45話
「よし!今日はここをキャンプ地とします!」
あれから色々な1級モンスターを倒していき、セーフティエリアを見つけたので、そこに野営環境を設営する。配信は終了している。
セーフティエリアとは、ダンジョンの階層内に必ず複数あるエリアであり、そこには罠などが無く、モンスターが入ることもできないらしい。らしい、と言うのは、そう言われているが仕組みは明らかになっていないからだ。要は、なんでか知らないが安全な場所、ということである。
なお見分け方だが、思いっきり『セーフティエリア』とカタカナで書かれた扉で部屋が仕切られているので、それで見分けることが可能だ。
この扉はWIOが作成、設置している。セーフティエリアの中ではWIOの宿泊施設などを利用することができる。
念の為、セーフティエリアの扉付近にセンサーを設置。万が一モンスターが来た際は、このセンサーが鳴り響いて教えてくれる。要らないと思うが、まぁ気休めだ。
次に、サーシャが結界魔法を発動するための、楔をセーフティエリアの四方に設置する。この楔がある限り、楔を結ぶ四角形の中はサーシャの結界魔法が発動され、結界内への外敵の侵入が不可能になる。正直これだけあれば十分なくらいだ。
最後に、使い魔をセーフティエリアに放つ。使い魔というのは、魔法使いに従う魔法生物——魔法で造られた生物——である。
私の使い魔は全部で13体いるが、今回は3体に出勤してもらおう。
「おいで。カゲマル、コロ太郎、ピコ」
「カゲカゲ!」
「コロコロコロコロ」
「ピココココ」
カゲマル。見た目は小さな黒いリスだ。能力としては、影の中に忍び込むことができる。索敵能力が高いため、敵の監視用だ。
コロ太郎は、普段はただの丸い石だ。ただ、その実はハムスターであり、丸まることで石に擬態することができる。また、能力として地面の感知能力が極めて高い。
ピコは小さなコウモリである。暗所でもしっかり物体を捉えることができ、超音波での探索も可能であるため、これまた索敵能力に長けている。
私の自慢の索敵使い魔三人衆をセーフティエリアに放ち、何かあった際はお知らせしてもらう。カゲマルは影に潜み、コロ太郎は石のふりをして、ピコは暗い天井に止まってもらえば、誰にも見つからない部隊の完成だ。⋯⋯誰も居ないんだけどね。
「久しぶりに見たわね、リンネの使い魔」
「私たちの使い魔も久しぶりに会いたいねぇ」
「今度、お家で召喚しましょう!」
「はいはい、あんまり大きな声で喋んないようにね。じゃ、テント建てようか」
下層の方にはセーフティエリアに宿泊施設があるのだが、中層辺りからは施設が何も無い。たぶん扉の設置でいっぱいいっばいだったのだろう。それだけでもありがたい話だ。
マジで何も無いただの広場に、私たちはテントを建てていく。テントは異世界で幾度となく建ててきたので、スムーズに建てることができた。
次にキャンプセットの机や椅子、焚き火台なんかを用意して、自炊の準備を始める。ダンジョン内は密室だが、どういう訳か火を使って酸欠になることが無い。なんともご都合主義なものだ。
「よーし、準備おっけい!」
「じゃあ配信再開するね」
今日は泊まり込み攻略の配信がテーマだ。その為、私たちの野営もコンテンツとして消化させてもらう事にする。この人生の切り売り感⋯⋯配信者って感じだ!
冗談はそこそこに、野営の準備が完了した私たちは、配信用のスマートフォンで撮影を開始する。今更だが、ダンジョンの各階層には中継基地局があるため、スマートフォンの回線などが繋がっているのだ。その辺は、WIOが必死に管理しているらしい。
「みんな、さっきぶりー!野営配信始めるよー!」
「挨拶は省略するわ」
「じゃじゃーん!見て、私たちのテント!凄いでしょ!」
「頑張りました!」
『お泊まり配信きちゃあああああ』
『ここがフルールと合法お泊まりできる会場って本当ですか?』
『セリナちゃんドヤ顔尊い』
『薄らサーシャたんもドヤ顔でてぇてぇ』
『戦うと化け物クラスに強いけど、こういう配信だとめちゃくちゃ可愛い女の子でしかないよな』
『いつでもめちゃくちゃ可愛い女の子だろうが!』
なんか失礼なコメントを見た気がするが、努めて無視する。
「これからご飯を作るから、その様子を適当に配信していくよ!」
「リンネー、今日は何食べるの?」
「ふっふっふ⋯⋯キャンプと言えば、バーベキューでしょ!」
ということで、バーベキューコンロに備長炭、網をセットしてバーベキューの準備を始める。下準備は家で済ませて魔法袋に入れてきたので、あとはこれらを焼いて食べるだけだ。
今回のラインナップをご紹介しよう。まずはA5ランク和牛の霜降り肉!とにかく高さを重視!
次に超高級な特上タン!やっぱりタンは最高だよね!
あとは多種多様な肉、魚介、野菜、チーズやらなんやら色々である!
『ラインナップが若い』
『おじさんあんな霜降りの肉食べられないよ⋯⋯』
『若いって良いよね⋯⋯』
『混ざらせてください』
『百合に割って入る男は殺す』
私が出した食材たちに、アリサたちの目が輝く。いくらお金を貰っても、結局食べるものは普通の高校生と変わらないようなものしか食べていないので、高いお肉にはシンプルにテンションが上がるのだ。
「こんなキラキラした肉は見たこと無いわ⋯⋯!」
「椎茸とピーマン、大好きです!」
「ふおおお!チーズ!チーズフォンデュしようよ!」
「ふっふっふ⋯⋯焦らずとも、今から食べれるから安心したまえ、ちみたち」
ということで、バーベキュー開始だ!
まずは高い肉だ。炭火の遠赤外線でじっくりと火を通し、余計な油を落としてから、口に放り込む。味付けはシンプルに塩だけ。
「〜〜〜!んっまーい!」
「お肉が溶けます!!」
口の中で肉が溶け、旨みだけが口いっぱいに広がる。こんな罪なもの、食べてしまって良いんだろうか。
次は特上タンだ。こちらはレモン塩ダレを用意しておいたので、それで頂くとしよう。
「こっちも美味い!!!」
「味も良いけど、なんか柔らかいのに食感がしっかりあって、不思議な美味しさだね!」
こりゃ堪らん。異世界では牛タンなんて食べられなかったので、これを食べられるだけでも日本に帰って来られて良かったと思う。
次は網に置いていたキャベツだ。数枚手に取り、焼肉のタレに絡めて食べる。
「キャベツが甘い!!!!」
「甘みのある焼きキャベツに、焼肉のタレの風味が混ざって絶品ね!」
うめぇ⋯⋯!バーベキューって、なんでこんなに美味しいんだ!
それ以降も、色々な食材を食べては悶え、食べては悶え。コメント欄が飯テロの暴力に阿鼻叫喚の中、私たちは気にせずバーベキューを楽しんだ。
余談だが、この日以降、バーベキュー商品の売上が前年比で5%ほど上がったらしい。案件、待ってます。
作者はもう脂の乗った肉は食べられません。リンネたちの胃が羨ましい。




