53話
「あれは⋯⋯流石にちょっとヤバいよね?」
「そうね⋯⋯」
「これは私の出番だね⋯⋯!アリサ、セリナ、時間稼ぎお願い。サーシャ、二人の支援と私への防御とバフ、お願い」
「任せなさい!」
「久々に腕が鳴るねー!」
「必ず皆さんはお守りします!」
規模だけで言えば、魔王軍の本隊と戦った時に肉薄する規模だ。強さは及ばずとも、今の地球でこの軍団が暴れれば、滅んでもおかしくない。それであれば、私の全力魔法をぶっ放す他無い。
魔力の構築を始める。
この魔法は構成が複雑であり、スピードの求められるタイマン勝負では使うことが出来ない。アリサ、サーシャ、セリナに守ってもらうことが前提の大火力魔法だ。
私の魔力を全部。文字通り全部絞り出して、その魔法を構築する。
「こっちに来なさい!『挑発』!」
「全員切り殺しちゃうよ!『一騎当千』!!」
「リンネさんに近づかないでください!!『絶対障壁』!!」
三人が私を守ってくれている。
その気持ちに応えられるよう、私は私の全力を込めて——
「みんな、行くよ!!『終焉神雷』!!」
黄金の雷が渦を巻き、空間そのものを雷で包み込む。
デモンズ・ゲートから次々に出てくる悪魔たちを、激しい雷が貫いていく。それはデーモンだろうがアークデーモンだろうが、他のマイナーチェンジみたいな悪魔だろうが関係無い。
「ぐっ、お前たち、余を守る肉壁となれ!!」
デーモンロードは悪魔たちを壁にし、自分を守っている。私の狙いは単体ではなく、悪魔の軍勢を蹴散らすことだ。好きにするといい。
雷は収束し、手を象るとデモンズ・ゲートの奥に居た悪魔も軒並み殺していく。それは、雷を纏う死の手だ。
もう何体倒したか分からないが、無数の悪魔を一撃で葬ると、デモンズ・ゲートが閉じると同時に、私の魔法も効果を終える。
そこには、数千に及ぶ悪魔の死体が転がっており、私の魔法一撃でデーモンロードの策略を打ち破った。
ただ、反動はデカい。私は魔力を使い切った。指輪から魔力を吸い取り、なんとか魔法を放てる状態にはなったが、強すぎる魔法の反動であと数分は動くことが出来ない。
だから、ここからは少数戦に長けた二人に任せるとしよう。
「な、なんなのだ⋯⋯!なんなのだ、貴様らはァァァァァ!!」
怒りに満ち溢れたデーモンロードが、死体の山から飛び出してくる。
「今度こそ、アンタを殺すわ!!」
その凄まじいスピードの一撃を、アリサが獅子王盾で防ぐ。
そこに、すぐさまセリナが切り込む。
「ふっ!」
「そう何度も切られるかァ!!」
しかし、セリナの攻撃をデーモンロードは剣で弾いた。薄々思っていたが、太郎を飲み込んでからデーモンロードの強さが一段階くらい上がった気がする。
————それでも、アリサとセリナには遠く及ばない。
「じゃ、これには着いてこれる?『超加速』」
「!?」
瞬間、セリナが消える。そしてその一瞬後には、デーモンロードの全身が細切れになっていた。
「喰らいなさい。——『次元斬』!!!!」
アリサが両手で紅鋼魔剣を上段から振り下ろす。——その一撃は空を裂き、地を砕き、海を割る。アリサの一撃最高火力の戦技、『次元斬』。
魔剣はアリサの想いに応え、空間を切り裂く。一瞬空間に出来た次元の穴⋯⋯それは、小さなブラックホールのように、周囲の物を飲み込む。
塵になった肉片から復活を遂げようとしていた、デーモンロードの肉片が次元の狭間に吸い込まれていく。
デーモンロードも直感でヤバいと気が付いたのか、復活してすぐに大きな肉片を作って自分を破壊。自害と再生を繰り返し、どうにかこうにか次元の狭間へ吸い込まれるのを防いでいる。
しかし、四回目のループで、デーモンロードが自分を破壊したのとほぼ同じタイミングで、セリナが肉片を切り刻む。再生の起点を『死至再生』が決めるより前に、デーモンロードが破壊した肉体よりも細かく肉片を刻むことで、デーモンロードの肉体が、次元の狭間に吸い込まれ行く肉片の方で再生を始めた。
「おのれ、おのれェ!こんな、こんなハズでは⋯⋯ッ!」
デーモンロードは腕から杭のようなものを伸ばし、それを地面に突き刺して生き延びようとする。その間、デーモンロードの下半身は次元の狭間に吸い込まれ、消失と再生を繰り返していた。次元の狭間に吸い込まれた物体は消滅する。それがこの技の本質的なヤバい部分である。
「確かに、その能力は厄介だったわ」
「ぐっ⋯⋯!」
「でも、いくら再生しようが、いくら雑魚を呼び寄せようが⋯⋯私たちには届かない」
「⋯⋯れ⋯⋯劣等種がァ!!」
デーモンロードは頭部を首から切り離してアリサに射出。同時に首から下の肉体を粉微塵に破壊した。
「死ね、劣等種!!デモンズ・アイ!!」
アリサに向かう頭から肉体が生え始める。同時に、デーモンロードの目からビームが出てきた。
「アンタが死になさい。『二重反射』!」
獅子王盾使用時に使える、アリサの『盾の奥義』。それが『二重反射』だ。
攻撃が盾に触れるタイミング——コンマ一秒のズレも許さない、そんな完璧なタイミングで戦技を発動した場合、1日に1度だけ、どんな攻撃も2倍にして跳ね返すことができるチート技だ。
デーモンロードの目からビームが反射され、デーモンロードの頭部がぐちゃぐちゃになる。そこへすかさず、セリナが駆けつけた。
「アリサにばっか、良い所取られちゃ敵わないからね!私も必殺技、行っちゃうよ!」
「!!!???」
「『超加速』」
再びセリナの体が世界から消える。
1秒後、立ち止まったセリナを視認できたと同時に、一つの声が聞こえた。
「『神速終断』」
セリナが風雷双剣を鞘に収めると、デーモンロードの肉片を囲むように神速の斬撃が解き放たれる。
『神速終断』はセリナの必殺戦技の一つだ。風雷双剣の効果と『超加速』による超スピードで、音速を遥かに超えたスピードの斬撃を放つ。わずか1秒の間に、1万を超える斬撃を生み出したセリナは、それを自在に解放・滞留させる事が出来る。デメリットとして、全ての斬撃を解放するまで、『神速終断』を再使用することは出来ない。
回復する隙を与えない、無限にも等しい殺戮は、デーモンロードの再生上限を優に超える。
「おの⋯⋯れェェェェェ!!」
辛うじて作り上げた声帯と口で恨み言を放つデーモンロードだが、それも瞬時に壊される。
デーモンロードが再生を止めて尚、『神速終断』の連撃は、デーモンロードの肉片を破壊し続けていた。




