57話
あれから約3日。私とアリサとセリナは、それぞれでキマイラを単独撃破できるようになった。サーシャは相性の問題で、キマイラを単独撃破することが難しいため、銃を使ったサポートに徹して貰っている。
この3日で、WIOの迅速な対応により凡その事態は鎮火した。私たちも謝罪配信をしようかと思っていたが、支部長から任せて欲しいと言われていたので、沈黙を守っていた。
世間的には、1級オーバーの悪魔の軍勢が現れ、そのスタンピードが起きないようフルールが尽力し、その結果ダンジョンが完全攻略され消滅した。そういう事になっている。
世論的には、日本の危機を救ってくれてありがとう、といった意見が8割、ダンジョン消滅させて何してくれてんだ、といった意見が1割、フルール強すぎ何者なんだよ、といった意見が1割といったところだ。
本日は、数日間の沈黙を経て、久しぶりに配信を行う日になっている。
「あー⋯⋯緊張してきたー⋯⋯」
「リンネに何か言ってくるやつが居たら、地球の裏側だろうと私が『次元斬』で次元の狭間へ消しに行くわ」
「私もやっちゃうよー!『超加速』と気配遮断と時間圧縮の合わせ技で誰も見つけられないから、証拠は残らないよ!」
「私もリンネさんを結界魔法で守ります!」
「あはは⋯⋯皆ありがとう⋯⋯」
三人に勇気づけられた私は、意を決してスマホの配信ボタンを押した。
待機所には既に15万人もの視聴者が待機していて、そのコメントがドサッと降り注ぐ。
『フルールきたあああああ』
『ダンジョン消滅について詳しく!!』
『無事で良かった⋯⋯⋯⋯』
『引退説とかあったもんな⋯⋯』
私は一呼吸置くと、カメラに向かって話しかける。
「皆さんこんにちは。フルールのリーダー、リンネです」
「アリサよ」
「サーシャです」
「セリナだよ!」
謝罪配信ではないのだが、緊張感がありいつものように挨拶できなかった。
いつもの調子を取り戻すべく、深呼吸をする。
「ふぅ⋯⋯よし。えー、皆さんもご存じの通り、私たちはいつものダンジョンのボスを攻略中、ハプニングにより配信が中断されました。
その後、特級モンスターであるデーモンロードが出現し、最低でも1級の悪魔が数万といる軍勢を召喚しました。私たちはその軍勢に対抗し、結果的にダンジョンの完全攻略が行われ、いつものダンジョンが消える事態になってしまいました。多数の方に混乱や心配をお掛けしました」
『日本の救世主だ!!』
『悪魔数万体倒せるの?ヤバすぎじゃね?』
私は事実を述べる。けれど悪いことはしてないので謝ることはしない。
改めて今回成し遂げたことに、視聴者は驚きを隠せないようだった。
「あれから私たちは、WIOの要請により、富士山ダンジョンの攻略を開始しました」
『富士山って⋯⋯あの富士山!?』
『超危険区域になった富士山か!!』
『あそこには世界屈指のダンジョンがあるって噂、マジだったんだ⋯⋯』
私はこれからの活動について語る。
「富士山ダンジョンは、1階層から特級モンスターが出てくるダンジョンです。私たちはこのダンジョンを今回のように完全攻略し、日本の象徴たる富士山を取り戻します!」
「暫く皆には会えないけど、必ず富士山を取り戻すから、応援して欲しいな!」
「配信許可は貰ったから、私たちの活躍、その目でしっかりと見届けて」
「頑張ります!!」
私たち4人の宣言で、コメント欄は大いに盛り上がりを見せる。
『うおおおおお!!富士山攻略アツすぎる!!!!』
『若い頃に富士山登ってから、また登りたいと思ってたんだよな⋯⋯フルール、頑張ってくれ!!』
『特級しか出てこないダンジョンとか、これまでスタンピード起きなかったのが奇跡だろ⋯⋯』
『WIOすげーわ』
『そのWIOに勝てる見込み持たれてるフルールが一番ヤバいでしょ』
まだ私たちのことを全員が全員認めてる訳では無さそうだけど、特級モンスターしか出てこないダンジョンの攻略という名目は、視聴者の興味を移すのには十分だったらしい。
「早速、1時間後に富士山ダンジョン攻略の様子を配信します!是非見に来てください!!」
こうして、私たちの配信活動は再開することとなった。




