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アクターズ-煙と心の炎で「煙技」する、喫演者達の物語-  作者: せんぶり


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アクターズ「第十二輪」-冷たい現実、燃える心の炎-

この物語はフィクションです。日本国内では未成年の喫煙行為は、法律で禁じられています。ですが、日本が崩壊してしまった社会なので、各地で法があったりしますが、基本的には誰が喫煙しても良いという背景がこの作品にはある為、描写はその様になっております。

アクターズ「第十二輪」


 さらに道を外れ、集落を訪ね、時には雨宿りを廃墟でしたして進んでいるうちに、5日ほど経過していた。

「一応、この難民村についたとしても、あと15日ほどあれば北の国の国境が見えてくるはずです。慌てずゆっくり行きましょう」

「そうね」

2人はそうして昼間の間ずっと歩き続けてきた。だんだん日が暮れて、辺りが暗くなってくると、自分たちが進もうとする先の方に松明の様な炎があるのがわかった。

「もしかして...あれがあの難民村」

「松明の数も少ないし、規模も小さい。そうかもしれないわ。メビウス、タバコをちゃんと準備しておく事。70%の力が出せる調葉がだれたタバコが3本。100%のが1本。もしもの際、使いなさい。油断しない事」

「わかりました」

そう言って、2人は村の方へと向かっていく。すると、2人の門番が出てきた。

「もしかして、あなた方も難民の方ですか?」

「いえ、僕たちは旅のものです。物資の調達や情報が欲しくてこの村を訪れたのですが。」

「村に入る事自体は問題ありません。それにお兄さんは喫演者の様に見える。申し訳ないのですが、難民の流入が激しく、自分で自分の身を守っていただく事しかできないのですが、それでも構いませんか?」

「はい、大丈夫です。お通しいただいてありがとうございます。」

「ご無事を祈ります」

門番にそう言われながら村の中に入って行った。すると、すぐにその異様さに気がついた。「この村、なんだかすえた様な匂いがするわ。それに見て...あそこの人...私には、死んでる様にしか見えない。」

「ここで難民たちが力無く倒れて行った。そしてこの街中に据えた匂いがするのは...」

そう言っていると、2人に物乞いたちが集まってきた。新しい靴を履いていたからか、金を持っているのだと判断したのだろう。

「そこのお二人さん、どうかお恵みを...」

「私の子供はもう3日も何も食べていないんです!このままでは、このままではうちの子は...うわあああん」

「お母さん、ねえお母さん、寝てるの?なんで起きないのー!もう知らない!...うっうっうわあああん」

2人は感じた。ここは、地獄であると。

そうして2人が狼狽していると、道沿いにあった建築物から男が呼びかけてきた。

「おーい若いの、こっちだ、この家の中に入れ!」

2人は手を難民から引かれて動けなかったが、なんとか家に辿り着き匿ってもらう事にした。

「しかし、大変な時に来たな。今北から難民がたくさんきてて、村中はパニック状態だ。」

「見ての通りでした...しかし...惨すぎる」

「村の議会も、難民受け入れに最初は肯定的だったんだ。だが、その人数にはきちんと制限をつけるというので議会はまとまった、までは良いんだが...」

「ここいらの議会反対派の連中が、こっそりと、あるいは事件を起こして、近くにある沢山の村や集落に難民を強制的に通してしまったんだ。」

「入った難民の中身は、力なく食事やゼニを求める力無い弱者。それで、追い出すのはその...人としてなんだか、いけないのではないかという雰囲気が村民たちに充満していた。」

「しかし、この収穫を待たねばならない時期にこうも難民が押し寄せては、お互い倒れてしまう。どうにか、ならないのだろうか。」

そう言い終えると、男は酒をグラスから飲んだ。だいぶ酔っている様に見えるが、会話は理路整然としていた。この現状を、強く憂いているのだろう。

「そういえば、お兄さんは一体、何の職業をされているのですか...?家も質素ではありますが、清潔感がある良い部屋ですし...」

「実は、私はこの沢山ある集落の評議会議員をしているんだよ。だから、だいぶ豊かな生活をさせてもらっている。」

「私だって心は痛むさ...しかし、この『以後』の時代、私財を投げ打って人々を救おうと思えるものはいなかった。それがこの惨状を招いた。私だって、その1人だ。」

議員の男の顔は煩悶としていた。メビウスはしかし、彼のことを、そして村民たちのことを決してクズや、弱者を見捨てた存在だとは思わなかった。

「僕も」

「僕も昔、ネオニコチンタバコ依存で、親の薬代をとっておく事ができず...母はそれが原因か、亡くなりました。」

「僕だって、人を見捨てた最低の人間です。だから、ここにいる市民の方も、議員さんの選択も、難民の人たちも、誰も責める事は...僕にはできません。」

「そうだね。誰だって完璧ではない。誰かを救えないことなんて、『以後』の時代はザラだった。しかし、今もしかしたら自分の力で救えるものを、『欲』に負けて救えない。それが1番、私には、辛いんだ」

「なんとかならないんでしょうか?」

「議会の方では、強制送還する事に決まりかけている。一部では人々を守るべきだという層もいますが、もはや...」

「何もできないんですね...」

「...すまない」

3人の間に、気まずい沈黙が流れた。何もできない自分の無力さを久々にメビウスは強く味わった気がした。このボロボロになった拳で、大岩を壊し、大木を倒し、人に認められてきたこの拳が、なんの役にも立たないなんて...

