャメルは思い切り吹っ飛ばされた。そして、その場でぐったりして動かなくなった。
「ハアハア...お前を村まで連れて行く。後は村の人達の裁きを受けるんだ。僕には、人の命を奪うだけの覚悟が、まだないから」
「...そうか」
キャメルが意識を取り戻した。すると、その場で大声を出し話し出した。
「この北の国には、俺と同じ『副流煙者』がまだいる...俺はその中の1人に過ぎない...。さらにだ。お前はやがて、さらにその上の『主流煙者』の方々に、殺される...あひゃひゃひゃひゃ...!」
「『火の鳥』様...俺はしくじってしまった...!ならば、この身を『焚き木』にして、お詫び申し上げます...!あひゃひゃひゃひゃ!!!」
「何を言っているんだ」
すると、キャメルの口から煙が大きく吐き出されたかと思うと、キャメルは燃え盛るタバコ葉畑に突っ込んでいった。
「うごああああああ...見える...!『神』の国が...!見える...!なんて美しい!!!あひゃひゃひゃひゃ...ひゃ...」
そうして、あたりは静かになった。あの難民村での匂いが、またメビウスと調葉師の少女の鼻にこびりついた。
「まさか...自殺するなんて」
「よっぽどの狂信者だったのね...嫌な匂いが鼻からこびりついて離れない。ともかく、終わったのよ、メビウス。」
「だとしても...自分から死んでいくなんて...僕には到底、信じられない。」
「人は、何かすがるものが必要な時があるものよ。メビウスも私も、ネオニコチンタバコがやめられない。そして、あのキャメルとかいうのも、信じることがやめられなかった。そういう意味では、同じなのかもしれないわね」
「僕は...同じじゃない...と思いたい...」
メビウスはそう言いながら、タバコにふと手が行く自分の存在に気がついた。やめられないもの。縋りたい存在。この寒い北の国では、それは一層深くなるのかもしれない。
「メビウス、落ち込む必要はないわ。村を守ったのはあなただから。あいつは自殺したけれど、そのおかげで、何百人もの村人が救われたのだから。」
「そうですけれど、自警団の人を死なせてしまった。今度は、助けられそうだったのに、力が及ばず...僕は...なんて」
「メビウス...」
やがて、夜が明けた。タバコ葉畑の襲撃に関する犠牲者は、計10数名にも及んだ。村では合同葬儀が開かれ、メビウスと調葉師の少女は宿泊所で『特級調葉師』の元へ行くための算段を練っていた。
「これではとても、仕事が欲しいだの言っていられる空気ではなくなってしまったわね。市場は無事営業しているものの、それでも暗い雰囲気が辺りを漂っている。」
「どうしたものか...自警団が足りなくなったからと言って、外出中に僕にアルバイトの仕事が来たんです。でも、一日の賃金は10000園。防寒着を買うには、後何日滞在しなければならないんだろう。こうしている間にも、たくさんの北の国からの難民が苦しんでいるというのに...」
2人は悩みながら、村を歩いていた。すると、服の仕立て屋らしき家の前を通りかかった。防寒着の仕立ては、1着50000園と書いてあった。
「高いなあ...宿泊費や食費も考えると、後何日かかることやら...」
「しょうがないわ。私も仕事を探してみる。そうすれば、少しは早く『特級調葉師』のいる所を探しに山へ行けるかもしれないから。」
そうすると、中から店主らしき年老いた女性が出てきた。
「あなた達が例の騒ぎを鎮火した2人か。なんてぼろぼろな格好をしてるの?それじゃあ、英雄には似つかわしくないんじゃない」
「今からこの地に適した立派な服を縫うわよ。有り金全部、置いて行きなさい。さもないと...」
「この針でチクっとするわよ...!ふひひ...」
「なんでしょう、このお婆さんは」
「私もわからないわ。でも、今持ってる30000園で服を縫ってくれるんじゃ、意外といいかもしれないわ。ちょっと待ってて」
「あの、お婆さん」
「なんだい、こっちは布や糸の準備で忙しいのよ!」
「実は、あの山に登りたくて」
「防寒着が欲しいんです」
「言われなくたって、縫ってあげるよ。何せ旅の人だろう?服装ですぐわかった。安心して、3000mある山だって暖かい服を拵えてあげるから。」
「ありがとうございます...でもいいんでしょうか?」
「服のほつれ目が、運の切れ目さ」
「それよりもあなた、調葉師でしょう。胸元のポケットから覗くハサミ、それ用だ。私もタバコが好きでね、もう40年以上吸っている。私にもタバコをまいとくれよ」
「ええ、それでしたら是非」
「お兄ちゃんも家に入んなさい。暖かいよ」
そうして、奇妙な裁縫家と出会った2人は、防寒着をこしらえてもらうことになった。この後2人を待つ運命とは...?
このお話を読んでいただきありがとうございます。喫煙者なものでしてタバコの銘柄の違いとか煙の技とかで戦う世界があったら面白そう!と思ってこの作品を描き続けています。
文章が読みにくい、こうすると面白くなる、などのご意見などございましたら是非よろしくお願いいたします。




