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アクターズ-煙と心の炎で「煙技」する、喫演者達の物語-  作者: せんぶり


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アクターズ「第十輪」-希望のわかば-

このお話はフィクションです。未成年者の喫煙は日本の法律では禁じられています。この世界では別にそんなことないんですが。

アクターズ「第十輪」


そうしてついに、村長が提示した試練当日。場所はメビウスたちが修行していた場所が選ばれた。村からも少し距離があり、戦いの被害が影響しない事などが理由だった。

「では、メビウス君。そろそろ始めても良いかな?」

「はい。もう思い残す事はありません。」

「いい返事だ。では、『喫演者』を紹介しようか」

しかし、辺りには誰も調葉師の少女を除いていない。

「あの、その方は一体どこに」

「どこにいると思うかい」

「えっと...森の中...?ですかね」

「それはだね」

そういうと、村長はタバコをポケットから取り出すと、強く吸い、メビウス目掛けて襲いかかってきた。

「うわっ!」

メビウスは思わず攻撃をガードする。

「いい反応だね、まずは及第点だ」

「まさか...『喫演者』って」

「そうだよ、メビウス君。僕がその試練を担当する『喫煙者』だ」

「こう言う場合に即座に対応できたのはよかった。だが、試練はこれからが本番だよ。君の力を存分に見せてくれ!」

メビウスも覚悟を決めた。タバコを咥え火をつけると、力強く吸い、戦闘体制に入った。ネオニコチンが体の中に満たされていくのを感じる...。

「体力は大切だ!長旅には勿論、力は揉め事を起こさないための抑止力にもつながる!」

メビウスは力を増強するクラトス葉の効果か、意外にも互角の戦いを見せていた。攻撃を受け止める力、攻撃を繰り出す力。いつも市場で買って吸っていたタバコとは違う、メリハリの効いた身体能力の向上を実感しながら、格闘戦が続いた。

「そうだ、メビウス君!力は申し分ないよ!これでも一応村の治安維持もやってきた身だ、これまで戦った事のある野盗達よりも強いかもしれないよ!」

しかし、2分もすると徐々に力が発揮できなくなってきたのを感じてきた。最初は互角に見えた戦いも、徐々に形勢が変わり、防戦一方になりつつあった。

「やっぱり訓練期間が短かったか...でも、やれるだけのことはやったんだ!」

メビウスは自分の手で涙を拭ったあの夜を思い出していた。あざや、生傷が癒えない手で拭った涙が、きつく染みた。しかし、その痛みは自分がどれだけ努力をしたかの証明でもあった。

「僕は負けない...!絶対北の国に行ってやるんだ!」

メビウスも負けじと拳を繰り出し、キックをかかんに命中させようと守勢になりながらも必死に戦っている。それを調葉師の少女は真剣な眼差しで見つめている。

「一撃一撃に重さが出ている。村長さんも中々のやり手だけど、通っていないわけじゃない。勝機は、まだ残されているわね」

「打ち合いだけでは勝負がつきそうにないね。では、試練も次のステップに移ろう。僕も『煙技』を使う。君がそれをどう対処していくか見ようじゃないか。」

そういうとメビウスから一旦距離を取った村長は、中程まで吸ったタバコの煙を吸い込み、丸い塊の様な煙を高速で吐き出した。その煙は、メビウスの方へ向かっていくと、やがて上昇気流に乗って上へと伸び、体を突き刺すかの様にしてぶつかった。

「うっ、痛い...!なんだこの『煙技』は...」

「そういえばまだ紹介していなかったね。私の銘柄は『わかば』だ。老人なのに、『わかば』というのはちょっと面白いだろう。それで、こんな感じで煙を植物の様に操る事ができる『煙技』ができるというわけさ。」

「まだ僕の知らない銘柄が沢山あるな...」

「そうだよメビウス君、世界は広い。そして、銘柄たくさんあるのさ。長く話しすぎたね。」

そういうと、メビウス目掛けて何度もタネのような煙が弾丸の様にして飛んでくる。タネが直撃しただけでも威力は十分だが、問題はその後植物の様に立ち昇ってくる煙。体に突き刺さらんばかりの勢いで体の至る箇所にあたり、メビウスはかなりのダメージを受けてしまった。

