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51話

 私は飛行魔法で太郎の元に行き、結界が解除されてすぐに『雷鎖』を使用。雷の鎖が太郎の四肢を縛り、同時に電気を流して手足の機能を一時的に麻痺させた。


「さて、と。色々教えてもらうよ、太郎くん」

「な、なぜ俺の名前を⋯⋯!」

「え」

「は?」


 数秒、沈黙が流れ⋯⋯太郎が再度吠えた。


「黙れ黙れ黙れ黙れ!お前たちに話すことなんか、何も無いんだよ!」

「うーん⋯⋯でもさ、太郎くんどう考えても何か知ってるでしょ?」

「知っていても、お前たちに教える義理は無い!!」

「えー⋯⋯あんまりしたくないんだけどなぁ」


 拷問、とボソリと呟くと、太郎の顔が一気に青ざめた。


「ご、拷問だと!?お前、そんな可愛い顔して何を!」

「え?可愛い?やだなー照れちゃう!」

「こいつ⋯⋯どこまでも馬鹿にしやがって——ひいっ!」

「するよ?私の仲間が傷付きそうになったり、喜びそうなことがあるなら、私はなんだってするよ?」


 私の本心。異世界の冒険を通じて得た、かけがえ無い仲間たち——アリサ、サーシャ、セリナ。

 この3人の為なら、世界を滅ぼすのも救うのも厭わない。私が日本人の高校生、しかも女だから太郎は見くびっているかもしれないが、私は異世界を救った勇者なのだ。一般的な倫理観や感性とは少しズレている。


「『獅子奮迅』」

「『恐怖付与』」

「ほらほら、早く言った方が身のためだよ〜?リンネを怒らせたら、魔王より怖いんだから」


 アリサの戦技とサーシャの魔法が、太郎の精神抵抗力を減らし恐怖を植え付ける。そして、セリナが風雷双剣の刃を太郎の首筋に当てながら、自白を強要していく。


「わ、分かった!分かった!なんでも言う!なんでも言うから、命は!!」

「よろしい。サーシャお願い」

「はい!『神前の間』」


 嘘をつくと神罰の雷が落ちる結界魔法、『神前の間』。結界魔法と同じように楔を使って範囲を決定し、少し長く魔力を練る必要がある大技だ。

 また、『神前の間』で神罰の対象とされる人物は、魔法行使者の方で選定され、更に選定された人物が承認した場合のみ、神罰が下される条件が整う。選定される人物は、魔法行使者と結界内に居る人物2人以上を最低選ぶ必要がある。つまり、『神前の間』を発動すると、サーシャ本人も嘘をつけなくなる。異世界では、法廷の場なんかで使われる魔法だ。


「『神を前にし者たちよ。これより、神前の間における虚偽全てを禁ずる。この申し出を受け入れるか?』」

「『はい、受けます』⋯⋯太郎くん、同じように言って」

「は、はぁ?なんだこれは⋯⋯」

「良いから早く!」

「くっ⋯⋯!チッ、言うかバ——」

「はやく」

「ひぃっ!『はい、受けます』受けます!」


 太郎がモタモタしていたので急かし、私と太郎、サーシャに『神前の間』の効果が発動する。効果を受けている者は、なんか薄らと光るんだよなぁこの魔法。


「じゃあまずは、貴方は何者?」

「俺はただの一般人で被害者だ!⋯⋯ぐあああああああっ!?」


 さっそく虚偽を⋯⋯。しかも、こんな魔法抜きでも嘘と分かるような嘘を吐くとは、かなりのポンコツのようだ。


 なお、神罰はめちゃくちゃ痛い。あらゆる耐性なんかを無視し、強烈な痛みだけが体にやってくる。ダメージは無いのに、ショック死する人も居るくらいだ。


 その痛みは相当だったようで、太郎は痛みに悶え、のたうち回っている。


「ぎ、ぎぎぎっ⋯⋯!」

「どう?痛いでしょ、神罰。嘘はバレるから、正直に話しなさい」

「き、汚いぞ⋯⋯!な、なら黙秘だ!これなら嘘じゃないだろ!」

「『神の前に立つ限り、問には必ず真実を答えなさい。回答は、30秒以内に行うこと』」

「ぐぎゃああああああああっ!!??」


 『神前の間』のもう一つの効果。それは沈黙を許さないことだ。魔法行使者が設定した時間——最低30秒、最長60分——、神罰の対象者による質問に対象者が答えない場合、答える意思を持つか、気絶するまで神罰が止まらない。気絶した場合、魔法が勝手に気付けするのですぐ起きるが。


 激しい痛みで気絶した太郎は、魔法の効果で無理やり意識を取り戻される。こうなると、神罰の再実行まで10秒の猶予が与えられる。


「10秒以内に答える意志を見せないと、また神罰が下るよ」

「ク、クソゲーすぎるだろ!」

「ほら早く。あと⋯⋯4、3、2——」

「分かった!分かった言うから!あれはもう止めてくれ!!」


 太郎は土下座し、額を地面に押し付ける。10秒経っても神罰が下らないということは、虚偽であれ真実であれ、何かしら回答する意思を持ったということだ。まぁ、虚偽の回答をしても神罰が下るので、太郎は本当のことを話す必要がある。


「じゃあ教えて、貴方は何者?」

「⋯⋯⋯⋯俺は——」


 太郎は勿体ぶるように溜めると、口を開いた。


「ダンジョンマスターだ」

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