「僕は...僕は...なんて弱くて、情けない」

「メビウス...堪えるのよ...あくまでも、私たちはここで情報収集できればってだけでここにきたの。こんなに沢山の人々の苦しみを、あなたが肩代わりしようなんて、思ってはいけない!だからね...メビウス。」

「はい...グスッグス...」

「今日はこの家で休んで行きなさい。2階に部屋があるから。私はもう少し、酒を飲んでいたい。」

そうして涙するメビウスを支えながら、調葉師は2階への階段を登ると、床に着いたのだった。

その晩中、難民たちの物を乞う細く悲壮感に溢れた声が村中にこだましていた。メビウスは枕で耳を思わず塞いでしまった。その難民を追い払う民衆の怒れる声もメビウスの眠りを邪魔してしょうがなかった。

メビウスはその日、全く眠る事ができなかったのだった。


「おはようございます...」

眠たげなメビウス。目元にはクマができていた。

「おはようございます」

そういう調葉師は、よく眠れたようであった。

「調葉師さん、どうして眠れたんですか...あんな恐ろしい声が響き渡っていたのに。僕なんか、あまりにも恐ろしいのと情けないので自分の心がぐちゃぐちゃになってしまって」

「単純な話。『慣れ』よ。いろいろな地方を巡り歩いてきたから、こんな夜も幾夜明かしたことかしら。おかげで、こうなった」

「昨日泊めてくださった議員さんから、私たちにお話があるそうよ。聞きに行きましょう?」

「は、はい」

眠たい頭をこすりながら、メビウスは一階におりた。議員はテーブルと椅子を用意して待っていた。

「おはよう、2人とも。昨日は...眠れなかっただろうね。すまない。」

「い、いえそんなことは...!」

「遠慮はいらないよ。それはみんな同じなのだから。さて、本題なんだが、君たちは北の国についてはすでに知っているね?」

「はい」

「では、北の国で、『内乱』が起こっている事は、知っているかね。」

「内乱...ですか...知りませんでしたが、難民が押し寄せているということはそうなんでしょうね」

「ああ。この内乱だが、北の国での分裂した宗教団体が三つの派閥を作り、争っている事が原因とされている。その争いから逃れてきた者たちが、今こうして難民として押し寄せてきているというわけだ。」

「はい...」

「実は、君が『不死山麓村』で村長の試練に合格したという話が早馬で届いてね。書類には合格者の特徴が書いてあって、それで君たちを早く救助できたわけなんだ。」

「なるほど...あの混乱の中早く僕らが助かったのはそのおかげ...村長さん、議員さん、ありがとうございます...!」

「これが本題ではないんだよ。話には続きがある。私はここら一帯の村集落の評議会議員であることは以前話した。それで、実はあの時君たちを試練したのは、3つの理由があった新たな被害者を産み、村間の軋轢を増やさないこと。その為に旅行を超えられるか『喫演者』試験を、試練という形でさりげなく実施すること。最後に、その合格者を北の国問題解決の手段として利用できないか、ということ。つまりだ、私たちは君たちを利用していた部分があったんだよ。村長はピースマンの話をしただろう。あれは本当だ。だが、その他にも、この問題を解決できそうな有望な者には、資金援助をする、ということも裏にはあったんだ。わかってほしい。」

「そうだったんですね...正直、驚きました。でも、僕は恨んでなんて、いませんよ。だって、村長さんのおかげで強くなれました。調葉師さんにも少しだけ信用してもらえる様になりました。何より村を抜けた後、僕は世界をこの目で見るだけでなく、世界の状態を知りたいと試練を通して思える様になったんです。恨みなんて、全くありません。」

そういうメビウスの目は、情熱に燃えていた。

「そうだったのか...汚い大人たちの都合で、君たちを利用する事になってすまない...。許してくれ。いや、許されることではないか...」

「良いんです。とにかく、僕たちは北の国へ行きます。そして、一つ決めた事があります。」

「なんだね、それは」

「僕は...この内乱を鎮圧する手伝いをしたいと考えています。」

「しかし、君は確かに喫演者だがまだ若い、失礼だが、実力差は歴然であると考えられる。何せ、北の国には3人のとても強い喫演者が存在しているのだから。」

「とても強いって...それってピースマンさんよりも、強かったり...?」

「詳しいことはわからない。だが、とても強いのは確実だ。ピースマンでさえ、もしかしたら...何せ彼は...嫌、何もない。忘れてくれ。」

メビウスは動悸がしていた。あの、東の国最強の喫演者だったピースマンでさえ、下してしまう喫演者が、しかも3人...!?とても今の状態では、叶うわけがないだろう。無謀だ。

