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60話

 ヤマタノオロチとの戦闘は苛烈を極めたが、配信に載せられるギリギリの戦闘で、私たちはヤマタノオロチを倒すことに成功した。


 特級ダンジョンのボスモンスターなだけあって、私たちのレベルはまた1つ上昇した。


「ダンジョンマスター!ヤマタノオロチは倒したよ!」

「やはり化け物じみた強さだ⋯⋯それなら或いは⋯⋯」


 私の言葉に、どこからか召喚したワイバーンに高所から降ろされた天野が独りごちる。


「教えて。なぜあなた達がダンジョンを作り人を殺すのか。あなた達の目的は何なのか」

「⋯⋯まず初めに結論から話そう。なぜ俺たちダンジョンマスターがお前たちを殺せるのか。⋯⋯それは、お前たちを人間だと知らないからだ」

「⋯⋯⋯⋯え?」


 混乱する私を他所に、天野は話を続ける。


「真実を知るダンジョンマスターはそう居ない。ほとんどのダンジョンマスターは、君たちをVRゲームのNPCだと認識している」

「は?え?ゲ、ゲームのNPC⋯⋯?」

「そうだ。俺たちの世界では、現実さながらの仮想現実空間で遊ぶVRゲームが凄まじいクオリティで展開している。俺たちは、そんなゲームの一つ『ダンジョンマスター・オンライン』。通称DMOのプレイヤーだ」

「⋯⋯⋯⋯」


 つまり、ダンジョンマスターはゲームプレイヤー。私たちはゲームのキャラクター。そう思っている、っていうこと?そんな馬鹿げた話があるの?


「俺たちはゲーム開始と同時に、ゲームマスターによりゲーム世界に閉じ込められた。まぁ実際にはゲームじゃなく、平行世界な訳だが⋯⋯」

「閉じ込められた⋯⋯あっ———」


 そこで私は、太郎の言葉を思い出した。——『もーちょいポイント取らなきゃ出れねぇんだよな⋯⋯』——あれは、ゲームから出られないという意味だったのか⋯⋯。だから、太郎は私たちが人間であることに驚いたんだ。NPCと思っていたから。


「あなた達の目的は、NPCと思っている私たちをダンジョン内で殺して、ポイントを稼いでゲーム世界——つまり、この世界から脱出すること」

「そうだ。俺たちはゲームシステムに沿ってダンジョンを運用管理することが出来る。その力で、ゲームを攻略するように——お前たちを殺した」

「⋯⋯それが真実だと証明できるの?」


 私の中で、太郎の台詞と天野の証言が一致していることは理解している。それに、スキル真実看破(オール・トゥルー)——対象が嘘をついているか判別できるユニークスキル——を身につけたサーシャが合図を送らないことから、天野が嘘を付いていないことも分かっている。


 だが、このことは視聴者含め、私たちの世界全員に真実であることを分かってもらう必要があった。


「これが俺たちダンジョンマスターに与えられたシステム——ダンジョン・マネジメント・システムのUIパネルだ」


 天野が渡してきた半透明な板は、タブレット端末のようになっていて、そこにはダンジョンの運用管理に関する様々な操作機能や、所持ポイント・ゲーム脱出に必要なポイントなどが書かれていた。私は、それがちゃんと配信で見えるように、ドローンカメラで映す。


『作り物か?』

『AI映像なんじゃね?』


 まだ疑惑のコメントは多い。試しにモンスター召喚の項目をタップしようとした——瞬間、激しい電流が走り、私はその板を落とした。


「無駄だ。これはダンジョンマスターにしか扱えない。モンスター召喚とかが出来るか見たいのか?なら、これで良いか?」


 そう言って板を拾った天野は、板を操作してキマイラを召喚した。キマイラは私たちを見るや否や襲ってくるが、天野が板を操作すると動きを止め、天野の横で大人しく腹を上に寝転がった。


 あの板がダンジョンマスターの操作UIである証拠としては少し弱い——板は作り物で、実際はスキルなんかで誤魔化している可能性を捨てきれないため——が、彼がダンジョンマスターである可能性はかなり高まったと言えるだろう。


「これで俺がダンジョンマスターである事は信じてもらえるか?」

「⋯⋯うん。この際、あなた達がゲームと思っていたかどうかは関係無い。殺した数が数だし、あなた達は日本の法律に裁かれ、たぶん死刑になる」

「それはこの世界での話だ。俺たちが元の世界に帰れば、こちらの世界で何をしたかなど立件することは不可能。そうだろ?」


 天野がニヤリと笑い、コメント欄は紛糾する。ダンジョンやモンスターに家族知人を殺された人は少なくない。今や一部娯楽として機能しているが、ダンジョン黎明期にはスタンピードが頻発し、モンスター被害も少なくなかった。そんな人達の感情を煽る天野の発言は、平行世界の人間だろうが何だろうが、許される筈が無い。

 でも、まずは天野から真実を聞き出す。それが先だ。私は怒りをグッと堪え、天野に問いを続ける。


「次の質問。あなたは何故、他のダンジョンマスターと違い、私たちが人間だと知っているの?」

「直接聞いたからな」

「誰に?」

「そりゃ決まってんだろ。俺たちをこの世界に連れて来て、この世界に閉じ込めた張本人。お前たちの世界にダンジョンやスキルといった超常の理を作った——神自身にだよ」


 それから語られたのは、天野が経験した出来事だった。

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