表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
62/64

61話

 私たちにとっては24年前。彼らにとっては3年前——ダンジョンマスターは、全ての事象を8倍速で体験するらしく、彼らはこの24年間を3年間だと認識しているらしい。今私たちと話しているのは、時間感覚を等倍に戻しているから会話出来るそうだ。——DMOの開始と共に、天野はこの世界にやってきた。


 数あるダンジョンの中でも、天野が担当したのは特別なダンジョン。つまり、特級モンスターだけ召喚できる超高難易度ダンジョン、富士山ダンジョンだった。


 世界各国に居る特級ダンジョンのダンジョンマスターは、ゲームの運営により、この世界がゲームではないことなどの真実を教えられたという。


 なぜ彼らに特級ダンジョンが宛てがわれ、ゲームではない真実を教えられたのか。それは天野自身分かっていないようだった。


 そして、彼らは同時に、これら事件の黒幕が『神』であることを教えられた。


「いやー、あの時は神を自称するもんだから、他の国の奴らなんかヤバいんじゃないかと思った。だが意外な事に、誰も神を愚弄するな!とか、そんな話は出なかった。偶然なのか意図したのか、どいつもこいつも無神論者だったな」

「神様が、なんでそんな事⋯⋯」

「そりゃ、アイツがロクでもない神だったからだろうな」


 彼らをこの世界に呼びつけ、私たちの世界にスキルを与え、互いに争うよう仕向けた神。それは、遍く平行世界の全地球を管轄する絶対なる神。名を——


「遊戯神⋯⋯アルス」

「ああ。そのアルスって神が黒幕の正体、ってワケだ」

「⋯⋯ここまで聞いておいてなんだけど、あなたの目的は何?何故、そこまで私たちに教えるの?」

「それが一番、アイツへの嫌がらせになると思ったからだ」


 ほくそ笑む天野に、どこか寒気を覚えた私は身震いをしてしまう。


 そんな天野の頭上に、光が降り注いだ。


「そうそう。キミの言う通りだよ、マコト。全てはボクの気まぐれさ」


 カッと光が強くなると、そこには見た事無いほど美しい少女?少年?が立っていた。『絶世の』なんて枕詞では不遜極まりないと思えるほど、とても美しいその少女?少年?は、ニコッと私に笑みを浮かべる。


「やぁ、リンネ。はじめまして。ボクはアルス。地球を創成した神様だよ」


 私の目の前には、黒幕そのものである神——遊戯神アルスその人⋯⋯いや、その神が現れた。


 突然の登場に、アリサ、サーシャ、セリナが武器を構え、私を庇うように立ち塞がる。


「これはこれは、異世界のお客人じゃないか。どうだい地球は?ボクの最高傑作なんだ。楽しんでいってよ」

「!?」


『異世界?』

『何言ってるんだ?』

『てか、この子何者?可愛いと格好いいが天元突破してるんだけど⋯⋯』

『ぐああ!癖が、癖が歪むゥ!』


 不味い。アルスは地球の神。それなら、アリサ達が異世界人である事は何となく分かってもおかしくない。

 配信を停止するか⋯⋯少し迷ったが、私はこの真実を皆に教える義務がある。後で誰になんと言われようが、私がアリサたちの立場を守ろう。そう決めて、私はアルスの話をこのまま聞くことにした。


「アンタ、地球の神か何か知らないけど、リンネに触れたら即座に殺すわ」

「神殺しってやってみたかったんだよねー!」

「リ、リンネさんは私が守ります!」

「みんな⋯⋯」


 私を庇う三人の姿に感動していると、アルスは大きな笑い声をあげた。


「あははは!大丈夫大丈夫!ボクは別に何もしないよ!ただ、キミたちが面白そうな話をしてたから、ボクも混ざりに来ただけ!」

「それは⋯⋯どういう⋯⋯」

「ん?そのままの意味だよ?あ、何かボクに期待してるなら止めといた方が良いよ!ホント、別に何もしないからさ!」


 アルスはカラカラと笑う。そのあまりに無邪気な笑い声に一瞬毒気を抜かれるが、すぐこのダンジョン被害の黒幕である事を思い出す。


 すると、いつの間にかアルスの背後に回り込んでいた天野が、アルスに向かって剣を振り下ろした。


 剣はアルスに触れる——いや、触れたように見えた。しかし、剣は見えない何かに阻まれると、一瞬後に天野の頭部が縦半分に割れた。


「!?」

「お?あちゃあ、ボクを殺そうとしたのかぁ⋯⋯。ゴメンね、自動反撃しちゃうんだよねぇ⋯⋯。可哀想だけど、死者蘇生はボクでも難しいんだよね⋯⋯」


 天野の死体に向かって残念そうな顔を向けたアルスは、どこからか取り出した布を天野の死体に被せる。


「⋯⋯なんで、そんな悲しい顔をするの⋯⋯」

「そりゃあ悲しいよ。みんな、ボクの大事な子供たちだよ?」

「⋯⋯じゃあなんで、そんな私たちを殺し合わせるような事をしたの?」


 私の問に、アルスは心底分からないといった顔をした。


「え、だってキミ達⋯⋯ダンジョンが出来る前からどデカい戦争で沢山殺し合ったでしょ?もう、いつキミ達同士の争いで全人類滅んでもおかしくない。そんな状況だよ?今さらこんな事で怒ってるの?」

「それとこれとは関係無いでしょ!あなたが地球の神様で、私たちを子供と思うなら、なんでそんなあなた自身が私たちを争わせるのか聞いてるの!」


 私は声を荒らげる。しかし、アルスは気に咎める様子はひとつも無い。


「えっ⋯⋯とー⋯⋯。それは、面白いからだよ?キミ達に闘争心があって、競争心があって、お互いに欲望をぶつけて命を奪い合う。元からキミ達をそういう面白いモノとして、ボクは生み出してるんだ。だから、より面白くするために色々頑張ってるんだけど⋯⋯」


 何かおかしいこと言ってる?と、アルスは首を傾げる。

 私は瞬時に理解した。目の前に居るのは、私たちを守る神様なんかじゃない。ただ面白いという理由で人が争うように創り、さらに楽しく争わせるために世界のルールをねじ曲げる。そんなイカれた存在であるということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