「植物の様な煙...植物...」

メビウスは考えていた。そこで修行中にした訓練の、細い木を輪っかの『煙技』で切り倒すことを思い出した。

「村長さん...村の整備を怠ってませんか...?」

「なんのことだね」

「煙技...!」

そういうと、メビウスは輪っか状の煙を出すと、自分目掛けて襲いかかってくる植物の様な煙の塊を切り、見事に無力化することに成功したのだった。

「ハアハア...草むしりも楽じゃないですね。村長さんもお疲れ様です」

「お仕事ご苦労様。だいぶ綺麗になったね。」

「だけど、草むしりだけが村長の仕事じゃないよ。」

そういうと、また村長は丸い塊の濃度の高い煙を足元向かって吐き出した。そしてやはり煙が枝状になってメビウスに襲い掛かろうとする。

「まだまだ...!」

メビウスは輪っかを出して煙の枝を刈り取ろうとする。すると、煙の枝が一瞬うねった様に見えた。そして、輪っか状の煙は軌道がそれ、少し飛んだ後消えてしまった。

「何が起こってるんだ...」

すると、うねった様に見えた枝状の煙は、メビウス目掛けて何度も螺旋状に回転すると、メビウスの体に絡みつき始めた。

「う...動けない...」

「建物につたが絡みつくと厄介なんだ。強い力で絡みついているし、何度も何度も生えてきて大変。さて、メビウス君、つたはどんどん増えていくよ?」

ぽっぽっぽと口元からタネの煙が吐かれる。足元から立ち上るつた状の煙は徐々にメビウスの全身を覆う様にして絡みついてくる。

「輪っかで切らなきゃ...!」

メビウスは輪っかを必死に出して、次々絡みついてくる煙のつたを切ろうとする。いくつかは切れるが、しかし追いつかない。そしてついに、身動きが取れなくなってしまったメビウスに最大の危機が降りかかる。

「タバコが...もうない...」

「煙技」の出し過ぎで、ペースを乱されてしまったメビウスのタバコは、ついに尽きてしまったのである。何より体を動かせない状況であるメビウスは、ポケットからタバコを取り出して火をつけることさえできないのである。

「さて」

「ここで、調葉師のお嬢さんの試練の番だね」

そういうと、村長は持ってきた鞄の中から、箱を取り出すと、調葉師の少女に向けて歩いて行った。そして、そこで箱を開けると、中にはタバコ葉がたっぷりと入っていた。

「お嬢さんにはこれから、彼をこの状況から救うことができるタバコを一本巻いてもらうよ。この中には様々なタバコ葉が入っている。力や煙を増強できるものもあれば、何の変哲もない品種も混ざっている。1分あげよう。1分で、この中から今の彼の状況を打開する一本を巻き、彼が勝てば両方試練合格だ。どうだい。」

調葉師の少女は2級調葉師試験の内容で似た様な出実技試験が出たことを思い出した。しかし、その際は5分で良かった。しかも、葉の種類も少なかった。ここでもしミスをしてしまえば、メビウスも、自分も...そんな不安がよぎった。

「ちょっと待ってくれますか。箱の中身はまだみませんから。」

「いいよ。」

許可を得た少女は煙のつたに絡まれているメビウスに向かって大声で話しかけた。

「メビウス!!!ここで私がミスしても、あなたがドジしてもおしまい!だから、私は作戦を変えることにした!私だって手いっぱいなんだから、あなたも覚悟を決めなさい!」

「わかりました...よく分かりませんが、やってください!」

それを聞くと少女は村長に話しかけた。

「試験を受けます。始めてください。」

「わかったよ。試験開始。」

調葉師は急いでタバコ葉を仕分けた。鑑別に急を要するこの事態では、細かい比率に関しては目を瞑るしかない。そして、力を増強する葉だけを選び取り、タバコを巻いた。自分が出来るのはここまで。あとは、副作用にメビウスが耐えられるか。

「できました...!」

「よし、54秒。それでは、彼の口にタバコを咥えさせてあげてくれるかい」

そうすると調葉師の少女はメビウスに向かって駆け出していった。

「メビウス、私は時間がなかったから、100%上手く調葉はできなかった。でも、99%はやった自信がある。後の1%は、あなたの火種よ」

「ありがとうございます...火を...」

すぐに火をつけてやった。もくもくと煙が上がる。調葉師の少女は離れて見守っていた。すると、煙のつたの中から耳を塞ぎたくなる様な叫び声が聞こえてきた。

「う、う、うがああああああ!!!!!」

「この反応は...お嬢さん、信じたのかい」

「あの倒木を見てください」

少女は倒木を指差した。それは、メビウスがあの日夜通し「煙技」を当てて切り倒した、あの大木だった。

「あいつは...メビウスは、あの木を切り倒したんです。体がボロボロになっても、拳の皮が擦り切れても、メビウスはやり遂げたんです。」

「だから、自分に絡みかかってるあの煙のつただって...そして、自分の心にあるしがらみだって、きっとメビウスなら、切ってしまうことができるはずです!」

「メビウス君を、私も信じよう。そして、彼の本気の一撃を、私も受けよう。」

意識を失いかけるメビウス。しかし、少女の思いが込められた一言が、遠く彼方から聞こえ、心の中で反響する。

「メビウス!!!」

ドクン...ドクン...心臓の鼓動があたりに響いた気がした。少女も村長も、空耳には決して思わなかった。そして、煙のつたが動き出す。

「うおおおおおおおお!!!!!」

メビウスが叫ぶ。すると煙のつたがメキメキと音を立てるかのようにして、ちぎれあたり一面に四散する。その煙の中から、メビウスが現れた。ふらふらとしている。しかし、一歩一歩確実に地面を踏みしめながら、メビウスは言葉を放った。

