47話
「キリが無い!」
あれから亜人系のモンスターを倒しまくっているが、中々減る気配が無い。1体1体は強くないが、耐久力の高い種族が主に召喚されているようで、かなりの数レッサー・ヴァンパイアに吸血されてしまっていた。
一度レッサー・ヴァンパイアに槍を投げてみたが、稼げる時間は2秒となく、すぐさま再生しては吸血を始めてしまう。
絶え間なくやってくるアンデッドも邪魔だ。吸血された亜人モンスターは、殆どがグールというモンスターになり、肉壁として非常に邪魔である。また、最初に召喚したアンデッド系モンスターは、行動阻害系のモンスターが多く、それもまた非常に邪魔くさい。
レッサー・ヴァンパイアは言葉を話すことが出来ない以上、そこまで大した知能は無いと思っていた。しかし、中々どうして考えられた作戦である。
広範囲殲滅能力が私たちには欠けている。本来、その担当は魔法使いの私だが、こうして槍使いに身を置いてしまってる以上は中々難しい。
私が対策に頭を悩ましていると、アリサの声が響く。
「リンネ!これ使いなさい!」
そう言われて投げられたのは、異世界で王国軍のとある騎士が使用していた武器。槍の側面に斧の刃がついた武器⋯⋯所謂『ハルバード』だった。
『ハルバード!?』
『ロマン武器すぎる!!』
『かっけー⋯⋯あれ、どこの製品だ?』
『ファンタジーコンセプトしっかりしてんな』
そうか!これなら行けるかも!
「アリサ、ありがとう!みんな、私が真ん中で暴れるから、周りの方をお願い!」
『了解!!』
私はハルバードの柄をしっかり握り、モンスターの中心に飛び込む。
「『雷纏』『雷閃演舞』!!」
私を中心に、雷を纏う竜巻が形成される。それは、雷を纏ったハルバードを振り回す私を中心に形成されていた。
今の私ができる範囲攻撃。それは簡単に言えば、ハルバードをぶんぶん回すことだ。アホみたいな話だが、シンプルながら強い。
私の魔法とステータス、それにこの斧に込められた風の力によって、全てを巻き込む雷の竜巻が形成される。それは竜を象り、付近にある敵を何もかも飲み込んで、思うがままに喰らい尽くすのだ。
『うおおおおお!?』
『か、カメラが飲み込まれる!!』
『ドローンカメラくん、がんばえー!』
そのコメントが読み上げられたのを最後に、ドローンカメラが竜巻に飲み込まれた。⋯⋯やってしまった!今までなんだかんだとカメラが飲み込まれないようにしてたのに!
まぁいい。ボスを倒したらスマホで配信しよう。
私が足を止めると、竜巻が消え去り、その場に血の雨が降り注ぐ。もちろん私にも血が降り注ぐ。この手の技、こういう所が嫌で使いたくないんだよなぁ⋯⋯。
血の雨を一滴でも飲もうと、レッサー・ヴァンパイアが口を開けるが、すかさず『雷神の槍』で頭部を消し飛ばし、血液の摂取を阻止した。
「カメラ壊れた!今なら行けるよ、サーシャ!」
「分かりました!『超広域大回復』!」
カメラオフで試した検証の結果、サーシャの回復魔法はアンデッドに高いダメージを与える。聖水だの浄めの塩だのが効くと聞いたため、効くだろうと思って試してみたが、効果はてきめんだった。
そして今、奇しくもカメラが壊れた今なら、ボス部屋いっぱいに回復魔法を使えば、アンデッドを一掃することが出来るだろう。
予想通り、不死の力を超えたダメージを与え、レッサー・ヴァンパイア以外のアンデッド系モンスターが行動を停止した。
亜人系モンスターも、アリサとセリナが残りを倒し、残るは残機不明のレッサー・ヴァンパイア一体。
「さぁ、何回耐えられるようになったか知らないけど、このまま倒し切る————」
「!!リンネ、またあの感じだ!!」
セリナの声に周囲を見渡すと、以前ワルキューレ・コードと共にアークデーモンと対峙した時のように——モンスターの死骸がドロドロと溶けて一つに集まる。
更にそれはレッサー・ヴァンパイアを包み込んでいっていた。
「何する気!!『雷龍』!!」
久しぶりに攻撃魔法を放つ。龍の形を取った雷撃がレッサー・ヴァンパイアに向かうが、ドロドロの一部がレッサー・ヴァンパイアから飛び出し、雷を受け止めた。
その隙に完成したらしく——レッサー・ヴァンパイアが居たそこには、かつて対峙したアークデーモン。それよりも強大なオーラを放つ、人に酷似したモノが立っていた。
「ふ⋯⋯ふふふ⋯⋯ふははははは!!この余を呼び起こすとは、命知らずにも程があるぞ、マスターよ!!」
突然大きな声で笑い出したソイツは、鋭い瞳で私たちを一瞥する。
「初めまして、劣等種よ。暫し待て、今からマスターを呼び寄せる」
それだけ喋ったソイツは、何やらぶつぶつ呟くと、足元に魔法陣が形成され⋯⋯そこから一人の男が召喚された。
なんだ、あれ⋯⋯ただの人?薄黄色のパーカーに、インナーはスポーツブランドの白Tシャツ。パンツはスポーツブランドのジャージだ。顔も平凡、髪型や目元、顔付きは日本人そのもの。
これは⋯⋯一体なんだ?




