54話
「やっと終わった⋯⋯」
「つ、疲れました⋯⋯」
「馬鹿みたいにしぶといヤツだったわ。超再生持ちでも一撃で葬れる戦技を作らないと、これから毎回こんな大変な思いするのは勘弁して欲しいわ」
「私はもうちょい歯応えが欲しかったかな〜!柔らかすぎて切りがい無かった!まぁ何回も切れたのは楽しかったけど!」
夥しい量の悪魔の死体を前にしつつ、私たちは各々の戦果を褒めたたえた。多分これ全部は魔法袋に入んないだろうから、入るだけ詰め込んだらWIOに連絡して回収してもらうか。⋯⋯いや、このままだと悪魔系モンスターの相場が大幅下落してしまうのでは⋯⋯?うーん⋯⋯まぁ良いか、そこまでお金には困ってないし。
そんな事を考えながら談笑していると、私たちの体を白い光が包み込む。これは——
「レベルアップ!?」
「こっちの世界でもレベルアップするのね」
「久しぶりです!」
「そこそこの奴ら沢山倒したし、レベルアップもするよね!」
アリサ達はそんなに驚いていないが、これは驚異的な事実だ。なんせ、地球上では私たち以外誰もレベルアップなんか出来ない。レベルやステータスのルールは、アリサ達の異世界が持っていたルールだ。つまり、私たちだけが研鑽や努力を飛び越えたパワーアップを果たすことができるのだ。
レベルが上がると白い光が私たちを包み込み、全てのステータスが上昇する。戦闘スタイルによってステータスの上昇値配分が変わる——例えば、私なら魔力や魔法攻撃力なんかが上昇しやすく、アリサなら体力や物理防御力、セリナなら俊敏性と器用さ、なんかが上がりやすいイメージだ。
ステータスの項目は、体力・魔力・物理攻撃力・魔法攻撃力・物理防御力・魔法防御力・俊敏性・器用さ・魅力の項目に別れる。
《リンネのレベルが125から128へ上がった》
《体力が1120から1150へ上がった》
《魔力が1635から1680へ上がった》
《物理攻撃力が1170から1200へ上がった》
《魔法攻撃力が1672から1720へ上がった》
《物理防御力が976から1000へ上がった》
《魔法防御力が1314から1350へ上がった》
《俊敏性が1220から1250へ上がった》
《器用さが1314から1350へ上がった》
《魅力が1220から1250へ上がった》
おー⋯⋯懐かしいなこの表示。スキルの帰還者は頭の中に音声が聞こえるが、異世界のレベルアップ通知は、なんか透明のウィンドウみたいなのが視界に出てきて文字でアナウンスしてくれる。
こうして見ると、やはり魔法系統のステータスがグングン伸びている。数値としては数十の上昇だが、このちょっとの上昇が大事だったりするのだ。
レベルアップによるステータス上昇を喜んでいると、脳内にアナウンスの音声——つまり、地球のルールによる声が聞こえてくる。
『おめ**ウごザ***!******により、***の*****』
な、なんだ?凄いノイズが走って良く聞こえない。周りを見ると、アリサ達もアナウンスの音声が聞こえているようだ。
『***————』
「と、止まった⋯⋯?」
『スキル、多重思考を習得しました』
『スキル、戦場展開を習得しました』
『スキル、異界往来を習得しました』
突然、頭の中身を無理やり書き換えられたような感覚。あまりにも強い頭痛に蹲り、その痛みが引くのを待つ。——10秒ほどで痛みが収まると、私は先ほどのアナウンスを思い返した。
スキルが3つ増えた⋯⋯?1人1つしか無いスキルが、同時に3つも?
