アクターズ「第十一輪」-別れと発見-
アクターズ「第十一輪」
村長の課した試練から一日が経った。メビウスと調葉師の少女は、宿泊所で休息を取ると、北の国に向かう為村で買い出しをするべく、市場へと向かった。市場は賑やかで、小規模ではあるが質の良い食料や資材が販売されていた。
「はい、ネオニコチンタバコ葉と巻き紙、計40000園。それと、これはサービス。ライターのオイルも持っていきな。北の国は寒いから、これで焚き木を燃やして暖を取ると良いよ。」
屋台の中年男性はそう言って笑顔で、オイルをサービスでつけてくれた。
「わざわざこんな貴重なオイルを...本当にこの村の人にはお世話になりました。ありがとうございます」
「なあに、村長さんに認められた御一行だ、これくらいは先行投資だよ」
「気をつけて行きなよ!」
元気な声で送り出される2人。そして、最後に村長に挨拶をしてから、村を出る事にした。
「おじゃまします」
「おお、2人か、なんの用だい?」
「実は、今日この村を出る事にしました。なんだか、こんなにもてなしていただいて、感謝しかありません。でも、そのご厚意に甘えるのは悪い気がしまして、それで」
「そんな事、言わなくていいんだよ」
村長は優しげにいう。
「こちらも新しい希望の芽が見れて、本当に良かった。懐かしい気持ちがした。もう少しゆっくりしていってほしいが、引き留めはしない。」
「はい」
「それから、北の国についてだが」
そういうと村長は、地図をテーブルに広げて話し出した。
「『日本時代』のものだから、今じゃあてになるかわからないけれども、これから進むべきところを伝えておくよ。まずはここ、大きな山がこの村のあるところだ。そしてここから北に歩いて大体20日もすれば、北の国の領域に入る」
「その際、この道を通って厳しい山を避けながら行けば、一ヶ月はかかるが、比較的楽に行けるだろう。地形も良くて集落もあちこちにあるから、そこで買い出しもできるだろう。」
「貴重な情報をありがとうございます。そうする事にします。」
「うん、それが良い。ただ、やはり気がかりなことがあるんだ。」
そういうと、村長は真剣な面持ちになって語り続けた。
「最近、北の国から逃れてきた難民がこの道に溢れているという。理由は戦争からの非難や悪政、他にもあるだろう。くれぐれも、身の回りには注意するんだ。いいね。」
「わかりました。でも今の彼なら、大丈夫だと思います。」
調葉師の少女は少し微笑んで、そう言った。
「それは安心だ。では、もう伝えることは伝え終わった事だし、君たちももう出発するのかい?」
「ええ、そうします」
「村の出口まで家内まで送るよ。」
そう言って、2人と村長夫妻は村の出口までやってきた。すると、ちらほらと村人もついてきたのだった。
「それでは、お別れだね。北の国を見終わったら、またこの村に来なさい。それで旅の疲れをゆっくり癒していくんだよ。」
「本当にありがとうございました。では、これで失礼します」
「頑張れよ!若いお二人さん!」
「気をつけて行きなよ、ピースマンさんによろしくね」
「さようなら!」
そうして、2人は再び北の国へ向かい歩みを進めた。新しく買った靴のおかげで、少し歩きやすく、快適に歩くことができる様になった。それから歩き始めて10日が経った。
2人は平野地帯にいた。村長から教えてもらった地図上では、ここは都市部であると書かれていたのだが...。
「やっぱり、核戦争が全てを破壊してしまったのね。ガレキも風化して、道の名残りの様なものは雑草で覆われてしまっている」
「これが、戦争の跡地か」
メビウスは初めて、「道路」の跡を見た。昔死んだ母に、ここの上を「車」という機械に乗って大勢が往来していたという話を聞いていたメビウスは、それを実際の目で見れて、本当に良かったと感じた。燻って故郷で死ぬよりも旅に出て、こうして世界のあり方を見ることができた事が嬉しかったからだ。
「母から聞いた事があります。昔はこの『道路』の上を、ものすごい速度で『車』という機械が走っていたんだって。でも、危ないだろうなあ...」
「こうやってその道を楽々進めるというのは、皮肉なものね。昔はここも、大きな集落だったのかしら。」
まだ見た事のない世界は、ずっとたくさん広がっている。そして、もう見る事のできない世界もたくさん広がっていた。
「僕は、やっぱり自分のこの目で世界を見てまわりたい。こうして、失われてしまったら、もう見れない世界があるだろうから。そして同時に、目で見ることができなかった世界についても知りたい。」
「新たな目標ができたようね」
調葉師の少女は微笑む。
「僕は、世界を知りたいって思う様になりました」
「そして、北の国が今どうなっているかも」
「覚悟が決まったみたいね」
「はい」
そうして2人は、その地を後にしようとすると廃墟の壁面にボロボロの紙貼られているのを見た。
「何か書いてあるわね」
「僕は『以前』世代なので、文字はあんまり読めませんが...読めるところを読んでみます。」
するとそこには、何やら書いてある様だ。
「この...先?に、なんみん...のつど...うまちが...これ以上は読めないや。」
「風化も激しいし、これ以上は私も無理そう。それにしても、もしこの紙が言う様な方向へ言ったら、村長さんの約束は違えてしまうけれど、良い情報が得られるんじゃない?」
「確かに...その時もしものことがあれば、調葉、よろしくお願いします」
「まかせて」
こうして2人は本来なかった計画ではあったものの、その紙が指し示す方へ行って見ると言うことにした。メビウスは少し不安だったが、知りたいという好奇心は抑えられない。
2人はそっちの方向目指して、歩みを続ける事にした。