「調葉師さん。1%にかけてくれてありがとうございました。その1%、これから100%に変えて見せます!」

「きなさいメビウス君!私も老木だ、君の若い新芽の力で、この老木、倒してみろ!」

メビウスはものすごいスピードで駆け出し、擦り切れた拳に調葉師の少女の思い、そしてこれまでの修行の成果を込め、強烈な攻撃を放つ。

「いい勢いだ!だがまだまだこの老木、倒れはしないぞ!」

「だったら何度でも、やってやる!」

メビウスは一撃だけでは収まらず、何度も何度も繰り返し拳を放つ。村長はガードしていたが、徐々にジリジリと押されていく。

「まだまだ!!!」

メビウスは諦めない。一撃一撃に思いが込められている。その思いは新芽の芽吹きの様に、重い土をかき分けかき分け地上を目指す小さな種のように、重い攻撃を放ち続ける。

「これで、最後だ...!」

そして渾身の力を込めると、視界がぐにゃりと歪んだ。限界も同時に来たようだ。しかし、彼の辛い訓練の効果から正確に狙いをつけると、彼の成長した木の様な青臭く、しかし力強い一撃は村長に直撃した。

「うおおっ...!これは、効く...ねえ...」

そう言って、村長は地面に片膝をついた。メビウスの努力は、いよいよ結実したのであった。

「いい『一本勝負』だったね。とても良かった。老木は、ここに倒れてしまった。ははは。」

力を使い果たし倒れ込んだメビウスは、よろよろと起き上がり村長に手を差し伸べた。

「倒れません、こんな大きな木は...僕では...まだ...」

「メビウス君、ありがとう。なあに、これくらいなら大丈夫さ。それよりも、君が倒した大木を見てごらん。」

メビウスはあの大木を見つめた。

「ああやって君が切り倒した大木の切り株からは、やがて新芽が出てくるんだ。その新芽は、きっとすくすくと育ち、また大きな木となって皆を見守る事になるだろうね。」

「私も昔は『わかば』だったよ。そして今は小さな村ではあるが、老木として長年見守って来た立場だ。君にはそんな『わかば』になる力が宿っていると、君と戦ってわかったよ。」

「メビウス君」

「はい」

「そして調葉師のお嬢さん」

「はい」

「試練、『合格』だよ。おめでとう。君たちなら大丈夫だ。きっと寒い北の国でも、力を合わせれば立派な新芽として成長していく事が出来るはずだ。今日は私に『わかば』を思い出させてくれてありがとう。宿泊所でゆっくり休んで、その後旅の用意をしなさい。お金は心配いらないよ。良い植物には、良い肥料をうんとあげるのが大事だからね」

「村長さん、本当にありがとうございました。僕はピースマンさんから、小さな火種だって言われました。その火種が芽吹く様に、そして寒い土地でも根を張れる様な強い木に成長できるように、頑張ります」

「ああ、楽しみにしているよ。さて、私は家に帰ろうとしよう。家内が料理を作って待っていてくれているからね。」

「分かりました。では僕たちはこれで。」

「気をつけて帰るんだよ。」

そう言って2人と村長はそれぞれの帰る場所に向かっていった。

その帰り際、調葉師の少女はメビウスに語りかけた。

「あの時は無茶させてしまったわね。私はやっぱり、『2級調葉師』だった。本当はもっと良い調葉ができれば、もう少し上手くやれたのかもしれないのに...」

「いえ、ああしなければあの煙のつたを突破することは出来なかったはずです。それに、僕が嬉しかったのは、1%だけでもあの時僕の能力を信じてくれたこと。残りの99%は、あなたのおかげで勝てたんです。気を落とさないで。」

「でも...」

珍しく少女は口籠った。そしてメビウスは調葉師の少女の目から一筋の涙が伝っていることに気がついた。

「私は色々な所で調葉師として働いてきた。一本一本真剣に巻いて来た。でも...今日の一本は、100%自信を持ってまけなかった...それが...悔しいのよ...」

「でも」

メビウスは微笑んでいった。

「僕があなたの思いを100%に出来たから、だから泣かないでくださいよ。」

「あなた...メビウス...ありがとう。」

メビウスはぼろぼろの血の染み付いたハンカチを、傷だらけの手で渡した。

「涙は、拭かないわよ。」

「え...やっぱり汚いですしね...あはは」

「違うわよ」

「あなたの手に涙が染みちゃったら、痛いから」

ぼそっと呟いた。

メビウスは聞き取れなかったので聞き返した。

「バカ!やっぱりあんたってバカね、今日は私に何か美味しいものをご馳走すること!」

「え、ええ...でもタバコが吸いたいからお金が...」

「知らない!タバコなら持ってるから早く宿泊所で、『元気もりもりすぺしゃるめにゅー』をうんと食べるの!」

そういう少女は、笑っていた。つられてメビウスも、あははと笑った。


このお話を読んでいただきありがとうございます。喫煙者なものでしてタバコの銘柄の違いとか煙の技とかで戦う世界があったら面白そう!と思ってこの作品を描き続けています。

文章が読みにくい、こうすると面白くなる、などのご意見などございましたら是非よろしくお願いいたします。

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