58話
「はぁぁぁぁぁっ!」
「せいっ!」
「撃ちます!」
『や、ヤバすぎない?』
『あれ全部1級のワイバーンなんだよな⋯⋯』
『100匹くらい居ない?』
私たちは富士山ダンジョン第2階層にて、久しぶりの配信活動を行っている。
2階層は、ワイバーンを使役するワイバーン・ドミネーターが出てくる階層だ。ワイバーン・ドミネーター単体は強くない(2級程度)が、無数のワイバーンを召喚・使役する能力が非常に強力だ。
ここの攻略方法としては、私、アリサ、サーシャの3人が派手な技でワイバーンを引き付ける。
そしたら、セリナが戦技とスキルを組み合わせ、隠れるワイバーン・ドミネーターを見つけ出し、サクッと暗殺して終わりだ。そして、その暗殺は既に終わっており、死体はセリナが魔法袋に収納済みである。
ではこれで終わりかと言うと、そうではない。ワイバーン・ドミネーター討伐後も、ワイバーンは統率を失うだけで普通に残存するため、結局召喚されたワイバーンを全滅させる必要はある。つまり、今から残党処理が始まるのだ。
眼前に迫るワイバーンの群れを見つつ、多重思考で配信用ドローンカメラの状態を確認。問題無さそうなので、まずは私からワイバーン狩りを始めるとしよう。
「そいそいそいそい!」
『なんであんな事できるの?』
『リンネちゃまだからなー⋯⋯』
『細かいことは考えるな⋯⋯』
手頃な近さのワイバーンに向かって跳び、その体に槍を突き立てる。一撃で絶命したワイバーンが落ちる前に、突き立てた槍を鉄棒のように使い、別のワイバーンへ跳び移っては槍を突き立てる。
この繰り返しで、次々とワイバーンを倒していく。中々頭の混乱する作業だが、新スキル多重思考のお陰でなんとか実現出来る。もはや曲芸である。
「『落ちなさい』」
『ひぇっ』
『これが本物の覇気か⋯⋯』
『落ちてきた所を淡々と倒してるな⋯⋯』
アリサは、新スキルの威圧を最大値で発動させ、ある程度格下なら相手を気絶させることが出来るようになった。
その力でワイバーンを次々と気絶させ、落ちてきたワイバーンをひたすら一刀両断していく。
特級でも強くない方のモンスターなら気絶させられるらしく、試しにワイバーン・ドミネーターに試したら気絶していた。今回は既にセリナが暗殺済みである。
「全部撃ち落とします!!」
『癒し系サーシャたんからは想像もできないほどバカデカいライフルだ⋯⋯』
『ワイバーン一撃で撃ち落としてない?射撃補助系のスキルじゃないのにヤバくね?』
『あれ一発幾らするんだろう⋯⋯金の暴力(物理)ってことか⋯⋯』
サーシャは特注のアンチマテリアルライフルに、大抵の物を貫通する回転力を有する特殊弾を装填し、ワイバーンを狙撃している。
どうせワイバーンを一撃で倒せば黒字なので、この際射撃による費用は考えないものとする。
みるみる精度が増していく射撃の腕は、既に高速飛行するワイバーンの額を寸分違わず、連続で撃ち落とせるまでに達している。スキル無し、単純な腕前でこれなのが恐ろしい。
「私だけ地味なんだけどー!!」
『ひとっ跳びでワイバーン2体の首を落として着地するのは、全然地味じゃないでしょ⋯⋯』
『なんかめちゃくちゃな高さまで跳んでるけど⋯⋯』
『フルールだからな⋯⋯気にするな⋯⋯』
セリナは、とにかく沢山ジャンプして、着地するまでに数体のワイバーンを倒すという着実な戦闘スタイルで戦っている。
本人的には地味で不満とのことだが、こればっかりは各人の向き不向き、適材適所という事で⋯⋯。
そんなこんなで、100を超えるワイバーン残党を狩り尽くした私たちは、武器を収めてハイタッチを交わした。
「皆どうだったかな?」
『凄すぎた!!』
『こんなのがスタンピードしたら日本終わるくね?』
『ワイバーン1体居れば、一つの市町村丸々滅ぼしてもおかしくないらしいぞ』
『あんなのが富士山から出てきて、各地にワイバーンが散って行ったらとんでもねえな』
『リンネちゃま達のお陰で安全に暮らせます!』
『ありがとうフルール!!』
コメント欄の反応も上々だ。コメントにもあるように、ワイバーンが1体世に出れば、1級探索者が現場に到着するまでの間に、計り知れない被害が出ることが予想される。その1級探索者も、相性によっては飛行するワイバーン相手にどうする事も出来ない。
そんなワイバーンを無尽蔵に生み出し、操れるワイバーン・ドミネーターがダンジョンの外に出て、どこかで雲隠れでもしようものなら、リアルに日本の危機と言えるだろう。そんな特級モンスターがゴロゴロ居るこのダンジョンの恐ろしさが伝わったようだ。
私たちはそれから約2時間、富士山ダンジョン2階層の攻略配信を行い、久しぶりのダンジョン攻略配信は大反響となったのだった。