「僕は...あの惨状を見て、早く内乱を終わらせたいと思いました。でも、それは誤りだった。しかし...強くなりたいんです。苦しむ人たちを見て、手を差し伸べられる様な勇気を、僕は持ちたいんです。何か方法はありませんか。」

そういうと、調葉師の少女は話し始めた。

「私が前に北の国に行きたいと言っていた理由なのだけど、それは、あるタバコの品種が目当てなの。そしてそれを使いこなせば、勝てはしなくとも手負いには出来るかもしれない、能力を発揮することも不可能ではないわ」

「そんな事が...できるんですか。」

「今のままでは、不可能。なぜなら、私はまだ『2級調葉師』だから。この葉は「1級調葉師」以上でないと使いこなせないから。もし使えば...だから、私は今、北の国のある地域に住んでいるとされている「特級調葉師」より、昇級試験を受ける事ができる事を考えて、まずその人を探すべきではないかと考えるのだけど、どうかしら。」

「わかりました。それに賭けましょう。そして何より、苦しむ人々を早く救わなければ」

「君たち...人々の為、そこまで...」

そういうと、議員は頭を深々と下げてお辞儀し涙をこぼしながらこう言った。

「村一帯の苦しむ全ての人々を、どうか、よろしくお願いいたします!!!」

「こういう時はこうでしょ、メビウス」

小声でメビウスの耳元に呟く。

「はい。必ず皆を助けます!」

「ありがとう...ありがとう...」

そう言って議員は何度も何度も感謝の念を述べた。

こうしてメビウスは幾らかの金銭を旅路に使う様にと言われ、受け取った。

そして、見送られて家を出ようとすると、目の前の木に何やらかたまりがあるのに気がついた。

「あれはなんでしょうか?」

調葉師が咄嗟に口を挟んだ。

「見ちゃダメ。」

「でも、気になるから...」

「ダメ!!!」

メビウスは近づいていって止めるのも効かずにそのかたまりを見た。

「う、うぷ...おえええええ...!!!」

メビウスは嘔吐してしまった。それはあまりにも、あまりにも惨たらしい、「かつて人であった何か」だった。

「カニバリズム、だね。」

議員は言う。

「これからも、それは村を出ても、旅路でもきっといつか、これは見ないわけにはいかない物なんだ。昔も、よくあった。」

「メビウス君。じっくり見なさい。人の歯形が残っている。血が固まって色が変わっている。体は硬くて動かない。人を待つのは、『死』なんだよ。これを、君の目でしっかり見て、忘れないでいてほしい。それが君の、心の火種になることを僕は、信じている。」

2人は、ただ、遺体を眺めていた。これから続く旅路の凄まじさを、ありありと象徴する、明確な『死』が、そこに屹立していた。

「回収する業者は呼ばないんだ。まだ、食べかけだろうからね...衛生面の問題もあるが、彼らを飢えさせる事もまた、罪であるから。」

「嫌な物を見せてしまったね。」

「君たちはもう北の国へ向かいなさい。物資は難民のいない通りで揃えなさい。その際は先ほど渡した金を使ってくれ。十分に足りるはずだ。私は仕事があるので、失敬する。」

「そして...ありがとう。では」

そう言って議員は自宅に戻っていった。

2人は暗い気持ちで物資を揃えると、先ほどの遺体の前に戻ってきた。

「包めるだけの布は、買ったわね。シャベルも買った。行きましょう、メビウス。」

「はい」

そういうと村を出る前に、森が近くにあったので、地面を掘ると、遺体を布で包んで運び、埋葬した。

「『線香』という文化が『日本時代』にはあったんだって。煙が登るでしょう。それが、あの世へ向かう道標になるって。」

「母から聞きました。調葉師さん、煙が1番出る葉で、タバコを巻いてくれませんか。」

「言われなくても」

そういうと、ささっとタバコを巻き、メビウスは受け取ると火をつけ、埋めた後の土に備えた。

「誰かもわからない、どこかの誰かさん。救えなくて、申し訳ありませんでした。きっと無念でしょう。これから僕たちは、北の国に向かって、あなたの様な人がもう出ない様内乱を解決しに向かいます。どうかあの世で、安らかに。」

葬儀を終えると、森から出たメビウス。煙がもくもくと木々の間から登っていくのが見えた。これからの旅は、決して簡単な物ではない。

「必ず生きて帰りましょう」

「もちろんよ、メビウス」

2人は、北の国へ向かって再び歩き始めた。

このお話を読んでいただきありがとうございます。喫煙者なものでしてタバコの銘柄の違いとか煙の技とかで戦う世界があったら面白そう!と思ってこの作品を描き続けています。

文章が読みにくい、こうすると面白くなる、などのご意見などございましたら是非よろしくお願いいたします。

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