私は仮説を立てる。
「まさか⋯⋯レベルが上がるとスキルが増える?」
恐ろしい可能性に気が付いた私は、先ほど与えられた3つのスキルを調べる。ネットで調べても良いが、自分のスキルの効果は、知りたいと思えばアナウンスが教えてくれるのだ。
『多重思考:レアリティBは、脳の処理能力を飛躍的に向上させ、同時に複数の思考を行うことができるようになる』
『戦場展開:レアリティ:Aは、自分の周囲に自分の得意な戦闘空間を展開することができる。その空間に居る間、任意の者(自分含む)に能力向上効果を付与することが出来る。空間の自由度は、使用者の能力に依存する』
『異界往来:レアリティ:Sは、自分が認識できる異世界へ行き来する事が出来る。ただし、各世界に起点を2つしか作ることが出来ない。また、使用するために30秒の待機時間を必要とし、スキル発動後24時間はスキルを発動することができない』
こりゃまた凄いスキルが発現したものだ。
多重思考は、レアリティランクBのスキルであり、戦闘に役立つよりかは日常生活で役に立つことが多いスキルだ。今の面接では、多重思考を所持しているかどうかで合否に影響があるらしい。配信活動も行う私には、結構ピッタリなスキルだ。
戦場展開はレアリティランクAのスキルで、このスキルを極めた1級探索者が良くテレビに出ていた。溶岩地帯や氷結地帯を作り出し、確実にモンスターの弱点を攻めるやり方で、その派手さと相まって結構人気だった筈だ。応用力が高い能力なので、戦術の幅がグンと広がる。
そして最後の異界往来は⋯⋯多分アリサ達の世界と地球を行き来するスキルだ。戦闘時の緊急脱出なんかには使えないが、それでも世界を動くのはかなりインチキじみた能力と言えるだろう。
アリサ達を見ると、アリサ達も脳内アナウンスと色々話しているようだ。
数分待ち、私たちは各々に与えられたスキルを共有する。
まずはアリサだ。
1つ目がレアリティBの威圧。相手に威圧感を与えることで、実力差の大きい相手を戦意喪失させる事ができるスキルだ。今回の悪魔戦のように、数だけ多い雑魚戦にはとても有意義なスキルと言えるだろう。
2つ目はレアリティBの絶対防御領域。効果は、自身の周囲に絶対防御領域を展開し、その中でのみ任意の相手のダメージを自分が肩代わりすることが出来る。また、領域内に限り攻撃のヘイトがスキル使用者に集中し、かつ防御力がかなり上昇するスキルだ。これはタンクのアリサに持ってこいである。
3つ目はレアリティAの戦域支配だ。これは戦闘中に発動した場合、自身が味方と認識している対象の士気と能力が向上し、敵と認識している対象の士気と能力が低下するスキルである。サーシャのバフやデバフと掛け合わせることで、更なる強さの向上が見込める。
次はサーシャだ。
1つ目が感情共鳴。レアリティはA。スキル発動時、周囲の人間の感情を読み取ることができる能力を持つ。これは戦闘向きではないが、日常生活やファン対応ではとても役に立つだろう。
2つ目はレアリティAの狂乱化。スキル発動後、5分間戦闘能力が激しく向上する。代わりに理性が失われ、全てを破壊するバーサーカーへと変貌する能力を持つ。要鍛錬だが、使いようによってはサーシャの直接戦闘力がかなり向上するだろう。
3つ目もレアリティAの因果補正。効果はざっくり、自身と味方の幸運に強い補正がかかる、というもの。これは常時発動型のスキルで、習得以降常に発動し続けるらしい。具体的にどう運が上がっているのか分からないが、宝くじとか買ったら当たるのかな。
最後がセリナ。
まずはレアリティCの気配遮断。レアリティは低いが効果はシンプルで強い。その効果は、存在感を薄くするというもの。セリナの戦闘スタイルと相性が良く、下手すると誰も手を付けられなくなる代物だ。なお、攻撃した相手には再発動までステルス効果が切れる。
2つ目はレアリティS、つまりユニークスキルの時間圧縮。効果は、世界が止まったと思えるほどの超加速。既にセリナは戦技『超加速』により、音速を超えたスピードを誇るが、そのスピードが更に速くなる。なお、効果持続時間は10秒。発動後、3秒間動けなくなる。
3つ目もレアリティSのユニークスキル、絶命軌道。これは対象を見た際、相手から自分へ線が見える。そしてその線の軌道通りに相手を切ることで、その相手を必ず殺すというものだ。物理的に切れない相手や、今回のデーモンロードみたいなケースだとキツいが、そうでなければ一撃必殺のスキルとなり得る強スキルだ。
「スキルの複数所持なんか聞いたことないよ」
「中々使えそうなスキルね」
「不思議とスキルの使い方が理解できるから凄いよねぇ不思議な感じだ」
「私も強くなります!」
私たちは各々、自分たちの強化を喜んだ。しかし————
『警告:ダンジョン維持機能停止』
『予告:第381ダンジョンは、これより消滅します』
『予告:5分後に、ダンジョン内の人間全員を外に強制排出します』
それは、唐突な最寄りダンジョン終了のお知らせだった。




